ネイチャーポジティブとは?意味や企業・個人の取り組み、リユースとの関係を解説
ネイチャーポジティブは、自然の損失を抑えるだけでなく、自然を回復軌道へ転じさせることを目指す考え方です。
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気候変動への対応と並び、生物多様性や森林、海洋、河川、土壌などを守るための重要な目標として注目されています。
一見すると、自然保護区や野生動物に関する話のように思えるかもしれません。
しかし、家具に使われる木材、衣類の繊維、スマートフォンに含まれる金属など、私たちが使うモノの多くは自然から得られた資源でできています。
そのため、モノをどのように作り、使い、次の人へつなぐかも、自然の状態と無関係ではありません。
この記事では、ネイチャーポジティブの意味や注目される背景、企業・個人にできることを解説します。
さらに、買取や中古品の購入、修理といったリユースが自然の回復にどう関係するのか、注意点を含めて考えていきます。
ネイチャーポジティブとは
ネイチャーポジティブとは、生物多様性をはじめとする自然の損失を止め、その状態を回復へ向かわせる考え方です。
日本語では、自然再興などと表現されます。
単に自然への悪影響を少なくするだけでなく、すでに劣化した森林や湿地、生態系などを再生し、自然が豊かになる方向へ社会と経済を転換することに重点があります。
自然への負荷を減らすだけではない
環境対策というと、廃棄物や二酸化炭素の排出量を減らす活動がイメージされがちです。
もちろん、負荷を減らすことは欠かせません。
しかし、自然環境が失われ続けている状況では、悪化の速度を緩めるだけでなく、損失そのものを止めて回復へ転じさせる必要があります。
たとえば、森林伐採の面積を減らしても、伐採が続けば森林は少しずつ失われます。
重要なのは、まず伐採や開発による影響をできる限り回避し、避けられない影響を軽減したうえで、森林や生息地を再生することです。
こうした考え方が、ネイチャーポジティブの基礎にあります。
ネイチャーが意味するもの
ここでいう自然には、動物や植物だけでなく、森林、海洋、河川、湖沼、湿地、土壌、大気などが含まれます。
それぞれの場所で生きる微生物や、生物同士のつながりも重要な要素です。
自然は、食料や木材を供給するだけではありません。
植物による受粉、水の浄化、洪水の緩和、土壌の形成、気候の調整など、暮らしを支える多様な機能を持っています。
こうした自然から得られる恵みを将来にわたって維持することも、ネイチャーポジティブを考える目的の一つです。
2030年が重要な節目とされる理由
2022年に開かれた生物多様性条約第15回締約国会議では、昆明・モントリオール生物多様性枠組が採択されました。
そこでは、2030年までに生物多様性の損失を止め、反転させ、回復軌道に乗せるという方向性が示されています。
陸域と海域の少なくとも30%を2030年までに保全する、いわゆる30by30も、この枠組みに含まれる目標の一つです。
ただし、一定の面積を保護するだけで、あらゆる課題が解決するわけではありません。
地域固有の生態系や生息地同士のつながり、保全管理の質も大切です。
なお、ネイチャーポジティブという言葉の具体的な定義や測定方法については、国際的な議論が続いています。
そのため、自然に良い活動を表す曖昧な宣伝文句としてではなく、対象範囲や根拠を確認しながら理解する必要があります。
ネイチャーポジティブが必要とされる背景
私たちの暮らしや経済活動は、自然資本に支えられています。
一方、資源の採取、土地の開発、汚染などによって自然を劣化させてもいます。
この依存と影響の両方を認識することが、ネイチャーポジティブへの第一歩です。
生物多様性の損失が暮らしにも影響する
生物多様性とは、さまざまな生態系が存在すること、多様な種が生きていること、同じ種の中にも遺伝的な違いがあることを表す概念です。
多様な生物が互いに関わることで、生態系のバランスや機能が保たれています。
生物多様性を脅かす要因には、開発による土地や海の利用変化、生物資源の過剰な採取、気候変動、化学物質や廃棄物による汚染、外来種などがあります。
その影響は野生生物だけにとどまりません。
農業や漁業の生産、飲料水の確保、災害への強さなどにも関係します。
モノの生産も自然資源に依存している
身の回りにある製品をたどると、その多くが自然とつながっています。
木製家具には森林から得られる木材、綿製品には農地で栽培される綿花が使われます。
スマートフォンやパソコンには、銅、鉄、アルミニウム、金などの金属や鉱物が含まれています。
原材料を得るための農地拡大、森林伐採、採掘などは、方法や場所によって生物の生息地に影響を与えます。
製造段階でも水やエネルギーが使われ、排水や廃棄物が発生します。
完成した製品の姿だけを見ていると分かりにくいものの、一つのモノには多くの資源と工程が積み重なっているのです。
カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーとの違い
ネイチャーポジティブとともに使われる環境用語には、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーがあります。
これらは相反するものではありませんが、重視する対象が異なります。
カーボンニュートラルとの違い
カーボンニュートラルは、温室効果ガスの排出量から吸収・除去量を差し引き、全体として実質ゼロにすることを目指す考え方です。
主な焦点は気候変動にあります。
一方、ネイチャーポジティブが対象とするのは、生物種、生息地、水、森林、海洋、土壌などを含む自然全体です。
温室効果ガスの削減に役立つ活動でも、地域の生態系に悪影響を及ぼす可能性があれば、それだけでネイチャーポジティブとはいえません。
たとえば、炭素吸収だけを重視して地域に合わない単一樹種を広範囲に植えると、在来種や地域固有の生態系に望ましくない影響が生じる場合があります。
気候と自然の両方を考慮した取り組みが求められます。
サーキュラーエコノミーとの関係
サーキュラーエコノミーは、製品や素材をできる限り循環させ、廃棄物や汚染を設計段階から減らす経済のあり方です。
日本語では循環経済と呼ばれます。
製品を長寿命化する、修理しやすくする、繰り返し使う、部品を再利用する、最後に素材として再資源化するといった方法が含まれます。
新しい資源への需要や廃棄物を減らせれば、自然にかかる圧力の軽減につながる可能性があります。
この意味で、サーキュラーエコノミーはネイチャーポジティブを支える重要な手段の一つです。
リユースがネイチャーポジティブにつながる理由
リユースとは、まだ使える製品や部品を捨てずに、同じ用途または別の用途で再使用することです。
中古品の売買だけでなく、修理、譲渡、レンタル、シェアなども、モノの使用期間を延ばす方法になります。
製品の寿命を延ばせる
モノを長く使う意義は、廃棄物を減らせることだけではありません。
一つの製品を作るために投入された素材、エネルギー、設計、職人の技術を、より長く活かすことができます。
たとえば、無垢材の家具は、傷や塗装の劣化があっても、研磨や再塗装によって使い続けられる場合があります。
腕時計も、部品交換やオーバーホールによって機能を維持できるものがあります。
衣類やバッグも、ほつれの補修、ファスナーの交換、革の手入れなどによって寿命を延ばせます。
古くなったことと、価値がなくなったことは同じではありません。
手入れや修理が可能なモノには、次の所有者のもとで役割を果たす余地があります。
新たな資源採取への圧力を抑えられる可能性がある
中古品の利用によって新品の購入が実際に置き換えられれば、新たな生産や原材料への需要を抑えられる可能性があります。
木材、繊維、金属、鉱物などの採取に伴う自然への負荷を考えるうえで、既存製品を活用することには意味があります。
ただし、中古品を購入したからといって、必ず新品の生産が一つ減るとは限りません。
輸送、清掃、修理、保管にもエネルギーや資材が必要です。
リユースの効果は、製品の種類、使用期間、流通方法などを含めて考える必要があります。
モノに蓄積された価値を受け継げる
モノの価値は、換金できる金額だけでは測れません。
素材の質、耐久性、修理しやすい構造、作り手の技術、意匠、歴史的背景なども価値の一部です。
使い込むことで生まれた風合いや、以前の持ち主が大切にしてきた物語に魅力を感じる人もいます。
ジュエリーなら、地金や宝石としての価値に加えて、デザインや加工技術があります。
陶磁器なら、産地や窯元、絵付け、釉薬の表情にも固有の価値があります。
リユースは、こうした価値を廃棄せず、次の人へ渡す仕組みでもあります。
リサイクルより先にリユースを検討する
リサイクルは、使用済み製品を素材へ戻して利用する重要な方法です。
しかし、回収した製品を分解、選別、洗浄、溶解、再加工する過程では、エネルギーや費用が必要になります。
複数の素材が組み合わされた製品は、分離が難しい場合もあります。
そのため、まだ製品として使えるなら、まず再使用や修理を検討することが有効です。
再使用が難しくなった段階で部品を取り出し、最後に素材として再資源化するという順序を意識すると、モノの価値を段階的に活かせます。
リユースしやすいモノと長く活かすコツ
製品を次の人へつなげるには、状態を適切に保ち、手放す時期を逃さないことが大切です。
使わないまま長期間保管すると、湿気や電池の液漏れ、素材の加水分解などによって劣化することがあります。
家具・食器・生活用品
木製家具は直射日光や過度な湿気を避け、素材に合った方法で手入れします。
ぐらつきや引き出しの不具合も、構造によっては修理できます。
安易に塗装したり接着剤を使ったりすると、かえって修復しにくくなる場合があるため、価値のある家具は専門家へ相談するのも一案です。
陶磁器、ガラス器、カトラリーなどは、割れや欠けを防いで保管します。
箱、しおり、セットの付属品も、その品物の由来や取り扱い方法を伝える要素になるため、可能であれば一緒に保管しましょう。
衣類・バッグ・腕時計
衣類は汚れを残したまま保管すると、変色や虫害の原因になります。
洗濯表示に従って清潔にし、湿気を避けて保管することが基本です。
ボタンや共布などの付属品も、補修時に役立ちます。
革製品は素材に合ったケアを行い、形崩れやカビを防ぎます。
腕時計は無理に自分で開けず、必要に応じて専門店で電池交換や点検を受けます。
修理履歴や保証書があれば、次の利用者が状態を判断しやすくなります。
スマートフォン・パソコン・家電
電子機器には多様な金属や樹脂が使われています。
動作するうちに次の利用先へつなげれば、製品として活かせる可能性が高まります。
手放す際は、データをバックアップしたうえで端末を初期化し、アカウントとの連携や端末を探す機能を解除します。
バッテリーが膨張している機器や破損した機器は、安全上の理由から通常の中古流通に適さない場合があります。
自治体、メーカー、認定された回収事業者などの案内に従いましょう。
貴金属・ジュエリー
金やプラチナなどの貴金属は、溶解して再び材料として利用しやすい性質を持っています。
ただし、ジュエリーの価値は素材の重さだけではありません。
ブランド、デザイン、宝石、加工技術、製作年代などによっては、製品のまま受け継ぐほうが価値を活かせる場合があります。
サイズが合わない指輪や切れたネックレスも、修理やリフォームによって再び使えることがあります。
売却、修理、作り替え、素材としての再利用を比較し、その品物に合う方法を選ぶことが大切です。
企業に求められる取り組み
企業がネイチャーポジティブへ貢献するには、寄付や植樹といった個別活動だけでなく、本業と自然の関係を見直す必要があります。
自然への依存と影響を把握する
企業活動は、水、土地、木材、繊維、鉱物などの自然資源に依存しています。
同時に、調達、生産、輸送、販売、廃棄を通じて自然に影響を与えています。
まず必要なのは、どの事業や地域で自然への依存と影響が大きいのかを把握することです。
自社の工場や店舗だけでなく、原材料の生産地や委託先など、サプライチェーン全体を見ることも求められます。
長く使える製品と循環の仕組みをつくる
製品の耐久性を高める、分解しやすく設計する、交換部品を提供する、修理方法を公開するといった取り組みは、製品寿命を延ばします。
使用済み製品の回収、再販売、再製造などの仕組みも有効です。
販売数量だけを増やすのではなく、修理やメンテナンスも事業として提供できれば、モノの価値を維持しながら利用者との関係を長く保つことができます。
根拠のある目標と情報開示を行う
自然関連財務情報開示タスクフォースであるTNFDなど、企業が自然への依存、影響、リスク、機会を把握し、開示するための枠組みも整備されています。
企業がネイチャーポジティブを掲げる場合は、何を対象とし、いつまでに、どの基準と方法で改善するのかを示すことが重要です。
一部の寄付や回収活動だけを取り上げ、製品や企業全体が自然に良いと見せる表現は、グリーンウォッシュと受け取られるおそれがあります。
個人が日常生活でできること
個人がネイチャーポジティブに関わる方法は、環境配慮型の商品へ一斉に買い替えることだけではありません。
すでに持っているモノを大切に使うことも、有効な選択肢です。
購入前に長く使えるかを考える
モノを選ぶときは、価格や流行だけでなく、耐久性、修理のしやすさ、交換部品の有無、手入れ方法を確認します。
使用頻度が低い道具なら、購入せずにレンタルやシェアを利用する方法もあります。
中古品を選ぶ場合も、必要性を考えることが大切です。
安いからという理由で使わないモノを増やせば、リユース品であっても保管や再廃棄の負担が生じます。
手入れと修理を習慣にする
説明書や洗濯表示を確認し、素材や製品に合った手入れを行うと、故障や劣化を防ぎやすくなります。
壊れたときも、すぐに廃棄する前に修理費用、修理後に使える期間、安全性を確認しましょう。
古い家電については、修理して使い続けるより、省エネルギー性能の高い製品へ切り替えたほうが、使用段階の負荷を抑えられる場合があります。
すべてを一律に長く使うのではなく、製品ごとの特性を踏まえた判断が必要です。
使わないモノを適切な相手へつなぐ
不要品は、買取店、専門店、寄付団体、地域の譲渡サービス、メーカー回収などを利用して手放せます。
品物の種類、状態、需要に合った相手を選ぶと、再使用される可能性が高まります。
売却価格が付かないモノでも、価値がまったくないとは限りません。
一方で、壊れた製品や衛生上の問題がある品物を無理に流通させることは適切ではありません。
再使用できない場合は、自治体やメーカーのルールに従って、安全に回収・再資源化することが大切です。
ネイチャーポジティブを考えるときの注意点
リユースや植樹を行えば、直ちにネイチャーポジティブが実現するわけではありません。
取り組みがどこに、どの程度の効果をもたらすのかを確かめる必要があります。
特に自然は地域ごとの違いが大きく、ある場所で自然を損なったからといって、別の場所に木を植えれば同じ状態に戻るとは限りません。
長い時間をかけて形成された生態系や、地域固有の生物のつながりは、簡単に代替できないためです。
商品や企業の環境表示を見るときは、対象となる活動、基準年、目標年、測定方法、第三者による確認の有無などを確認しましょう。
自然にやさしいという印象だけでなく、負荷を回避し、軽減し、回復させる具体的な行動が伴っているかを見ることが重要です。
モノを長く活かすことから自然との関係を見直そう
ネイチャーポジティブは、失われつつある自然を回復へ転じさせるための考え方です。
企業による原材料調達や土地利用だけでなく、私たちが日々どのようにモノを選び、使い、手放すかとも関係しています。
今あるモノを手入れする、壊れたら修理を検討する、必要なときは中古品を選ぶ、使わないモノを早めに次の人へつなぐ。
こうした行動は、モノに使われた素材や技術を長く活かし、新たな資源採取への圧力を抑える可能性を持っています。
リユースは万能な解決策ではありませんが、大量生産・大量廃棄から脱却するための身近な方法です。
モノを価格だけで評価せず、素材、機能、技術、歴史を含む価値に目を向けることが、自然と共生する暮らしを考えるきっかけになります。
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