わずか28歳という短い生涯の中で、後に近代美術史における著名洋画家の1人として謳われる作品を遺した青木繁。

今回は、代表作「海の幸」、「わだつみのいろこの宮」を始め、彼が短き人生で作り上げた作品価値に迫ります。

青木繁とは？短命の天才画家の人生を紐解く

幼少期より天才と呼ばれた青木繁と坂本繁二郎

青木繁は、1882年に現在の福岡県久留米市で、旧久留米藩士の家系を引く家庭の長男として生を受けました。

その家庭は下級武士としての厳しい生活を経験しており、幼い頃から厳格な教育を受けて育ちました。小学校では全ての科目で優れた成績を収めたと言われており、とりわけ画家としての卓越した才能は周囲から一目置かれていました。

しかし、そんな青木が初めて挫折感を覚えたのは、高等小学校で同じクラスになった坂本繁二郎の存在でした。

当時10歳にも満たない坂本が、自分より優れた技術を持ち、さらに将来の目標まで抱いていたことは、青木にとって驚きと新たな刺激となる出来事だったのです。

坂本繁二郎は後に梅原龍三郎や安井曾太郎と並んで洋画界を代表する巨匠とされる人物で、青木とは同い年の友人であり、生涯にわたり深い友情で結ばれていたことはよく知られています。

天才画家「青木繁」の覚醒

青木繁は16歳のとき、単身で上京し、画塾「不同舎」に入門して日本近代洋画の草分けとされる小山正太郎に師事しました。

その後、東京美術学校（現在の東京藝術大学）に進学し、「日本近代洋画の父」と称される黒田清輝の指導を受けました。

この頃、青木は家の貧困により仕送りが途絶え、家賃さえ払えない厳しい生活を強いられました。しかし、彼はその逆境に負けることなく、制作に情熱を注ぎます。代表作「黄泉比良坂」などを制作し、初めての「白馬賞」を受賞するなど、一躍注目を集める存在となりました。

代表作「海の幸」の誕生と早すぎる死

1904年に東京美術学校を卒業した青木繁は、就職することなく絵画に専念する道を選びました。同年、坂本繁二郎や恋人の福田たねらと共に千葉県館山市布良で2か月間を過ごします。

この地で生まれたのが、青木繁の代表作であり、現在は重要文化財に指定されている「海の幸」です。

この作品は、同年秋に開催された第9回白馬会展に出品され、黒田清輝、和田英作、岡田三郎助、藤島武二といった名だたる画家たちの作品に並ぶ形で展示されました。

その結果、画壇や文壇、さらには新聞や雑誌でも大きな注目を浴び、青木の画家人生における絶頂期を迎えることになります。

しかし、青木繁はその非凡な才能に反して、社会的な適応力が乏しく、福田たねとの間に子どもをもうけるものの、生活苦から結婚することも叶いませんでした。

そして、絵具を買う費用すらままならない状況の中、1907年に父の危篤を知り、単身帰郷します。

まもなくして父は亡くなり、残された家の借金や家族との衝突に疲れ果てた青木は、放浪の生活を送るようになります。

その間も創作を続け、晩年には「朝日」という大作を残しましたが、持病の肺結核が悪化し、1911年、わずか28歳で短い生涯を閉じました。

青木繁の代表作と作品価値

青木繁の代表作には、下記のような作品が広く知られています。

先ほど触れたように、28歳という若さで亡くなったことから、作品が作られた期間はわずか9年足らずで作品数は少なく、ほとんどの作品は美術館に収蔵されています。

そのため、青木繁自信が手掛けた作品実物であれば、数百万はくだらないと言われていますが、複製画やリトグラフでも人気が非常に高く、数万円から数十万円で取引されることも少なくありません。

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（KOBIT編集部：Fumi.T）