アルベロベッロが世界遺産に登録された理由とは?トゥルッリの歴史・構造・文化的価値を解説
アルベロベッロは、イタリア南部のプーリア州バーリ県にある町です。
お宝エイドでは郵送いただいた「お宝」を換金し、ご指定いただいたNPO団体の活動原資として送り届けます。この機会にお宝エイドでの支援活動をはじめてみませんか。
※もし、ご支援される際に「譲渡所得税」や「寄付金控除」についてご心配の場合は、ご支援される団体様までお問合せください。
プーリア州はイタリア半島を長靴に見立てたときの「かかと」に当たり、オリーブ畑やブドウ畑、石灰岩を生かした白い建築物が多い地域として知られています。
アルベロベッロを象徴するのが、白い壁と円すい形の石屋根を持つ「トゥルッリ」です。
トゥルッリは複数形で、建物一棟を指す単数形は「トゥルッロ」といいます。
小さな円すい屋根が連なる町並みは、おとぎ話に登場する集落のようにも見えます。
しかし、トゥルッリは景観を美しく見せるための装飾的な建物ではありません。
地域で手に入る石材を使い、住居や倉庫、作業場などとして利用されてきた実用的な建築です。
アルベロベッロの価値は、変わった形の家が残っていることだけにあるのではありません。
土地の素材を生かす知恵、石を積む職人技、建物を修理しながら使い続ける文化、そして集落全体がつくり出す景観が一体となっている点にあります。
アルベロベッロが世界遺産に登録されたのはいつ?
「アルベロベッロのトゥルッリ」は、1996年にユネスコの世界文化遺産へ登録されました。
登録対象の中心となるのは、トゥルッリが密集するモンティ地区とアイア・ピッコラ地区です。
このほか、歴史的に重要なトゥルッロ・ソヴラーノやカーサ・ダモーレなども構成資産に含まれています。
モンティ地区は、多数のトゥルッリが斜面に並ぶアルベロベッロ最大の観光エリアです。
現在は土産物店や飲食店、工房などとして使われる建物も多く、円すい屋根が連続する景観を間近で見ることができます。
一方のアイア・ピッコラ地区には、比較的落ち着いた住宅地の雰囲気が残っています。
世界遺産でありながら、今も人々の暮らしと結び付いていることを実感できる地区です。
アルベロベッロは、過去の建築を並べた屋外博物館ではなく、歴史的建物が現役で使われている「生きた遺産」なのです。
アルベロベッロが世界遺産に登録された理由
アルベロベッロが世界遺産として評価された背景には、トゥルッリが伝統的な乾式石積み建築の優れた例であること、地域の環境に適応した集落がまとまって残っていること、そして建築と生活文化が長く結び付いてきたことがあります。
ユネスコの登録基準では、文化遺産の基準(iii)(iv)(v)に該当します。
簡潔にいえば、伝統文化を伝える貴重な証拠であり、歴史上重要な建築形式の顕著な例であり、さらに自然環境と人間の営みが結び付いた伝統的集落の代表例でもある、という評価です。
接着材に頼らない乾式石積みの技術
トゥルッリの大きな特徴は、石灰岩を積み上げる乾式石積みの技術にあります。
乾式石積みとは、基本的にモルタルなどの接着材へ頼らず、石の形や重さ、配置の工夫によって壁や構造物をつくる方法です。
石を積むだけなら簡単に思えるかもしれませんが、安定した建物にするには、石の性質を見極める経験が欠かせません。
職人は大きさや厚さの異なる石を選び、荷重が偏らないように組み合わせます。
現存する建物には後世の補修材が使用されている場合もありますが、その根底には地中海沿岸で古くから受け継がれてきた石造技術があります。
地域で得られる石灰岩を有効に活用
プーリア州には石灰岩質の土地が広がっています。
農地を開墾すると多くの石が出るため、それらを畑の境界や建物の材料として活用してきました。
遠方から高価な材料を運び込むのではなく、身近にある石を暮らしへ取り込んだのがトゥルッリです。
不要な石を廃棄物として扱わず、耐久性のある住居へ変える発想は、現代のリユースや循環型社会にも通じます。
建物を解体した場合にも、石は積み直して再利用できます。
素材を使い切り、修理しながら長く役立てるという価値観が、トゥルッリの構造そのものに表れています。
建物と暮らしが一体となった集落景観
トゥルッリは王宮や大聖堂のような権力の象徴ではなく、地域の人々が生活するための建物でした。
住居だけでなく、農作物を保管する倉庫、家畜を置く空間、家内作業の場などにも使われています。
一棟の著名な建築だけが残っているのではなく、多数のトゥルッリが道や広場と結び付き、まとまりのある集落を形成している点が重要です。
人々の生活から生まれた建築が、地域全体の景観として保存されていることが、世界遺産としての価値を高めています。
トゥルッリはどのように造られている?
トゥルッリの外観で最も目を引くのは円すい形の屋根ですが、その形は単なるデザインではありません。
壁、屋根、室内空間を詳しく見ると、限られた材料で丈夫な建物をつくるための工夫が分かります。
厚い石壁が室内を囲む
トゥルッリの壁には石灰岩が積まれ、全体的に厚く造られています。
厚い壁は建物を安定させるだけでなく、外気温の変化が室内へ急激に伝わるのを抑える役割も果たします。
壁の厚みを利用し、収納用のくぼみや小さな空間を設けることもありました。
窓などの開口部は比較的小さく、外観から想像するより室内は簡素です。
限られた面積を無駄なく使うため、壁際に家具や生活道具を配置し、必要に応じて部屋を増築するなど、家族構成や用途に合わせた変化も見られます。
石板を重ねた円すい屋根
トゥルッリの屋根は、石を上へ積むにつれて少しずつ内側へせり出させることで、円すい状に仕上げられています。
このような仕組みは持ち送り構造と呼ばれ、大きな木造梁に頼らず空間を覆うことができます。
屋根の外側には、薄く加工した石灰岩の石板が重ねられます。
これらの石板は一般に「キアンカレ」と呼ばれ、雨水が下へ流れるように配置されています。
石の形や重なり方が不適切であれば水が入り込むため、屋根の施工や修復には専門的な技能が必要です。
一軒の家に円すい屋根がいくつも並ぶことがあります。
これは、一つの屋根が一つの主要空間に対応し、必要に応じて複数の空間を連結しているためです。
外から屋根の数や配置を見ることで、建物内部のおおまかな構成を想像できます。
屋根の模様と頂部の飾りが持つ意味
トゥルッリの屋根には、白い石灰で不思議な記号が描かれていることがあります。
十字架、聖心、太陽、月、星、眼のような図形など、その種類はさまざまです。
信仰や願いを表す白いシンボル
屋根の記号には、キリスト教に関係するものだけでなく、古い信仰や魔除けに由来すると考えられるものもあります。
家族の安全、豊作、繁栄などへの願いが込められたと解釈される例もありますが、すべての図柄について意味が明確に判明しているわけではありません。
観光地としての印象を強めるため、後世に描き直された模様もあります。
そのため、目にした記号を一つの意味に断定するのではなく、キリスト教、民間信仰、装飾、家の識別といった複数の背景が重なっているものとして見ることが大切です。
屋根の先端に置かれたピナクル
円すい屋根の頂部には、「ピナクル」と呼ばれる石製の飾りが置かれています。
球形や円盤形、多面体など形状は多様で、屋根を印象的に見せる重要な要素です。
ピナクルの形は、石工職人の印、建て主の象徴、宗教的な意味を示すものなどと説明されますが、こちらも由来には諸説あります。
価値は石材そのものの価格ではなく、建築との組み合わせや土地の歴史、職人技にあります。
建物から切り離された古材や装飾品を珍品として扱うのではなく、元の場所や用途を含めて文化的価値を考える必要があります。
トゥルッリはなぜ造られた?税逃れにまつわる伝承
アルベロベッロのトゥルッリについては、「税金を逃れるため、すぐに取り壊せる家として造られた」という話がよく知られています。
近世の南イタリアでは、新しい集落の建設に王権の許可や負担が必要だったため、地域の領主が調査の際に解体できる乾式石積みの建物を農民に造らせた、という説です。
接着材を使用しない建物なら、命令を受けたときに屋根や壁を崩し、恒久的な集落ではないように見せられたと伝えられています。
ただし、税逃れだけをトゥルッリ誕生の唯一の理由と断定することはできません。
乾式石積みはアルベロベッロだけの特殊な発明ではなく、石灰岩が豊富な地中海地域で古くから用いられてきた技術です。
木材が限られる環境、現地で石を入手しやすい事情、農地から出た石を活用する必要性など、複数の要因によって発達したと考えるのが自然です。
アルベロベッロは18世紀末に封建的な支配から解放され、より恒久的な町として発展していきました。
その後もトゥルッリは取り壊されるだけでなく、増改築や補修を重ねながら使い続けられました。
有名な税逃れの逸話は町の歴史を知る手掛かりですが、伝承と確認できる史実を分けて理解することが重要です。
トゥルッリは現在も使われている?
世界遺産に登録されたトゥルッリの多くは、現在もさまざまな形で活用されています。
住宅として受け継がれているほか、宿泊施設、飲食店、土産物店、工房、博物館などに転用された建物もあります。
住居として使い続けるための工夫
歴史的な建物を現代の住居として使うには、電気、水道、排水、空調などの設備が必要です。
しかし、利便性だけを優先して壁を壊したり、外観を大きく変えたりすれば、文化遺産としての価値が損なわれます。
そこで、伝統的な外観や石造構造を守りながら、目立ちにくい方法で設備を導入する工夫が行われています。
古い建物を保存するとは、何にも使わず当時の姿のまま固定することではありません。
歴史的な特徴を尊重しつつ、現代の用途に合わせて慎重に手を加えることも、建物を次世代へ残す方法です。
観光利用と保存の両立
店舗や宿泊施設として活用すれば、修理や維持に必要な費用を確保しやすくなります。
また、実際に中へ入ることで、壁の厚みや屋根の構造、独特の室内空間を体感できます。
観光はトゥルッリの価値を世界へ伝える機会であり、地域の雇用を支える要素でもあります。
一方、過度な商業化や観光客の集中は、住民の生活環境や静かな集落景観へ影響を及ぼします。
世界遺産を守るためには、建物を観光商品として消費するだけでなく、今も生活している人がいることを理解し、私有地への立ち入りや無断撮影を避ける配慮が求められます。
アルベロベッロから学ぶ、古いものを使い続ける価値
トゥルッリの価値は、建物を構成する石灰岩の価格や、古い装飾品としての希少性だけでは測れません。
地域の風土、石工の技術、家族の暮らし、修理の履歴、町並みのまとまりが重なることで、代わりのない文化的価値が生まれています。
乾式石積みの建物は、傷んだ部分を取り外し、石を選び直して積み直すことができます。
すべてを新品へ交換するのではなく、使える材料を残しながら必要な箇所を直す考え方は、家具や器、衣類などを手入れして使い続ける姿勢にも通じます。
また、古いものの傷や不均一さは、必ずしも欠点ではありません。
トゥルッリの石壁や屋根に見られる微妙な違いは、手作業で造られ、長い年月をかけて補修されてきた証拠です。
新品のように均一であることより、素材と技術の来歴が残っていることに価値があります。
アルベロベッロが世界遺産に登録されたのは、珍しい円すい屋根があるからだけではありません。
土地で得られる素材を無駄なく使い、壊れた部分を直し、用途を変えながら建物を受け継いできた文化そのものが評価されています。
トゥルッリは、モノを長く使うことが資源の節約にとどまらず、人の記憶や地域の技術を未来へ残す行為でもあると教えてくれる世界遺産です。
お宝エイドでは様々な物品を通じたNPO団体の支援を行うことが出来ます。お宝エイドでは郵送いただいた「お宝」を換金し、ご指定いただいたNPO団体の活動原資として送り届けます。あなたもお宝エイドでの支援活動をはじめてみませんか。
(KOBIT編集部:Fumi.T)
あわせて読みたいおすすめ記事
RECOMMEND