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タジン鍋とは?独特な形の理由や素材別の特徴、使い方・手入れ方法を解説

タジン鍋とは、浅い皿状の本体と、円すい形の高いふたを組み合わせた調理器具です。

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モロッコをはじめとする北アフリカ地域で古くから使われてきました。

「タジン」という言葉は、鍋そのものだけでなく、その鍋を使って肉や魚、野菜などを煮込んだ料理も指します。

現地におけるタジン鍋は、単なる調理器具ではありません。

料理を作り、鍋ごと食卓へ運び、家族や客人と囲むという食文化まで含んだ存在です。

日本では、食材の水分を生かした蒸し料理を作れる鍋として広まりました。

独特な外観が注目されがちですが、その形には乾燥した地域で水や燃料を有効に使うための合理的な工夫が込められています。

タジン鍋とは?乾燥した地域の暮らしから生まれた道具

北アフリカには、降水量が少なく、水が貴重な地域があります。

そこで発達したタジン鍋は、食材から出る蒸気をふたの内側で循環させ、少ない水分でも肉や野菜をやわらかく調理しやすい構造を備えています。

ただし、タジン鍋は必ず無水で使うものではありません。

食材の種類や鍋の素材、作る料理によっては、水、スープ、油、トマトなどを加えます。

「水を一滴も使わない鍋」と考えるのではなく、食材の水分を逃がしにくい蒸し煮用の鍋と捉えるとよいでしょう。

タジン鍋の円すい形のふたにはどんな意味がある?

タジン鍋の最大の特徴は、高く伸びた円すい形のふたです。

この形は装飾だけを目的としたものではなく、鍋の中で蒸気を循環させる役割を担っています。

蒸気を水滴にして鍋へ戻す仕組み

鍋を加熱すると、食材に含まれる水分が蒸気になります。

蒸気は円すい形のふたの内側を上昇し、比較的温度の低い上部へ移動します。

そこで冷やされた蒸気は水滴となり、ふたの内側を伝って再び食材のもとへ戻ります。

この循環によって、少ない水分でも食材をしっとりと加熱しやすくなります。

野菜の甘みや肉のうま味を含む水分が鍋の中に残りやすいことも、タジン鍋の魅力です。

もっとも、タジン鍋は完全な密閉容器ではありません。

ふたに蒸気穴がある製品もあれば、穴のない製品もあり、蒸気の抜け方は設計によって異なります。

浅い本体は盛り付けと取り分けにも便利

タジン鍋の本体は、一般的な煮込み鍋より浅く作られています。

中心に肉や魚を置き、その周囲や上に野菜を重ねれば、食材へ火を通しながら立体的に盛り付けられます。

完成後はふたを外し、本体を器として食卓に出すことも可能です。

調理器具と盛り付け皿を兼ねるため、料理を別の器へ移す手間を減らせます。

ただし、鍋は非常に熱くなるので、必ず耐熱性の鍋敷きを使用してください。

タジン鍋と土鍋・蒸し器の違い

タジン鍋は土鍋や蒸し器に似た用途で使えますが、調理の仕組みには違いがあります。

一般的な蒸し器は、水を沸騰させて発生した蒸気をすのこ越しに当て、食材を加熱します。

一方、タジン鍋では食材を本体へ直接置き、食材から出る水分や少量の調味液を循環させながら蒸し煮にするのが基本です。

日本の土鍋は深さがあり、鍋料理や炊飯などに適しています。

タジン鍋は本体が浅く、ふたが高いため、食材を重ねた蒸し煮や、汁気の少ない煮込み料理を作りやすいのが特徴です。

ただし、すべてのタジン鍋が陶器製とは限りません。

鋳鉄やアルミ、シリコンなどで作られた製品もあるため、素材によって熱の伝わり方や適した料理が変わります。

タジン鍋の素材別の特徴

タジン鍋を安全に活用するには、形だけでなく素材を確認することが大切です。

素材によって、重さ、耐久性、対応する熱源、手入れ方法が異なります。

素焼き・陶器製

伝統的な雰囲気を楽しみやすいのが、素焼きや陶器製のタジン鍋です。

熱がゆっくりと伝わり、加熱を止めた後も余熱を保ちやすいため、肉や根菜をじっくり調理できます。

使い込むことで表情が変わる点も魅力です。

一方、吸水性が高いものや、急激な温度変化に弱いものがあります。

強火、空焚き、加熱直後の水洗いなどは、ひび割れの原因になりかねません。

製品によっては、使い始めに目止めが必要です。

耐熱陶器製

現代の家庭用として流通するタジン鍋には、耐熱陶器を使った製品も多くあります。

伝統的な外観を保ちながら、日常の調理で扱いやすいよう設計されているのが特徴です。

ただし、「耐熱陶器」と書かれていても、直火、オーブン、電子レンジ、IH、食器洗い乾燥機のすべてに対応しているとは限りません。

底面の表示や取扱説明書を確認してください。

鋳鉄製

鋳鉄製のタジン鍋は重量がある反面、蓄熱性に優れています。

肉の表面を焼き付けてから野菜と煮込むなど、焼く工程と蒸し煮を一つの鍋で行いやすい素材です。

ホーロー加工された製品は比較的さびに強いものの、強い衝撃によって表面が欠ける場合があります。

加工されていない鋳鉄製品は、使用後の乾燥や油ならしなど、さびを防ぐ手入れが必要です。

アルミ・ステンレス製

金属製は陶器製より割れにくく、軽量な製品もあります。

熱が素早く伝わるため、短時間で調理したい場合に便利です。

一方、薄い製品は強火にすると食材が焦げ付きやすいことがあります。

金属製だからといって、必ずIHで使えるわけではありません。

IHで使用する場合は、製品にIH対応の表示があるかを確認しましょう。

シリコン製・電子レンジ調理用

円すい形のふたを取り入れたシリコン製品や、電子レンジ専用のタジン鍋もあります。

軽量で扱いやすく、短時間で温野菜などを作れるのが利点です。

伝統的な陶器製とは耐熱性や調理方法が大きく異なり、直火では使えない製品が一般的です。

耐熱温度と対応機器を確認し、用途外の加熱は避けてください。

タジン鍋を使う前に確認すること

タジン鍋を入手したら、すぐに火へかけるのではなく、製品の仕様と状態を確認しましょう。

特に中古品や譲り受けた品は、箱や説明書が残っていない場合があるため注意が必要です。

対応する熱源を確認する

底面のシール、刻印、ブランド名、型番などを調べ、直火、IH、オーブン、電子レンジのどれに対応しているかを確認します。

同じ陶器製でも、直火対応のものと、食器としてのみ使えるものがあります。

海外土産のタジン鍋には、装飾や盛り付けを目的とし、加熱調理を想定していないものもあります。

耐熱性を確認できない場合は、火へかけないほうが安全です。

ひびや欠け、異臭がないか点検する

本体の底、縁、ふたの接触部分、つまみの周囲を見て、深いひびや大きな欠けがないか確認します。

釉薬の表面に細かな線が入る「貫入」は陶器の表情でもありますが、本体まで達した亀裂とは区別が必要です。

水漏れする、加熱中に異音がする、亀裂が広がっているといった場合は、使用を中止してください。

落ちないカビや油の酸化臭、強い洗剤臭があるものも、調理への再利用は慎重に判断します。

目止めの必要性を確認する

素焼きや陶器製の一部では、でんぷん質で細かな隙間を埋める「目止め」が推奨されています。

米のとぎ汁などを使う方法が知られていますが、目止めが不要な製品もあります。

誤った方法は、変色やにおい残りの原因になります。

メーカーが分かる場合は、必ず説明書や公式情報を優先してください。

タジン鍋の基本的な使い方

1.火の通りにくい食材から並べる

根菜など火が通りにくい食材を下側へ置き、その上に肉、魚、葉物野菜などを重ねます。

食材を高く盛り付けるとタジン料理らしい見た目になりますが、ふたが無理なく閉まる量に抑えましょう。

焦げ付きが心配な場合は、底に玉ねぎやキャベツなど水分の多い野菜を敷く方法もあります。

2.必要に応じて油や水分を加える

野菜から十分な水分が出る料理なら、少量の油や調味料だけで調理できることがあります。

一方、根菜や肉が中心の場合、食材の量が少ない場合、糖分を含む調味料を使う場合は焦げ付きやすくなります。

少量の水、だし、スープ、トマトなどを加えて調整してください。

3.ふたをして弱火から加熱する

陶器製は急な加熱に弱いことがあるため、弱火からゆっくり温めます。

タジン鍋は蒸気と余熱を利用する調理器具であり、強火にすれば早く仕上がるとは限りません。

強火や空焚きは、焦げ付きや破損につながります。

加熱中に何度もふたを開けると、熱と蒸気が逃げてしまいます。

吹きこぼれや焦げ付きに気を配りながら、確認は必要な回数にとどめましょう。

4.余熱で仕上げる

陶器製や鋳鉄製は、火を止めた後もしばらく熱を保ちます。

食材がほぼ加熱できた段階で火を止め、余熱で仕上げれば、煮崩れや加熱しすぎを防ぎやすくなります。

ふたやつまみは高温になります。

鍋つかみを使用し、ふたを開けるときは蒸気が顔や手に当たらないよう、奥側からゆっくり持ち上げてください。

タジン鍋で作りやすい料理

タジン鍋はモロッコ料理だけでなく、日常的な和洋の料理にも活用できます。

肉と野菜の蒸し煮

鶏肉や豚肉に、玉ねぎ、にんじん、じゃがいも、キャベツなどを合わせる基本的な料理です。

塩、こしょう、オリーブオイルだけでも、野菜の甘みと肉のうま味を生かせます。

クミンやコリアンダー、パプリカなどの香辛料を使えば、北アフリカ料理らしい風味になります。

魚介類の香草蒸し

白身魚、鮭、えび、あさりなどに、トマト、レモン、にんにく、ハーブを合わせる料理も適しています。

魚介類は加熱しすぎると身が硬くなるため、野菜の厚さや加熱時間を調整しましょう。

和風の重ね蒸し

白菜と豚肉の重ね蒸し、豆腐ときのこの蒸し煮、鶏肉と根菜のだし煮などにも使えます。

しょうゆ、みそ、だし、ポン酢といった日本の調味料とも好相性です。

冷蔵庫に少量ずつ残った野菜を組み合わせれば、食品ロスの削減にもつながります。

ただし、傷んだ食材が加熱によって安全になるわけではありません。

鮮度を確認したうえで使用してください。

焦げ付きやひび割れを防ぐポイント

タジン鍋を長く使うために、次のような扱いは避けましょう。

  • 空の鍋を長時間加熱する
  • いきなり強火へかける
  • 熱い鍋に冷水を注ぐ
  • 加熱直後の鍋を濡れた布や冷たい台へ置く
  • 冷蔵庫から出した陶器製の鍋をすぐに加熱する
  • 対応していないIHやオーブンで使う
  • 蒸気穴を布や食材でふさぐ

焦げ付きやすい場合は、火を強くするのではなく、少量の油や水分を加え、弱火で加熱します。

鍋と熱源の大きさが合っているかも確認してください。

タジン鍋の洗い方と保管方法

十分に冷ましてから洗う

使用後は鍋を自然に冷ましてから洗います。

熱い陶器へ冷水をかけると、温度差によって割れる可能性があります。

柔らかいスポンジと中性洗剤で優しく洗うのが基本です。

金属たわしや研磨剤入りの洗剤は、釉薬やホーローなどの表面加工を傷付けることがあります。

焦げは無理に削らない

焦げ付いた場合は、ぬるま湯を入れて汚れをふやかし、柔らかいスポンジや木製のへらで少しずつ落とします。

重曹が使えるかどうかは素材によって異なるため、説明書を確認してください。

陶器、アルミ、鋳鉄に同じ手入れ方法を適用するのは避けましょう。

完全に乾かしてから収納する

吸水性のあるタジン鍋を湿ったまま収納すると、カビやにおいの原因になります。

洗浄後は本体とふたを別々にし、風通しのよい場所で十分に乾燥させてください。

収納時は、ふたのつまみに強い荷重をかけないことも大切です。

重ねて保管する場合は柔らかい布などを挟み、転倒や接触による欠けを防ぎます。

中古や譲り受けたタジン鍋を再利用するには

使われなくなったタジン鍋でも、状態と仕様を確かめれば再び活用できる場合があります。

まずはブランド名や型番を調べ、調理用か装飾用か、どの熱源に対応するかを確認しましょう。

安全に調理できる状態であれば、必要とする人への譲渡やリユースショップへの相談も選択肢です。

その際は、使用歴、欠けや貫入の有無、対応熱源、付属品の有無を正確に伝えると、次の使い手が判断しやすくなります。

耐熱性が分からないものや、調理には不向きな装飾用の品でも、すぐに捨てる必要はありません。

小物入れ、撮影用の器、店舗のディスプレイなどとして生かせる可能性があります。

ただし、調理できないものを調理用品として譲ることは避け、用途を明示してください。

深いひび、内側の剥離、落ちないカビ、強い異臭があるものは、食品に触れる用途での再利用を控えます。

自治体の分別ルールを確認し、陶磁器や金属など素材に合った方法で処分しましょう。

タジン鍋に関するよくある質問

タジン鍋は水なしでも使えますか?

水分の多い野菜をたっぷり使う料理では、無水に近い状態で調理できることがあります。

ただし、食材や鍋によっては焦げ付くため、少量の水や油を加えてください。

タジン鍋はIHで使えますか?

IH対応と明記された製品であれば使用できます。

一般的な陶器製品は、そのままではIHで加熱できない場合が多いため、見た目だけで判断しないことが重要です。

ふたに穴がなくても問題ありませんか?

蒸気穴の有無は製品の設計によって異なります。

穴がないから不良品というわけではありません。

メーカーが示す火加減や使用方法に従いましょう。

表面に細かなひび模様があっても使えますか?

釉薬に生じる貫入であれば、陶器特有の表情であることがあります。

一方、本体まで達する亀裂や水漏れがある場合は危険です。

見分けられない場合は加熱せず、メーカーや専門店へ相談してください。

タジン鍋は暮らしの知恵を伝える価値ある道具

タジン鍋の円すい形は、食材から出た蒸気を水滴に変え、鍋へ戻すために生まれた機能的なデザインです。

少ない水分で食材をしっとり仕上げやすく、完成後は器として食卓へ出せる点にも、生活に根差した合理性があります。

一方、タジン鍋には陶器、鋳鉄、アルミ、シリコンなどさまざまな種類があります。

対応する熱源や手入れ方法は一律ではありません。

製品表示を確認し、弱火、急冷の回避、十分な乾燥といった基本を守ることが、長く使うためのポイントです。

食器棚に眠っているタジン鍋や譲り受けた品も、状態と用途を丁寧に見極めれば、調理器具や器、装飾品として再び価値を発揮できます。

流行の調理器具としてだけでなく、北アフリカの環境と食文化から生まれた知恵を受け継ぐ道具として、その魅力を見直してみてはいかがでしょうか。

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KOBIT編集部:Fumi.T)

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