危機遺産とは？世界中の文化・歴史を守るために｜支援先におすすめのNPOまとめ 2021年10月度
世界中にある一生に一度は訪れてみたい世界遺産。しかしながら、その世界遺産の中には消滅の危機にある「危機遺産」があるのをご存知でしょうか？
今回は、この危機遺産とは何か、なぜ起こっているのかを明らかにしていきながら、世界の伝統文化や歴史を守るために活動しているNPOをご紹介します。
危機遺産とは？歴史や文化を守る必要性を考える
危機遺産とは、文字通り世界遺産として維持できない恐れのある遺産のこと。2021年8月時点で1154件ある世界遺産のうち、危機遺産は52件あると言われています。[1] [2]
この数字は2002年と比べて約2.5倍も増えており、その原因は武力紛争、自然災害、大規模工事、都市開発、観光開発、商業的密猟などさまざま。しかしながら、どの危機遺産にも
共通して言えるのは、人間の手によってそれら世界遺産を危機に導いてしまっているのです。
そもそも世界遺産という枠組みは、水没の危機にさらされたエジプトのアブ・シンベル神殿を救おうとする国際的な関心の高まりから生まれたものでした。
つまり世界遺産を維持するということは、地球上で人類が築き上げてきた証や人類が生きていくために必要不可欠な地球の恵みを保護し、後世につなげていく活動なのです。
しかしながら、現実には危機遺産が増え続けていることから、世界遺産がただ失われるだけでなく、人類の未来の存続問題にもつながっているとも考えられます。
危機遺産に登録された遺産は、国際的な支援のもと消滅を回避するための救済活動が行われていますが、私たち1人1人がこの問題について、もっと関心を持つことが必要ではないでしょうか。
【合わせて読みたい】世界遺産とは？登録基準や種類など意外と知らない基礎知識
伝統文化・歴史を守るために世界で活躍しているNPO
人間が築き上げてきた伝統文化や歴史の証は、世界遺産だけに限ったものではありません。
現在世界中には消えゆく危機にある伝統文化や歴史が数多く存在します。そして、こうした伝統文化や歴史を守るために活動しているNPOもまた、数多くあることをご存知でしょうか。
その一例として、ここでは2つのNPOをご紹介します。
NPO法人パシフィカ・ルネサンス
太平洋に浮かぶオセアニアには2万5000もの島が浮かび、そのうち約3000程度の島に人々が暮らしていると言われています。
これまで数千年に渡って伝統文化が受け継がれて歴史が作られてきましたが、急速な近代化によって、伝統文化の消滅危機にさらされている場所が増え続けています。
パシフィカ・ルネサンスでは、こうした太平洋の島々の伝統文化を後世へとつなげていくべく、歴史文化遺産の記録・継承・教育を支援する活動を行っています。
特定非営利活動法人フィリピン日系人リーガルサポートセンター（PNLSC）
日本の領土拡大のため、19世紀末からフィリピンに渡った日本人移民。最盛期には約3万人にものぼる移民社会を築き、現地のフィリピン人女性と結婚して家族を持った方も多くいました。
しかしながら、第2次世界大戦をきっかけに多くの命が失われ、現地に取り残された日系２世たちは、強い反日感情から日本人であることを隠して必至に生き延びてきた歴史があります。
そんな戦争によってフィリピン残留を余儀なくされた日系人は、戦後76年を迎えた現在でも生活しており、約800名が身元未判明のまま暮らし続けています。
戦争という負の歴史を二度と繰り返さないためにも、その当時を必至に生きたフィリピン日系人の証を守ることが日本とフィリピンの友好関係を発展させていくためにも必要不可欠です。
フィリピン日系人リーガルサポートセンターでは、今なおフィリピンで暮らす残留２世の法的、社会的地位向上のため、身元が判明していない方の救済活動にあたっています。
文化や歴史を未来へ伝えていくために私たちができること
誰もが豊かで幸せに暮らせる社会とは、過去の文化や歴史を否定したり決別したりすることではありません。
これまで私たちが築き上げてきた文化や歴史。良いものはもちろん、二度と繰り返してはいけない証も含めて後世へつなげていくことが、よりよい社会を作っていくために必要不可欠なことではないでしょうか。
ただ、世界中の伝統文化や歴史を守るために、私たち個人で何ができるのかと感じる方もいらっしゃると思います。
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[1] 世界遺産｜外務省
[2] UNESCO World Heritage Centre – List of World Heritage in Danger
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