ジェンダーステレオタイプとは?社会に根づく性別の思い込みとその影響
「女性らしさ」や「男らしさ」という言葉に、引っかかりを覚えた経験は、少なからずどなたでもお持ちのことかと思います。
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そうした“当たり前”のように思われてきた価値観の中にこそ、社会が抱える見えにくい問題が隠れていることがあります。
この記事では、性別に基づく思い込み「ジェンダーステレオタイプ」について、基本的な意味や背景から、日本社会で起きている現実、そして個人の私たちにできることまで、丁寧に解説しています。
年齢や立場に関係なく、自分らしく生きられる社会とはどのようなものか。
そんな問いへのヒントとして、本記事が小さなきっかけになれば幸いです。
ジェンダーステレオタイプとは何か
「男性は強くたくましく、女性はやさしく控えめに」。
私たちが育つなかで、性別に基づいた役割や性格のイメージが、さまざまな場面で繰り返し提示されてきました。
ときにそれは親の言葉であったり、テレビドラマの登場人物であったり、学校の先生のちょっとした言動であったかもしれません。
こうした無意識の思い込みが、時に個人の選択や自由を制限し、社会全体にも偏りをもたらすことがあります。
では、ジェンダーステレオタイプとはどのようなもので、私たちの暮らしや意識にどのような影響を与えているのでしょうか。
この章ではその基本的な意味と背景を紐解いていきます。
ジェンダーステレオタイプの意味と背景
ジェンダーステレオタイプとは、「男性だからこうあるべき」「女性だからこう振る舞うべき」といった、性別に基づく固定的なイメージや思い込みのことを指します。
これは個人の資質や能力とは無関係に、社会的な慣習や文化を通じて広く共有されている点が特徴です。
たとえば、「男性は論理的で感情を抑えるもの」「女性は感情的で優しさが求められる」といった認識が典型的なジェンダーステレオタイプです。
こうした価値観は家庭や学校、メディア、さらには職場といったあらゆる環境で自然と受け継がれてきました。
背景には、長い歴史のなかで築かれてきた社会構造や文化的価値観があります。
時代の変化とともに女性の社会進出が進み、男性の育児参加も広がってきた一方で、無意識の中に残るこのような固定観念は、今もなお多くの人の判断や行動に影響を与えています。
こうした背景を理解することは、ジェンダーステレオタイプの問題を「過去の価値観の名残」として片づけるのではなく、現在進行形の社会課題として見つめ直すための第一歩になります。
ステレオタイプとジェンダーロールの違いとは?
よく似た言葉として、「ジェンダーロール」という表現も耳にします。
どちらも性別に関連する考え方を示す言葉ですが、それぞれの意味には明確な違いがあります。
ジェンダーステレオタイプは、性別に基づく「考え方」や「信念」のことを指す一方で、ジェンダーロールは、その思い込みが具体的な「役割」として社会の中で期待され、実際の行動に影響を及ぼす状態を意味します[1]。
たとえば、「男性が一家の大黒柱になるべき」「女性は子育てを担うべき」というように、社会的な役割分担として表面化するのがジェンダーロールです。
つまり、ステレオタイプは内面にある“思い込み”、ジェンダーロールはその思い込みが外に出て“期待される行動”に変わったものと考えると、イメージがしやすいかもしれません。
この2つは密接に関わっており、ステレオタイプがあるからこそロールが生まれ、ロールが繰り返されることでステレオタイプが強化されるという、循環的な関係にあります。
この構造を理解することが、問題の根深さに気づく重要な手がかりとなります。
ステレオタイプの全体像や、他の種類のステレオタイプについても知っておきたい方には、こちらの記事も併せてご参考ください。
お宝エイド参考記事:ステレオタイプとは?無意識の思い込みで差別や偏見を生まないために
ジェンダーステレオタイプの具体例とその根深さ
性別に基づく思い込みは、私たちの暮らしのなかに想像以上に深く根づいています。
言葉の端々に、日常の風景に、テレビや漫画のキャラクターに、さまざまな形で現れているのです。
こうしたステレオタイプは、単なる偏見にとどまらず、個人の選択や将来にまで影響を及ぼすことがあります。
この章では、具体的な事例を通して、ジェンダーステレオタイプの広がりとその影響の深さについて考えてみたいと思います。
日常生活に潜む言葉や態度
たとえば、子どもが泣いているときに「男の子なんだから泣かないの」と声をかけたり、活発な女の子に「もっとおしとやかにしなさい」と注意したりする場面を目にしたことはないでしょうか。
こうした言葉は、意識的というよりも、多くの場合は無意識のうちに出てしまうものです。
また、洋服やおもちゃの色にも、性別によるイメージが反映されています。
ピンクは女の子、水色は男の子といった色分けや、「おままごとセットは女の子向け」「ヒーローごっこは男の子向け」といった商品展開も、その一例です。
こうした小さな“当たり前”の積み重ねが、性別による価値観を形成し、それが後々の進路や職業選択にも影響していくことがあります。
無意識のうちに刷り込まれるからこそ、見過ごされやすく、対処が難しいのがジェンダーステレオタイプの厄介な点でもあります。
学校現場における無意識の刷り込み
教育の場もまた、ジェンダーステレオタイプが表れやすい場所のひとつです。
プラン・インターナショナルが2022年に行った「日本の高校生のジェンダー・ステレオタイプ意識調査[2]」によれば、生徒の7割以上が学校で性別に基づく“決めつけ”を経験したと回答しています。
その内容は、進路指導における性別の影響、体育や家庭科といった教科の役割分担、あるいは制服のデザインや髪型の校則など、多岐にわたります。
たとえば、「理系は男子が多いからそちらを勧める」「女子は看護師や保育士が向いている」といったアドバイスは、本人の希望や適性よりも、性別に重きを置いた判断と言えるでしょう。
さらに、教師自身が無意識に持っている固定観念が、授業や生徒対応にも影響を与えてしまうことがあります。
内閣府が令和6年9月に行った「男女共同参画社会に関する世論調査[3]」では男女平等への取り組み強化によって改善傾向が見られますが、それでもまだ教育の場でステレオタイプが再生産されている現状は否めません。
学校は子どもたちが将来を考える大切な時期を過ごす場所です。
その環境で性別による偏った見方が示されることは、自由な選択や多様な可能性を狭めてしまうことにつながりかねません。
アニメやメディアに見られる典型的な描写
現代の子どもたちや若者にとって、テレビアニメやネット動画は日常の一部となっています。
これらのメディアには、男女の役割や性格に関するステレオタイプがしばしば描かれており、視聴者の価値観に大きな影響を与えることがあります。
たとえば、ヒーローはたいてい勇敢で力強い男の子、ヒロインは美しくて支え役の女の子という構図は、古くから多くの作品で繰り返されてきました。
また、感情的なキャラクターは女性であることが多く、冷静沈着な指導者は男性であることが多いといった傾向も見受けられます。
こうした描写が続くことで、「女性はこうあるべき」「男性はこうふるまうべき」というイメージは無意識に強化されていきます。
特に幼い頃に繰り返し目にした価値観は、大人になってからの考え方や行動にも少なからず影響を及ぼすことが知られています。
メディアには教育的役割も期待されるなか、知らず知らずのうちにステレオタイプが社会全体に浸透してしまっている現状はいまだ続いています。
ジェンダーステレオタイプが引き起こす社会的問題
ジェンダーステレオタイプは、単なる思い込みにとどまらず、現実の社会にさまざまな格差や不平等をもたらしています。
個人の選択肢を狭めるだけでなく、教育や労働の現場でも、目に見えにくい障壁となって立ちはだかることがあるのです。
ここでは、教育・職場・個人の心理面という3つの視点から、この問題がどのように影響を及ぼしているのかを見ていきましょう。
教育・進路への影響
学校教育の場では、本来、子どもたちの興味や能力に応じた自由な学びと進路選択が尊重されるべきです。
しかし現実には、「理系は男性、文系は女性が多い」といった結果が数字に現れています。
その背景には、「女性は数学が苦手」という固定観念によって、理系の分野を選びにくくなる女子生徒が一定数存在すると言われています。
実際、大学の工学部や情報系学部では、女子学生の割合が依然として少ない状況が続いているのも、ジェンダーステレオタイプの影響が少なからずあると言えます。
職業選択における現状
職業のイメージにもジェンダーステレオタイプは色濃く反映されています。
看護師や保育士は女性向け、エンジニアや建設業は男性向けといった見方が根強く残っているため、生徒自身の希望があっても、「向いていないのでは」と周囲だけでなく、本人が判断してしまうこともあります。
こうした影響は進路だけでなく、リーダーシップの機会にも表れます。
学級委員長やクラブ活動の代表に、男性が選ばれやすいという傾向は、多くの学校で今もなお見られる現象です。
このように、教育の現場にあるジェンダーステレオタイプは、子どもたちの未来を左右する重大な要因となっているのです。
職場における経済的不平等
社会に出てからも、ジェンダーステレオタイプはさまざまなかたちで影を落とします。
特に顕著なのが、職場における男女格差です。
たとえば、厚生労働省による「令和6年賃金構造基本統計調査[4]」のデータによると、日本において男性の賃金を100とした場合、女性の平均賃金はおよそ75.8%にとどまっています。
この数字は、業種や雇用形態の違いだけでは説明できず、根底には性別に基づいた役割期待や無意識のバイアスが存在しています。
「女性は結婚や出産で離職することが多い」
「フルタイムで長時間働けないから責任ある仕事は任せにくい」
といった思い込みが、昇進や昇格の機会を狭めてしまう原因となることは、表面上なくなりつつあるとはいえ、現実問題としては数字として現れています。
ジェンダーステレオタイプをなくすには?社会と個人にできること
ここまで見てきたように、ジェンダーステレオタイプは私たちの生活のあらゆる場面に潜んでおり、教育、職場、家庭といった多くの場面で個人の可能性や人生の選択を左右してきました。
とはいえ、こうした問題は必ずしも一部の誰かだけがつくり出しているものではなく、私たち一人ひとりが知らず知らずのうちに再生産してきた社会的な構造でもあります。
だからこそ、その解消には「社会」と「個人」の両方の視点からの取り組みが欠かせません。
ジェンダーステレオタイプをなくすには、制度を変える力と、日々の生活の中で“気づき”を積み重ねる力の両方が必要です。
小さな意識の変化が、やがて大きな社会の変化につながる。
そう1人1人が信じて、できることから少しずつ取り組んでいくことが、すべての人が性別に縛られずに生きられる社会への第一歩になるのではないでしょうか。
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(KOBIT編集部:Fumi.T)
<参考文献>
[1]国際NGOプラン・インターナショナル,『ジェンダー・ステレオタイプとは?未来を縛る「無意識の思い込み」』,available at https://www.plan-international.jp/social_issues/gender-stereotype-bias/
[2]国際NGOプラン・インターナショナル,「日本の高校生のジェンダー・ステレオタイプ意識調査(2022)」,available at https://www.plan-international.jp/news/20220415_32630/
[3]内閣府,「男女共同参画社会に関する世論調査(令和6年9月調査)」,available at https://survey.gov-online.go.jp/women_empowerment/202502/r06/r06-danjo/
[4]厚生労働省,「令和6年賃金構造基本統計調査」,available at https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2024/index.html
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