グレートバリアリーフが世界遺産に登録された理由とは?自然的価値や環境問題を解説
グレートバリアリーフは、オーストラリアを代表する景勝地であると同時に、地球規模で守るべき貴重な自然環境です。
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世界最大級のサンゴ礁地帯として知られていますが、世界遺産に登録された理由は、単に面積が広いからではありません。
美しい海中景観、サンゴ礁が形成されてきた地球の歴史、現在も続く生態学的な営み、希少種を含む生物多様性など、複数の価値が国際的に認められています。
一方、海水温の上昇によるサンゴの白化をはじめ、深刻な環境問題にも直面しています。
この記事では、グレートバリアリーフの場所や規模、世界遺産への登録年、評価された四つの理由、代表的な生き物、危機遺産をめぐる議論、保全のために行われている取り組みを詳しく解説します。
グレートバリアリーフとは
オーストラリア北東部に広がるサンゴ礁地帯
グレートバリアリーフは、オーストラリア北東部のクイーンズランド州沖に広がる世界最大級のサンゴ礁地帯です。
南北の長さは約二千三百キロメートルに及び、世界遺産に登録されている区域の面積は約三十四万八千平方キロメートルにもなります。
名称に含まれる「バリアリーフ」とは、海岸から離れた場所に形成され、陸地と外洋の間を隔てるように延びる堡礁を意味します。
ただし、グレートバリアリーフは一枚の巨大なサンゴ礁ではありません。
数千のサンゴ礁、多数の島、砂州、ラグーンなどから構成される、複雑で広大な海洋環境です。
地域によって水深や海流、海底地形、陸地からの距離が異なるため、それぞれの環境に適応した多様な生物が暮らしています。
グレートバリアリーフの価値を理解するには、サンゴだけを見るのではなく、海、島、沿岸域、生き物同士のつながりを含む一つの大きな生態系として捉えることが大切です。
グレートバリアリーフが世界遺産に登録されたのはいつ?
グレートバリアリーフがユネスコの世界遺産に登録されたのは、一九八一年です。
世界遺産は文化遺産、自然遺産、複合遺産に分けられますが、グレートバリアリーフは「世界自然遺産」に該当します。
世界遺産に選ばれるためには、国境や世代を超えて重要と認められる「顕著な普遍的価値」が必要です。
自然遺産には四つの評価基準があり、グレートバリアリーフはそのすべてを満たしています。
一つの特徴だけで登録されたのではなく、自然美、地球の歴史、生態系の進行過程、生物多様性の各面で価値を認められた点が、グレートバリアリーフの大きな特色です。
世界遺産に登録された四つの理由
理由一:世界的に優れた自然美がある
グレートバリアリーフには、青い海と白い砂州、緑に覆われた島々、複雑な形を描くサンゴ礁が織り成す壮大な景観があります。
上空や海上から眺める景色だけでなく、水中に広がるサンゴや色鮮やかな魚の群れも、優れた自然美の一部です。
さらに、クジラの回遊や繁殖、ウミガメの産卵、海鳥の大規模な営巣など、季節によって現れる生命の営みも景観的価値を高めています。
静止した風景ではなく、生き物の行動を含めて刻々と変化する自然美が評価されているのです。
理由二:サンゴ礁形成の歴史を伝えている
サンゴ礁は、サンゴなどの生物がつくる炭酸カルシウムの骨格が、長い時間をかけて積み重なることで形成されます。
グレートバリアリーフの地形は、過去の海面変動や気候変化、地質学的な作用の影響を受けながら発達してきました。
現在見られる姿は完成したものではなく、サンゴの成長や浸食、堆積などによって今も変化し続けています。
そのためグレートバリアリーフは、地球の歴史とサンゴ礁の形成過程を読み取れる「生きた記録」といえます。
理由三:進行中の生態学的過程を観察できる
グレートバリアリーフでは、生物の進化や共生、捕食、繁殖、移動といった生態学的な過程が現在も続いています。
代表例が、サンゴと褐虫藻などの微細な藻類との共生です。
サンゴは体内に共生する藻類が光合成によってつくる栄養を利用し、藻類はサンゴから生存に必要な環境や物質を得ています。
また、サンゴ礁は魚類の餌場や隠れ場所、産卵場所として機能します。
島には海鳥が集まり、海鳥が運ぶ栄養分は島や周辺海域の生態系にも影響を与えます。
海中と陸上、沿岸と外洋が結び付き、物質や生物が移動する大規模な自然の仕組みを観察できることも重要な価値です。
理由四:豊かな生物多様性を支えている
グレートバリアリーフには、多種多様なサンゴや魚類のほか、ジュゴン、ウミガメ、クジラ、イルカ、サメ、エイ、海鳥などが生息しています。
絶滅の危機にある種にとっても、餌場や繁殖地となる重要な海域です。
生物の種類が多いだけでなく、浅いサンゴ礁、深い海域、藻場、マングローブ、島など、性質の異なる環境が連続して存在しています。
この環境の多様さが、それぞれ異なる生き方をする生物を支えています。
サンゴ礁が持つ価値
サンゴは植物や岩ではなく動物
サンゴは外見から植物や岩のように思われがちですが、イソギンチャクやクラゲと同じ刺胞動物の仲間です。
「ポリプ」と呼ばれる小さな個体が集まり、群体をつくって暮らしています。
造礁サンゴは石灰質の骨格を形成します。
長い年月の中で古い骨格の上に新しい骨格が重なり、ほかの生物がつくった物質なども加わることで、大規模なサンゴ礁へと成長します。
目の前にあるサンゴ礁は、数え切れないほどの小さな生き物の活動によって築かれたものなのです。
多くの生き物を育む「海の熱帯雨林」
サンゴ礁は「海の熱帯雨林」と表現されることがあります。
複雑な凹凸が隠れ場所を生み、サンゴや海藻、小型生物がさまざまな魚の餌になります。
幼魚が外敵から身を守りながら成長する場所としても重要です。
サンゴだけを保護すれば生態系全体を守れるわけではありません。
藻類を食べる魚、サンゴを食べる生物、大型魚、微生物などが相互に関わることで、サンゴ礁の状態が保たれています。
一つの生物が大きく減少すると、その影響が別の生物へ連鎖する可能性があります。
人間の生活にも恩恵をもたらす
サンゴ礁は自然環境だけでなく、人間の暮らしにも価値をもたらします。
沖合のサンゴ礁は外洋から押し寄せる波の力を弱め、海岸の浸食や高波の被害を抑える自然の防波堤として機能します。
また、漁業資源を育む場所であり、観光、環境教育、科学研究の基盤でもあります。
ただし、利用者が増えれば、船の投錨、接触、廃棄物、過剰な漁獲などによって負荷が生じます。
自然がもたらす恩恵を将来も受け続けるには、保全と利用のバランスが欠かせません。
先住民とグレートバリアリーフの関係
グレートバリアリーフ周辺は、人の影響をまったく受けてこなかった無人の自然ではありません。
沿岸部や島々では、アボリジナルやトレス海峡諸島民をはじめとする先住民が、長い年月にわたって海と関わりながら暮らしてきました。
海は魚介類を得る場所や移動経路であるだけでなく、祖先から伝わる物語、信仰、儀礼、共同体の記憶と深く結び付いた文化的空間でもあります。
生物の行動、季節、風、潮流に関する伝統的な知識は、現代の調査や保全活動にも生かされています。
グレートバリアリーフは自然遺産として登録されていますが、その価値を考える際には、自然と共に暮らしてきた人々の文化や知識も見落とせません。
グレートバリアリーフが直面する環境問題
海水温上昇によるサンゴの白化
特に深刻な問題が、海水温の上昇などによって起こるサンゴの白化現象です。
サンゴが強いストレスを受けると、体内で共生している藻類が失われ、骨格が透けて白く見えるようになります。
白化したサンゴが直ちに死んでいるとは限りません。
海水温などの環境が早期に改善すれば、共生する藻類を取り戻して回復する場合があります。
しかし、高温状態が長く続いたり、白化が繰り返されたりすると、栄養不足によって弱り、死滅する可能性が高まります。
気候変動と海洋酸性化
地球温暖化に伴う海水温の上昇は、大規模な白化現象の発生頻度や深刻さに影響します。
白化と回復の間隔が短くなると、サンゴ礁が十分に再生する前に次の被害を受けかねません。
また、海が大気中の二酸化炭素を吸収することで進む海洋酸性化も問題です。
海水の化学的な性質が変わると、サンゴが炭酸カルシウムの骨格を形成しにくくなるおそれがあります。
オニヒトデやサイクロン、水質悪化
サンゴを食べるオニヒトデは自然の生態系を構成する生物ですが、大量発生すると広い範囲のサンゴに被害を与えます。
強いサイクロンもサンゴを物理的に破壊する要因です。
さらに、沿岸の開発や農地などから土砂や栄養塩が海へ流れ込むと、水の透明度や生態系のバランスに影響する場合があります。
個々の要因に耐えられるサンゴ礁でも、複数の負荷が同時に加わると回復が難しくなります。
グレートバリアリーフは危機遺産なのか
グレートバリアリーフは世界遺産として登録されていますが、その保全状況をめぐって、ユネスコでは「危機にさらされている世界遺産一覧」への記載が繰り返し議論されてきました。
危機遺産への記載は、世界遺産としての価値がなくなったことや、直ちに世界遺産から抹消されることを意味しません。
自然災害、開発、紛争、気候変動などの脅威を国際社会で共有し、保全措置や支援を促すための制度です。
指定状況やユネスコの評価は審議によって更新される可能性があります。
そのため、現在の位置付けを調べる場合は、ユネスコ世界遺産センターなどの公式情報で最新の内容を確認することが大切です。
指定の有無だけに注目するのではなく、白化や水質悪化などの脅威が実際に存在することを理解する必要があります。
グレートバリアリーフを守る取り組み
海域を区分して保護と利用を両立する
広大なグレートバリアリーフでは、すべての場所を同じ方法で管理するのではなく、保護、観光、漁業、研究などに応じて海域を区分するゾーニングが行われています。
重要度の高い海域で採取や漁業を制限しつつ、条件を設けて利用できる区域も設定する方法です。
自然を完全に人から切り離すのではなく、生態系への負荷を抑えながら持続可能に利用することが目指されています。
水質改善やオニヒトデ対策を進める
陸地から海へ流れ込む土砂や栄養塩を減らすため、農業や土地利用の改善が進められています。
また、オニヒトデの監視や駆除、サンゴ礁の状態を把握するモニタリング、観光事業者や地域住民による情報収集なども重要な取り組みです。
サンゴの養殖や移植といった再生技術の研究も行われています。
ただし、約三十四万八千平方キロメートルに及ぶ世界遺産区域全体を人工的に修復することは現実的ではありません。
地域ごとの対策に加え、海水温上昇の原因となる気候変動への国際的な対応が不可欠です。
観光で訪れる際に意識したいこと
グレートバリアリーフを訪れることは、その価値や変化を自分の目で知る機会になります。
一方、サンゴに触れる、踏みつける、船のいかりで傷付けるといった行為は、生態系へ直接的な影響を与えます。
海岸にあるサンゴ片や貝殻も、地域の規則を確認せずに持ち帰るべきではありません。
一見すると不要に見える自然物でも、小さな生物のすみかになったり、分解されて砂浜や生態系の一部になったりします。
ツアーを選ぶ際は、環境教育、廃棄物削減、適切な係留、野生生物との距離の確保、保全活動への協力などに取り組む事業者かどうかを確認するとよいでしょう。
責任ある観光による収入は、地域の雇用や自然環境の管理を支える力にもなります。
グレートバリアリーフに関するよくある質問
宇宙から肉眼で見える唯一の生物構造物ですか?
「宇宙から肉眼で見える唯一の生物構造物」という説明は、広く知られているものの正確とはいえません。
観測する高度や天候、海面の状態などの条件によって、サンゴ礁を含む海域の色や模様を識別できる場合はありますが、常に肉眼で明瞭に見えるわけではありません。
サンゴが白くなったら死んでいるのですか?
白化は、サンゴが高水温などの強いストレスを受け、共生する藻類を失った状態です。
白化直後に死んでいるとは限らず、環境が改善すれば回復する可能性があります。
ただし、白化状態が長引くほど死亡の危険性は高まります。
なぜ世界遺産として守る必要があるのですか?
グレートバリアリーフは、一つの国の観光資源にとどまらず、地球の歴史、生態学的な過程、自然美、生物多様性を示す人類共通の財産だからです。
一度広範囲に失われたサンゴ礁を、短期間で元の状態へ戻すことは困難です。
現在の価値を未来へ引き継ぐため、国際的な協力のもとで保全する必要があります。
まとめ
グレートバリアリーフは、オーストラリア北東部に広がる世界最大級のサンゴ礁地帯で、一九八一年に世界自然遺産へ登録されました。
優れた自然美、サンゴ礁形成の歴史、現在も進行する生態学的過程、豊かな生物多様性という、自然遺産の四つの評価基準をすべて満たしています。
その価値は、美しい観光風景だけにあるのではありません。
長い時間をかけて形成された地形、多様な生物のつながり、沿岸を守る働き、先住民が受け継いできた知識や文化など、さまざまな要素が重なっています。
一方、サンゴの白化、気候変動、海洋酸性化、水質悪化、オニヒトデの大量発生など、複数の問題に直面しています。
世界遺産という名称は、価値を認める称号であると同時に、その価値を損なわず次の世代へ渡す責任を示すものです。
グレートバリアリーフを知ることは、海の生態系と人間の暮らしがどのようにつながっているのかを考える第一歩になるでしょう。
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(KOBIT編集部:Fumi.T)
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