ニューロダイバーシティとは?意味と基本概念をわかりやすく解説
近年、メディアや教育の現場で耳にするようになった「ニューロダイバーシティ」という言葉。その意味や背景を正確に理解している人はまだ決して多いとは言えません。
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発達障害や個性、多様性とどう関わるのか、そして今、なぜ社会がこの言葉に注目しているのでしょうか。
この記事では、その本質を丁寧にひも解いていきます。
ニューロダイバーシティとは?
私たちの社会では今、「多様性」という言葉を耳にする機会が増えました。
その中でも近年注目を集めているのが「ニューロダイバーシティ(Neurodiversity)」という考え方です[1]。
直訳すると「神経多様性」となり、脳や神経の特性の違いを「個性」として尊重しようという理念を指します。
これまで社会では、発達障害などの神経特性を「治すべき障害」と捉えることが一般的でした。
しかしニューロダイバーシティの考え方は、そうした枠組みを超え、「違いそのものを価値とする」方向へと視点を変えています。
この新しい視点が、教育、雇用、そして社会全体の在り方を少しずつ変え始めているのです。
「ダイバーシティ」との違い
「ダイバーシティ」という言葉は、ここ10年のSDGsの取り組みも重なって、すでにビジネスから私たち個人における社会全体で広く知られるようになりました。
ダイバーシティとは、性別・年齢・国籍・宗教・価値観など、さまざまな違いを認め合うという考え方です。
一方で「ニューロダイバーシティ」は、ダイバーシティという枠組みの中で、特に脳や神経の機能的な違いといった、人がどのように感じ、考え、行動するかという“見えにくい多様性”に焦点を当てています。
この点が、従来のダイバーシティとは大きく異なる部分です。
例えば、自閉スペクトラム症(ASD)の方は、特定の分野に深い集中力を発揮することがあります。
また、注意欠如・多動症(ADHD)の方は、瞬発力や創造的な発想に優れているケースも多く見られます。
このような神経の違いは、「欠点」ではなく「強み」として社会の中で活かすことができるのです。
「違いを受け入れる」段階から、「違いを活かす」社会へ。それこそが、ニューロダイバーシティが目指す姿だと言えるでしょう。
「病気」ではなく「多様性」という考え方
ニューロダイバーシティの最も重要な考え方は、「神経特性は病気ではない」という視点から始まることにあります。
人間の脳は、生まれつき多様な構造と機能を持っており、その違いを “自然な個性”として捉えることが大切だとするものです。
これまでは、ASDやADHD、学習障害(LD)といった特性は「障害」として扱われることが多く、支援や治療の対象とされる側面が強くありました。
もちろん、日常生活での困難を軽減するための支援は必要ですが、それと同時に「本人の得意を活かす」という発想が欠かせません。
特に近年では、IT業界や研究分野などで、神経特性を持つ人々がその才能を発揮し、企業の成長に寄与している例も多く見られます。
つまり、ニューロダイバーシティとは「支援すべき存在」ではなく、「社会をともに作る仲間」として互いを尊重する思想なのです。
ニューロダイバーシティをめぐる批判と社会的問題点
ニューロダイバーシティの考え方は、多くの共感を集める一方で、さまざまな批判や課題も指摘されています。
理想と現実の間には、まだ大きなギャップが存在しているのです。
よくある批判と受け取る側の誤解
ニューロダイバーシティに対してよく聞かれる批判の一つに、「障害の困難さを軽く扱っているのではないか」という声があります。
「多様性」という言葉が強調されるあまり、実際に生活の中で支援を必要とする人々の苦労が見えにくくなるという懸念です。
また、一部では「特別扱いではないか」と誤解されることもあります。
しかし、ニューロダイバーシティの理念は「平等な評価」ではなく「公正な支援」を重視するものです。
つまり、全員が同じ条件で競うことを求めるのではなく、それぞれが最も力を発揮できる環境を整えるという発想なのです。
この考え方は、障害者雇用や教育の現場においても徐々に浸透しつつありますが、まだ十分に理解されているとは言えません。
真の意味での「共生社会」を築くためには、まず社会全体がこの考えを正しく理解する必要があります。
社会的な課題や問題点
ニューロダイバーシティの理念はすばらしいものである一方、現実の社会にはまだ多くの課題が残されています。
その一つが、「制度や環境が追いついていない」という点です。
例えば、中小企業での採用活動においては、神経特性に応じた働き方や評価制度が十分に整備されていない、あるいはリソースから整備できないことも現実問題としてあります。
また、学校教育の現場でも、発達特性のある子どもに対して個別の支援が行き届かず、「通常学級での適応」ばかりが求められてしまうことも、いまだ少なくありません。
こうした社会全体とした「理解のばらつき」が大きな問題と言えます。
一部では前向きな取り組みが進む一方で、「特別な配慮を求めすぎている」と誤解される場面もあります。
本来、ニューロダイバーシティは“特別扱い”ではなく、“共に活かし合う”ための視点です。
この理念を真に社会に根付かせるためには、教育・雇用・地域社会のすべての領域で、神経多様性への理解を深めていく必要があるでしょう。
日本社会におけるニューロダイバーシティの動き
社会全体でも、ニューロダイバーシティの概念は少しずつ広がっています。
特に企業や行政の取り組みが進み始めたことで、神経多様性を活かす環境づくりが現実味を帯びてきました。
行政の取り組み
経済産業省は2020年代に入り、ニューロダイバーシティ推進を掲げています[1]。
この取り組みは、発達特性を持つ人材をイノベーションの担い手として位置づけ、社会全体での活躍を支援するものです。
また、野村総合研究所などのシンクタンクでも、神経多様性とイノベーションの関係を分析した報告書が発表されています。
こうした官民の連携が進むことで、採用や教育、地域支援など、具体的な制度設計にも変化が見え始めています。
一方で、法制度や職場環境の整備はまだ道半ばです。
理念を形にするためには、現場レベルでの理解と実践が欠かせません。
ニューロダイバーシティ採用が進んでいる分野
ニューロダイバーシティ採用が特に進んでいるのは、ITやテクノロジー分野です。
自閉スペクトラム症やADHDなどの特性が、データ解析やプログラム設計、テスト業務などで強みとして活かされています。
マイクロソフトやSAPなど、海外の大手企業では早くから「神経多様性採用プログラム」を導入しており、日本国内でも同様の流れが広がりつつあります[3]。
集中力や論理的思考、独創的な視点といった特性は、デジタル分野だけでなく、研究開発やデザイン業界などでも高く評価されています。
つまり、ニューロダイバーシティの推進は「福祉の延長」ではなく、「企業の競争力を高める戦略」としても位置づけられ始めているのです。
ニューロダイバーシティは「違いを力に変える」社会のキーワード
ニューロダイバーシティとは、神経の違いを“弱点”ではなく“強み”として活かすための社会的な考え方です。
その理念は、教育、雇用、そして日常生活のあらゆる場面で新しい価値観を生み出しています。
もちろん、本記事でもご紹介した通り、理想の実現には課題や問題点も多く残されています。
しかし、多様な人がそれぞれの力を発揮できる社会は、より柔軟で創造的な未来を築くはずです。
一人ひとりが自分や他者の特性を理解し合うここそが、ニューロダイバーシティ社会への第一歩なのではないでしょうか。
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(KOBIT編集部:Fumi.T)
<参考文献>
[1]経済産業省,「ニューロダイバーシティの推進について」,available at https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/neurodiversity/neurodiversity.html
[2]筑波大学,「高等教育におけるニューロダイバーシティの実現に関する研究」,available at https://www.osi.tsukuba.ac.jp/sdgs/effort/r-12
[3]経済産業省,「イノベーション創出加速のための企業における「ニューロダイバーシティ」導入効果検証調査事業」,available at https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/neurodiversity/neurodiversity_R4gaiyou.pdf
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