男性育休取得率40.5%でも「ありえない」?背景に潜む社会課題
近年、「男性の育休取得率が大きく伸びている」というニュースを目にする機会が増えてきました。
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しかし、現場では「男性が育休なんてありえない」という声がまだ残っているのも事実です。また、実際に育休を取得した男性の生きづらさも増えている現状もあります。
男女平等の育休制度は整いつつあるのに、なぜこうした空気が消えないのでしょうか。
もし身近に子育て世代がいる場合、この問題は決して遠い社会問題ではありません。
当事者でなくとも、お子様が実は子育てと仕事の両立に悩んでいるケースも少なくありません。
そこでこの記事では、男性の育休取得率の最新状況を整理しながら、その裏側にある社会の課題や、育児家庭が直面している現実について解説していきながら、私たちがどのような形で関わることができるのかについても考えていきたいと思います。
男性の育休取得率はどこまで増えた?
男性の育児休業は、かつては「特別な人だけが取る制度」と見られていました。
しかし現在では、その状況が大きく変わりつつあり、国の政策や企業の取り組みが進んだことで、男性の育休取得は徐々に一般的なものになり始めています。
ここではまず、男性の育休取得率の最新データを確認しながら、日本社会の変化を見ていきます。
最新データ(40.5%)のポイントと「何が変わったのか」
厚生労働省の調査によると、2024年度の男性の育児休業取得率は40.5%となり、初めて4割を超えました[1]。
わずか数年前まで10%台だったことを考えると、この数字は大きな変化と言えるでしょう。
特に大きな転機となったのが、2022年に創設された「産後パパ育休」という制度です。
子どもの出生直後に男性が育児休業を取りやすくする仕組みで、企業には取得の意向を確認する義務も課されました。
その結果、男性が育休を取ること自体は以前よりも一般的になりつつあります。
政府は2025年までに男性育休取得率を50%、2030年度には85%にする目標を掲げており、現在の増加ペースを見る限り、その達成も視野に入ってきました。
ただし、ここで注意したいのは、取得率の数字だけでは育児参加の実態までは見えないという点です。
多くの男性が育休を取得している一方で、その期間が非常に短いケースも多い実態も見え隠れしています。
企業規模や業種別で見える「育休が取れる会社・取れない会社」の二極化
男性育休の取得状況を詳しく見ると、業種によって大きな差があることがわかります。
金融業や情報通信業、専門サービス業などでは取得率が60%前後に達しており、男性が育休を取ることが比較的当たり前になりつつあります。
その一方で、サービス業や娯楽業などでは取得率が20%未満にとどまる場合もあります[2]。
人手不足が深刻な業界では、一人が休むことで職場の負担が大きくなりやすいため、制度があっても実際には取得しづらい状況が残っているのです。
つまり、日本社会では男性育休が広がりつつあるものの、どの職場でも同じように利用できるわけではありません。
働く業界によって、制度の恩恵を受けられるかどうかが大きく左右されているのが現実です。
また、男性の育休取得率を企業規模ごとに見ていくと、日本社会のもう一つの特徴が浮かび上がります。
それは、企業の大きさによって取得のしやすさに大きな差があるということです。
比較的大きな企業では制度整備が進んでおり、育休取得率が50%を超える場合も少なくありません。
社内規定や人事制度が整っているため、育休を取得することが特別な行動ではなくなりつつあります。
一方で、小規模な企業では状況が異なります。
従業員が少ない職場では、誰か一人が休むだけでも業務に大きな影響が出ることがあります。
そのため、育休制度があったとしても「実際には取りづらい」という空気が残ってしまうのが現実としてあります。
このように、日本では「育休を取れる会社」と「取ることが難しい会社」の差が広がっており、制度の普及だけでは解決できない問題が存在しています。
育休取得率だけでは見えない課題
男性の育休取得率が上がっていることは確かに前向きな変化ですが、それだけで問題が解決したとは言えません。
実際には、育休の期間が非常に短いケースが多いことが指摘されています。
厚生労働省の調査では、男性の育休取得期間は2週間未満が多く、長期間休むケースはまだ少数です[1]。
つまり、制度としては利用されていても、育児を十分に担えるほどの時間を確保できていないことが多いのです。
また、育休を取った後に職場へ戻る際の不安を抱える人もいます。
具体的には人事評価への影響やキャリアへの不安を感じ、結果として短期間の取得にとどめてしまうケースも見られています。
こうした状況を考えると、今後の課題は単なる「取得率の向上」ではなく、安心して育休を取り、育児に関わることができる社会環境を整えていくことにあると言えるでしょう。
男性の育休は取れるのに「ありえない」が拭いきれない現実と課題
男性の育休取得率が上昇しているにもかかわらず、「男性が育休を取るのはありえない」という職場の風土、社内の考え方が完全には消えていません。
制度が変わっても、人々の意識や職場の文化はすぐには変わらないためです。
多くの男性が育休取得を望んでいるという調査結果もありますが、実際に取得できるかどうかは職場の雰囲気に大きく左右されます。
周囲の理解が不足している場合、制度があっても利用することが難しくなってしまいます。
この問題は個人の意識だけではなく、日本の働き方や職場文化と深く関係しています。
ここでは、男性が育休を取りづらいと感じる背景を、いくつかの視点から見ていきます。
本人が感じる育休取得の「ありえない」
男性自身が育休を取得することにためらいを感じる理由の一つは、職場の雰囲気です。
制度として育休は認められていても、周囲に前例がない場合、申請すること自体に大きな心理的負担が生まれます。
「自分が休むことで同僚に迷惑をかけるのではないか」「上司に良く思われないのではないか」といった不安が重なり、育休取得を断念してしまうケースもあります。
また、日本では長い間「男性は仕事を優先するべき」という価値観が根強く残ってきました。
その影響で、育休を取ることに対して罪悪感を抱く男性も少なくありません。
このような心理的な壁がある限り、制度が整備されていても実際の利用は広がりにくいのです。
上司・経営層が感じる「ありえない」という風習
男性育休の普及を難しくしている要因の一つに、企業側の意識があります。
特に中小企業では、育休取得に対して慎重な姿勢が見られる場合があり、従業員が長期間休むことは、代替要員の確保や業務の引き継ぎなど、多くの課題が生じてしまいます。
その結果、表立って反対するわけではなくても、「できれば取らないでほしい」という空気が生まれてしまうことがあります。
企業としては業務を維持する必要があるため、こうした問題は単純に意識を変えるだけでは解決できません。
業務の属人化を減らし、誰でも仕事を引き継げる仕組みを作ることが求められています。
「お互い様」になっていない職場の疲弊
育休取得を巡る問題には、同僚の負担という視点もあります。
職場の人数が限られている場合、一人が休むと残ったメンバーの業務量が増えることがあります。
その結果、「育休を取る人」と「負担を引き受ける人」の間で不公平感が生まれてしまうことがあります。
制度自体に反対しているわけではなくても、現場の負担が大きければ理解が得られにくくなるのです。
本来であれば、誰かが休むときにはお互いに支え合う「お互い様」の関係が理想です。
しかし、人員に余裕がない職場ではそれが難しく、結果として育休制度そのものが使いにくくなってしまいます。
この問題を解決するためには、企業だけでなく社会全体で働き方を見直す必要があります。
「ありえない」がハラスメントになる境界線(パタハラ)
男性の育休取得を巡っては、「パタハラ」と呼ばれる問題も指摘されています。
これはパタニティハラスメントの略で、育休取得を理由に不利益な扱いを受けることを指します[3]。
例えば、育休を申請したことで評価を意図的に下げたり、配置転換を命じたりするケースが発生したり、嫌味や圧力によって育休取得を断念させるような行為も問題とされています。
法律上、育休取得を理由に不利益な扱いをすることは禁止されています。しかし実際には、こうした問題が完全になくなったわけではありません。
制度を守るだけでなく、職場文化そのものを変えていくことが、今後の大きな課題となっています。
育休を取得した男性にも増える課題
男性の育休取得が広がること自体は、社会にとって大きな前進と言えます。
しかしその一方で、育児に深く関わる男性が増えたことで、新しい悩みや負担が見え始めているのも事実です。
これまで日本では、子育ての多くを母親が担う家庭が一般的でした。
そのため、父親が育児の中心に関わる状況についての理解や支援の仕組みは、まだ十分に整っているとは言えません。
結果として、仕事と育児の両方を担う父親が、精神的な負担を抱え込んでしまうケースも増えています。
ここでは、男性の育児参加が広がることで生まれている新たな課題について見ていきます。
男性の育児うつ(父性うつ)が増える背景
近年、医学の分野では、父親の産後うつ(父性うつ)と呼ばれる状態が注目されています[4]。
これは、出産後の時期に父親が精神的な不調を抱える状態を指します。
研究によると、子どもの誕生後にうつ症状を経験する男性は一定数存在し、その割合は決して珍しいものではありません。
育児への参加が増えたことで、これまで表面化していなかった問題が見えるようになってきたとも言われています。
背景には、仕事と育児の両立による負担があります。
職場ではこれまで通りの働き方を求められながら、家庭では育児への参加も期待されるため、精神的な余裕がなくなってしまうことがあります。
さらに、男性は「弱音を吐きにくい」と感じる場合も多く、悩みを誰にも相談できないまま抱え込んでしまうことにもつながり、心の不調につながる要因になることも少なくありません。
変わらない「古い働き方」が育児をより難しくさせる
男性の育児うつが増えている背景には、日本の働き方の問題もあります。
多くの職場では、長時間労働を前提とした働き方がまだ残っており、家庭との両立が難しい状況が続いています。
共働き家庭が増えた現代では、育児は夫婦で分担することが当たり前になりつつあります。
しかし、仕事の仕組みが昔のままであれば、家庭とのバランスを取ることは簡単ではありません。
例えば、夜遅くまで働くことが当たり前の職場では、保育園の送り迎えや家事を分担することが難しくなります。
その結果、家庭内で負担の偏りが生まれ、夫婦関係にも影響が出ることがあります。
この問題は個人の努力だけで解決できるものではありません。
社会全体で働き方を見直し、育児と仕事を両立しやすい環境を整えていくことが求められています。
男女平等の育児が必要だからこその「家庭訪問型支援」という選択肢
子育ての負担を家庭だけで抱えることは、想像以上に大きなものです。
特に、夫婦ともに仕事をしている家庭では、時間や体力の余裕がなくなりやすく、精神的な孤立を感じることもあります。
こうした状況を支えるため、地域ではさまざまな子育て支援の取り組みが広がっています。
その一つが「家庭訪問型支援」と呼ばれる支援の形です。
これは、子育て経験のあるボランティアやNPO団体などが家庭を訪問し、親の話を聞いたり、育児のサポートを行ったりする活動です。
一例を挙げると、下記のようなNPO団体があります。
●認定NPO法人ホームスタート・ジャパン
・「ホームスタート・ジャパン」をお宝エイドで見る
・公式サイト
●特定非営利活動法人ひろしまNPOセンター子育て支援事業
・「ひろしまNPOセンター子育て支援事業」をお宝エイドで見る
・公式サイト
家庭の中で起きている悩みを外部の人と共有することで、親の負担を軽減することを目的としています。
近年では、こうした育児支援が、子育て家庭の孤立を防ぐ重要な役割を果たすようになってきました。
なぜ「外の手」が入るとラクになるのか
子育てをしていると、夫婦だけで問題を解決しようとしてしまうことがあります。
しかし、家庭の中だけで悩みを抱えると、どうしても視野が狭くなってしまいがちです。
知人や友人など外部の人が関わることで、安心して話をできる環境が生まれることもあります。
また、専門家や支援員に話を聞いてもらうだけでも、気持ちが軽くなることはありますし、第三者の視点が入ることで、夫婦関係の緊張が和らぐこともあります。
子育ての大変さを共有できる相手がいるだけで、家庭の雰囲気が変わる場合もあります。
歴史を紐解いていけば、子育ては当人だけの問題ではなく、本来、地域社会の中で支え合いながら行ってきたものです。
外部の支援は特別なものではなく、家庭を守るための大切な選択肢の一つと考えるほうが自然です。
支援を受けるのは「甘え」ではなく、家族を守る手段
子育て支援を利用することに対して、「自分たちだけで頑張るべきではないか」と感じる人もいます。しかし、支援を受けることは決して弱さではありません。
むしろ、早い段階で周囲の助けを借りることで、家庭の負担を減らすことができますし、親が余裕を持つことは、子どもの安心にもつながります。
日本では、子育てを家庭だけの問題として捉える傾向が長く続いてきました。
しかし現在では、地域や社会が協力して子育てを支える仕組みが重要視されています。
家庭訪問型支援のような活動は、そうした新しい子育ての形を支える取り組みの一つです。
男性育休の“前進”の裏で起きている新しいしんどさと私たちにできること
男性の育休取得率はここ数年で大きく伸び、日本社会は確実に変化しています。
父親が子育てに関わることが当たり前になりつつあるのは、前向きな動きと言えるでしょう。
一方で、その変化の中で新しい課題も見えてきました。
職場文化の問題や、育児と仕事の両立による負担、そして父親の孤立など、これまであまり注目されてこなかった問題が表面化しています。
子育ては家庭だけで抱えるものではありません。地域社会や支援団体が関わることでも、家庭の負担を軽くすることができます。
もし身近に子育てに悩んでいる家庭があるなら、話を聞いたり、地域の支援を紹介したりするだけでも大きな助けになることがあります。
男性が安心して育休取得できる環境を広げていくためには、社会全体で子育てを支える仕組みを整えていかなければいけません。
解決すべき課題は多々ありますが、まずは一人ひとりが関心を持ち、小さな行動を積み重ねていくことも根本的な改善には必要不可欠です。
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(KOBIT編集部:Fumi.T)
<参考文献>
[1]厚生労働省,「令和6年度雇用均等基本調査」結果を公表します,available at https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r06/06.pdf
[2]パーソル総合研究所,男性育休に関する定量調査,available at https://rc.persol-group.co.jp/wp-content/uploads/thinktank/data/paternity-leave.pdf
[3]厚生労働省,「職場のハラスメント対策について」,available at https://jsite.mhlw.go.jp/hyogo-roudoukyoku/content/contents/202209harassmentsetsumei.pdf
[4]国立成育医療研究センター,「日本の父親における精神的な不調の頻度とそのリスク要因」,available at https://www.ncchd.go.jp/scholar/assets/7a9c3db5c293e8016ca72df23efe9877.pdf
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