サン・フェルミン祭とは?牛追いの歴史・見どころ・衣装や記念品の文化的価値を解説
サン・フェルミン祭は、スペイン北部に位置するナバーラ州の州都パンプローナで、例年7月6日から14日まで開催される伝統的な祝祭です。
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日本では牛の群れと人々が市街地を走る「牛追い祭り」として知られていますが、牛追いは祭りを構成する行事の一つにすぎません。
期間中には、守護聖人をたたえる宗教行列、音楽隊の演奏、伝統舞踊、巨大人形のパレード、花火、闘牛などが行われます。
パンプローナの街全体が白と赤の装いに染まり、住民と観光客が一体となる総合的な祝祭です。
開幕は7月6日正午。
市庁舎のバルコニーから打ち上げられるロケット花火「チュピナソ」が合図です。
その後、7月14日深夜の閉幕行事まで、街では昼夜を通して多彩な催しが続きます。
祭名の由来となった聖フェルミン
サン・フェルミンとは、パンプローナと深い関係を持つキリスト教の聖人です。
聖フェルミンの生涯については伝承的な部分もありますが、ナバーラ地方では古くから殉教者として信仰されてきました。
現在の祭りは、聖フェルミンをたたえる宗教儀礼だけから成立したものではありません。
中世以来の商業市や牛の取引、闘牛を含む娯楽が次第に結び付き、長い年月を経て今日の形に発展しました。
宗教、商業、市民の娯楽が重なり合っている点に、サン・フェルミン祭の奥深さがあります。
世界的な祭りになった背景
サン・フェルミン祭の名を世界へ広めた人物として、アメリカの作家アーネスト・ヘミングウェイが挙げられます。
ヘミングウェイは1920年代にパンプローナを訪れ、祝祭や闘牛から強い印象を受けました。
その体験は、1926年に発表された小説『日はまた昇る』に反映されています。
作品を通して祭りを知った国外の読者がパンプローナを訪れるようになり、サン・フェルミン祭は国際的な観光行事へ成長しました。
文学が一つの地域文化に新しい意味を与え、世界的な知名度をもたらした代表例といえるでしょう。
一方、観光客が増えた現在も、祭りは地元住民にとって信仰や共同体の記憶を確かめる重要な機会です。
観光向けのイベントという側面だけでなく、地域の暮らしに根差した行事として理解する必要があります。
牛追い「エンシエロ」の仕組み
闘牛場まで牛を導く行事
サン・フェルミン祭を象徴する牛追いは、スペイン語で「エンシエロ」と呼ばれます。
祭り期間中の朝、牛の群れが旧市街の定められたコースを通り、闘牛場へ向かいます。
コースの距離は約850メートルです。
その起源は、闘牛に用いる牛を市外から闘牛場へ移動させる実用的な作業にあると考えられています。
牛を誘導する人々に市民が加わるようになり、やがて速さや勇気が試される祝祭行事へ変化しました。
短時間でも危険性は高い
走行そのものは通常数分で終わりますが、多数の参加者と牛が狭い通りを進むため、転倒や衝突が連鎖することがあります。
角による負傷や死亡事故も発生しており、気軽に参加できる娯楽ではありません。
参加には年齢をはじめとする条件があり、現地当局や運営者の規則に従う必要があります。
飲酒状態での参加、牛に触れようとする行為、危険物の持ち込みなどは禁止されています。
見物する場合も、指定された場所や安全上の案内を確認することが大切です。
動物福祉をめぐる議論
牛追いや、その後に行われる闘牛は、スペインの伝統文化として支持される一方、動物福祉の観点から批判も受けています。
歴史的に続いてきたという事実と、現代における倫理的な評価は分けて考える必要があります。
サン・フェルミン祭を知る際には、迫力ある映像だけで判断せず、伝統を守ろうとする立場と見直しを求める立場の双方が存在することを理解しておきましょう。
牛追い以外にもある祭りの見どころ
開幕を告げるチュピナソ
7月6日正午、市庁舎前広場に集まった人々が赤いスカーフを掲げるなか、ロケット花火が打ち上げられます。
この開幕行事がチュピナソです。
合図とともに参加者がスカーフを首に巻き、街は一気に祝祭の雰囲気に包まれます。
聖フェルミン像の行列
7月7日には、聖フェルミン像を伴う宗教行列が行われます。
聖職者、市民、音楽隊などが旧市街を進むこの行列は、祭りが本来持っている信仰上の意味を伝える行事です。
牛追いとは異なる、厳かで地域色の濃い光景を見ることができます。
巨大人形のパレード
祭りでは「ヒガンテス」と呼ばれる巨大人形も街を練り歩きます。
王や王妃などを表した人形は、精巧な顔立ちと華やかな衣装が特徴です。
大きな頭を持つ人形なども登場し、音楽に合わせて進むパレードは子どもたちにも親しまれています。
こうした人形の造形や衣装には、地域に伝わる工芸、祝祭美術、風刺的な表現が凝縮されています。
サン・フェルミン祭を視覚文化として楽しめる見どころです。
閉幕を告げるポブレ・デ・ミ
7月14日深夜になると、参加者は市庁舎前などに集まり、ろうそくを手に「ポブレ・デ・ミ」を歌います。
赤いスカーフを外し、祭りの終了を惜しむ光景は、熱狂的なチュピナソとは対照的です。
翌年の再会を願いながら、9日間にわたる祝祭を締めくくります。
白い服と赤いスカーフが象徴するもの
サン・フェルミン祭の代表的な装いは、白いシャツと白いズボンまたはスカートに、赤いスカーフと赤い腰帯を合わせたものです。
参加者の立場や国籍を越えて街を白と赤で統一し、祝祭に一体感を生み出します。
赤いスカーフはスペイン語で「パニュエロ」と呼ばれます。
一般に、開幕前は首に巻かず、チュピナソの後に着用します。
閉幕時にはスカーフを外すため、一枚の布が祭りの始まりと終わりを可視化しているともいえます。
赤色の由来については、殉教した聖フェルミンの血を象徴するという説明が知られています。
ただし、その成立過程には諸説があり、一つの説だけで断定するのは適切ではありません。
現在では信仰、地域の記憶、市民の連帯を表す色として定着しています。
ポスターや記念品が持つ文化的価値
公式ポスターは時代を映す資料
サン・フェルミン祭では、開催を告知するポスターが長年制作されてきました。
牛や走者、赤いスカーフ、パンプローナの街並みなどが描かれ、年代によって構図、書体、色彩、印刷技術が異なります。
古いポスターは単なる広告ではありません。
その時代の人々が祭りをどのように捉え、外部へ伝えようとしたのかを読み取れるグラフィック資料です。
観光史、広告史、印刷文化の観点からも意味を持ちます。
収集する際は、開催当時の公式印刷物なのか、後年に作られた復刻版や装飾用の複製品なのかを確認しましょう。
発行者の表記、紙質、寸法、印刷方法、裏面、折り跡などが判断材料になります。
古いから必ず希少とは限らず、来歴が明確であることも重要です。
スカーフやバッジも祭りを伝える品
関連品には、赤いスカーフや腰帯のほか、ピンバッジ、陶器、牛やヒガンテスの置物、絵はがき、チケット、プログラム冊子などがあります。
大量生産された土産物であっても、図柄や製造地、入手した年代が分かれば、祭りの変化を示す資料になります。
特に、実際に着用したスカーフと当時の写真、旅行日程、購入店の記録などが一緒に残っている場合、その品には個人の思い出と地域文化の両方が刻まれています。
換金価値だけでは測れない魅力です。
ヘミングウェイ関連資料
『日はまた昇る』の古い版、パンプローナを紹介した旅行案内、ホテルや飲食店の印刷物も、文学と祭りの関係を考える資料になります。
ただし、ヘミングウェイの名前が記されているだけで本人と直接関係するとは限りません。
発行年、発行元、署名や書き込みの由来を丁寧に確認することが大切です。
衣装や記念品を長く残す手入れの方法
布製品は色移りと湿気を防ぐ
赤いスカーフや腰帯には、汗、飲料、雨、路上の汚れなどが付着しやすくなります。
まず素材と洗濯表示を確かめ、色落ちの可能性がある場合は白い衣類と分けて手入れしてください。
洗浄後は十分に乾燥させ、直射日光と高温多湿を避けて保管します。
思い出の染みや署名を残したい品は、無理に家庭で洗わず、布製品に対応できる保存修復の専門家へ相談する方法もあります。
防虫剤を使う場合は、薬剤が布に直接触れないよう注意しましょう。
紙資料は光と酸を避ける
ポスター、冊子、チケット、絵はがきは、紫外線による退色と湿気によるカビに弱い品です。
中性紙の封筒や台紙、保存に適した透明袋を使い、温湿度の変化が少ない場所で保管します。
粘着テープやのりを直接使うと、変色や破損の原因になります。
額装して飾る場合は、原本ではなく複製を日常展示に使うことも有効です。
原本を飾るなら、紫外線を抑える額材や作品に接触しない固定方法を検討してください。
不要になった関連品を捨てずに生かすには
サン・フェルミン祭の関連品を手放す際は、すぐに廃棄せず、必要とする人や組織へつなぐ方法を考えてみましょう。
状態の良い衣装や土産物は、リユース店、フリーマーケット、収集家への譲渡などで再利用できます。
国際交流イベントやスペイン文化を紹介する催しの展示品として活用できる可能性もあります。
古い公式ポスター、地域で配布された冊子、過去の写真などは、図書館、博物館、大学の研究機関にとって資料となる場合があります。
希少性が分からない品は、折ったり切ったりせず、現状のまま専門家へ相談するとよいでしょう。
譲渡するときは、入手した年、場所、所有者、祭りに参加した際のエピソードを簡潔に記録して添えるのがおすすめです。
品物の来歴が次の持ち主へ伝わり、文化的な意味が失われにくくなります。
現地で楽しむ際の注意点
開催期間中のパンプローナには世界各地から多くの人が訪れるため、宿泊施設や交通機関は混雑します。
訪問する場合は早めに計画し、交通規制や観覧場所、手荷物の管理方法を確認しましょう。
宗教行列を妨げない、立入禁止区域へ入らない、路上にごみを残さないなど、地域の慣習と生活環境への配慮も欠かせません。
白と赤の衣装を身に着けるだけでなく、住民が大切にしてきた祭りへの敬意を行動で示すことが求められます。
行事の日程、エンシエロの参加条件、安全規則などは変更される可能性があります。
旅行前には、パンプローナ市や公式観光案内が発信する最新情報を確認してください。
サン・フェルミン祭の価値を次世代へ
サン・フェルミン祭は、牛追いの迫力だけで説明できる行事ではありません。
聖人への信仰、街の歴史、文学との関係、白と赤の衣装、巨大人形、音楽、ポスターなど、多様な文化が重なり合っています。
祭りで使われたスカーフや一枚のチケットも、背景を知れば、その時代と参加者の記憶を伝える品になります。
適切に手入れし、入手時の情報とともに保管・譲渡することは、モノを再利用するだけでなく、祝祭文化の記憶を次世代へ受け継ぐことにもつながるでしょう。
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(KOBIT編集部:Fumi.T)
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