能登島ガラス美術館が全面再開:地震の被害と復興までのあゆみを知る

2024年1月に発生した能登半島地震は、多くの人々の暮らしや文化財に大きな爪痕を残しました。
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震源に近い能登島も深刻な被害を受け、地域を代表する文化施設「能登島ガラス美術館」も例外ではありませんでした。
繊細なガラス作品が壊れ、建物の一部にも亀裂が入り、しばらくは閉館を余儀なくされました。そのニュースに心を痛め、復旧の行方を見守ってきた方も少なくないことでしょう。
そして地震から約1年半、能登島ガラス美術館は2025年7月12日、ついに全面再開を果たしました。
この記事では、そんな能登島ガラス美術館の歴史や魅力を振り返りながら、震災による被害の実態、そして再び扉を開くまでの歩みをご紹介します。
復興のシンボルともいえるその姿を通して、能登地方で暮らす人々の生活が着実に前へ進んでいることを感じていただければ幸いです。
石川県の能登島ガラス美術館とは?見どころを知る
石川県七尾市の能登島に位置する能登島ガラス美術館は、海を見下ろす自然豊かな小高い丘に佇む、日本でも珍しいガラス専門の美術館です[1]。
訪れる人はまず、丘の上にそびえる独特な外観に目を奪われます。
近未来的な雰囲気を持ちながら、周囲の海や緑と調和している姿は、まるで能登島そのものが芸術の舞台となっているかのようです。
館内には世界各国の現代ガラス作家による作品が数多く収蔵されています。
繊細で透明感あふれる造形は、季節や時間帯によって光の表情が変わり、訪れるたびに新しい発見があるのも魅力です。
ガラスという素材の多様な可能性を体感できる空間として、開館以来多くの人々に親しまれてきました。
ここからは、美術館の成り立ちや建物の特徴、そして展示作品の魅力についてご紹介していきます。
美術館の歴史
能登島ガラス美術館が開館したのは1991年のことです。
石川県と当時の能登島町(現在の七尾市)が中心となり、「ガラス工芸の島」という構想のもとに誕生しました。
その背景には、1980年代に能登島へガラス工房を誘致したことが大きな契機となっています。
ガラス文化と縁の薄かった土地に、工房と美術館を軸とした新しい文化的拠点を築こうという挑戦でした。
以来30年以上にわたり、美術館は国内外の作家が手掛けた現代ガラス作品の発信拠点として活動を続けてきました。
収蔵品は約500点にのぼり、ガラス芸術の可能性を広く紹介する場として評価を得ています。
建物そのものが芸術
能登島ガラス美術館の見どころのひとつに、建物そのものの存在感があります。
設計を手がけたのは建築家・毛綱毅曠(もづな きこう)氏。彼の代表的な作品のひとつとされるこの建物は、宇宙基地を思わせる斬新なデザインが特徴です。
曲線を多用した未来的なフォルムは、周囲の海や空を背景にするとまるでSF映画のワンシーンのような印象を与えます。
それでいて、光を取り込む工夫や周囲の自然との調和が考えられており、内部空間ではガラス作品がより一層引き立つように設計されています。
訪れる人に「建物そのものが芸術作品である」と思わせる点が、多くの人を惹きつけてやまない理由でしょう。
世界の現代ガラス芸術コレクションと豊かな自然に調和する展示空間
館内には国内外から集められた現代ガラス作品が展示されています。
透明感や色彩の美しさはもちろん、形や質感の多様さに驚かされます。
ガラスという素材の繊細さと力強さを同時に味わえる点は、他の美術ジャンルにはない魅力といえるでしょう。
さらに、この美術館が特別な存在として人々に愛される理由は、能登島の自然と一体化した展示空間にあります。
窓から見える穏やかな海や、四季折々に変化する木々の景色が作品と重なり合い、鑑賞体験そのものを豊かにしてくれるのです。
短時間の滞在であっても、訪れる人に深い印象を残すのは、作品と自然、そして建築が三位一体となった空間だからこそでしょう。
能登半島地震と能登島ガラス美術館の被害
2024年1月1日に発生した能登半島地震は、石川県を中心に大きな被害をもたらしました。
震源が近かった能登島も例外ではなく、能登島ガラス美術館も深刻な影響を受けることとなりました。
美術館は観光や文化活動の拠点であるだけでなく、地域の象徴的な存在でもあったため、被害の報道は多くの人々の胸を痛めました。
ここでは、当時の状況を振り返りながら、どのような被害があったのかを具体的にご紹介します。
2024年能登半島地震の概要
元日の午前中に発生したこの地震は、最大震度7を記録する大規模なものでした。
能登半島全域で住宅や道路、ライフラインに甚大な被害が発生し、観光施設や文化財も大きな打撃を受けています。
交通や水道の遮断により救援や復旧作業が遅れる中、能登島ガラス美術館も被害状況の把握に時間を要しました。
建物の被害状況
美術館の本館には複数のひび割れが発生し、外壁の一部も剥がれ落ちました。
展示室の天井部分にも損傷が見られ、安全面から立ち入りが制限される箇所もあったと報告されています。
また、来館者の利便性を支えていたエレベーターが故障し、バリアフリー対応が一時的に不可能となりました。
建物自体の安全性を回復させることは、復旧に向けた大きな課題だったのです。
収蔵作品・展示作品への被害
館内には約500点の収蔵作品がありますが、そのうち23点の作品が倒れたり欠けたりするなどで被害を受けました。
中でも屋外に設置されていた大型作品である、楠田信吾氏の「COSMIC FLY」は大破し、藤田喬平氏の代表作「蔵」も無残に崩れてしまいました。
開館当初から美術館を象徴する存在を始め、これらの作品は単なる展示物ではなく、美術館の歴史や地域の誇りと深く結びついていたため、関係者にとっては耐えがたい出来事だったといえるでしょう。
また地震を通じて、美術館だけでなく能登島全体の文化的損失として大きな衝撃も与えました。
能登島ガラス美術館の復旧と再開の道のり
大きな被害を受けた能登島ガラス美術館は、その後すぐに全面再開できたわけではありません。
建物や作品の修復に加え、交通や水道といったライフラインの問題も重なり、段階的な対応が求められました。
文化施設の復旧は人々に希望を与える一方で、被災地全体の状況を見極めながら進めなければならない複雑さがあったのです。
段階的な復旧が必要だった理由
地震直後は館内の被害状況すらすぐには確認できませんでした。
重い展示ケースや壊れやすい作品の取り扱いには専門的な技術が必要であり、安全が確保されない中で拙速に作業を進めることはできなかったのです。
そのため、被害が比較的少なかった別棟を整備して2024年7月に部分的な営業を再開することになりました。
来館者に完全な展示を届けるには時間がかかりましたが、少しずつでも扉を開いたことは復興の一歩として大きな意味を持ちました。
続いて2025年4月にはメインの展示棟が修復を終え、安全に利用できるようになりました。
壁や天井の修繕、エレベーターの再稼働、展示ケースの交換など、館内の環境を回復させる工事が着実に進められていたのです。
こうして基盤を整えたうえで、全面的な再開へと歩を進めることが可能となりました。
地震から1年半を経て念願叶った完全再開
そして2025年7月12日、能登島ガラス美術館は約1年半振りの全面再開を果たします。
再開に合わせて開催されたのが、本来2024年に開催が予定されていた特別展「第16回 ’24日本のガラス展」でした[2]。
震災の影響で延期となりながらも、82名の作家による最新作が並び、復旧を記念する意義深い展示となりました。
同時に再開を祝う式典には七尾市の関係者も出席し、復興に向けた希望が込められた場としての大きな役割も担ったのです。
ガラス作品の輝きが再び館内に広がった瞬間は、地元にとっても訪れる人々にとっても忘れがたい出来事だったといえるでしょう。
能登島ガラス美術館の復興に見る。能登半島地震の復興支援で私たちにできること
能登島ガラス美術館は、自然に囲まれた能登島の地でガラス芸術の魅力を発信し続けてきた特別な美術館です。
2024年の能登半島地震では建物や貴重な作品に深刻な被害を受けましたが、多くの人々の支えと努力によって段階的に復旧が進められ、2025年7月に全面再開を果たしました。
再開と同時に開催された特別展は、単なる展示会ではなく復興を象徴するイベントとなりました。
美術館はこれからも国内外のガラス作品を通じて人々に感動を届けるとともに、能登島観光の拠点として地域の再生を支えていくでしょう。
震災の記憶を抱えながらも新たな一歩を踏み出した能登島ガラス美術館。その歩みは、復興を見守る人々にとって大きな励ましとなるはずです。
現在、被災地では様々な支援が行われていますが、一例として下記のNPO団体が災害発生直後から避難所で水や衛生用品等の物資配布をはじめとした支援活動を行っています。
- 認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパン:石川県輪島市を中心に食品・水等の物資配布や炊き出しを実施中
- AAR Japan[難民を助ける会]:輪島市、珠洲市で炊き出し、県内各地の障がい者施設に支援物資配布
- NPO法人フードバンクとやま:水や食品の寄付、現地で炊き出しする団体への食品や備品の寄付
- 公益社団法人日本国際民間協力会(NICCO):輪島市を中心に生活物資や食料の配布
- 特定非営利活動法人ジャパンハート:能登町、輪島市を中心に要配慮者用支援物資の提供および避難所での医療分野における人的支援
- シャンティ国際ボランティア会:県内で支援物資の配布
いまだ被災地の混乱は収まっていないため、個人としてどのような支援をするのが良いのか、自分には何ができるのか、とお考えの方も多いかもしれません。
お宝エイドでは、上記でご紹介したような、被災地で復旧活動や被災者のサポートを行っているNPOの活動を支援する形で、能登半島地震への支援へとつなげています。
お宝エイドでは様々な物品を通じたNPO団体の支援を行うことができます。お宝エイドでは郵送いただいた「お宝」を換金し、ご指定いただいたNPO団体の活動原資として送り届けます。あなたもお宝エイドを通じて能登半島地震の被災地支援活動をはじめてみませんか。
(KOBIT編集部:Fumi.T)
<参考文献>
[1]石川県能登島ガラス美術館,available at https://nanao-af.jp/glass/
[2]能登日和,「【7/12(土)~10/19(日)】石川県能登島ガラス美術館、待望の再開!「第16回 ’24日本のガラス展」開催」,available at https://notobiyori.com/article/BfGKHpFP?utm_source=chatgpt.com
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