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ペルシャ絨毯とは?産地・織り方・文様・素材から読み解く歴史と価値

ペルシャ絨毯とは

ペルシャ絨毯とは、現在のイランにあたる地域で受け継がれてきた伝統的な手織り絨毯です。

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ペルシャはイランの旧称であり、長い歴史の中で都市の工房、農村、遊牧民の集団などが、それぞれの環境に根差した絨毯を作ってきました。

最大の特徴は、経糸と緯糸で作る基礎にパイル糸を一つずつ結び付け、表面に毛足と文様を生み出すことです。

素材を用意し、糸を染め、図案に沿って結び、洗浄や毛足の刈り込みを施すまで、多くの手間と時間が費やされます。

そのためペルシャ絨毯は、床を彩るインテリアであると同時に、織り手の技術や地域の文化を伝える工芸品でもあります。

ただし、市場にはペルシャ風の模様を採用した機械織り品や、イラン以外で作られた絨毯もあります。

見た目が似ていても、イランで手織りされたペルシャ絨毯とは生産地や構造が異なります。

ペルシャ絨毯という名称を理解する際は、模様だけでなく、産地、製法、素材を併せて見ることが大切です。

ギャッベやキリムとの違い

ギャッベは、イラン南西部の遊牧民などによって織られてきた、厚みのある素朴なパイル絨毯です。

広い意味ではペルシャ絨毯の文化に含まれますが、太めの羊毛、抽象化された動植物、伸びやかな幾何学模様などに独自の魅力があります。

キリムは、基本的に表面の毛足を持たない平織りの織物です。

薄くて比較的軽く、敷物のほか、袋や間仕切りなどにも使われてきました。

パイルを持つ一般的なペルシャ絨毯とは構造も手触りも異なります。

ペルシャ絨毯の歴史

イラン周辺では古くから織物文化が発達しました。

絨毯は住まいの床に敷くものだけでなく、寒さや地面の湿気を和らげる生活道具としても重要でした。

持ち運びのできる織物は、移動を伴う遊牧生活とも深く結び付いています。

ペルシャ絨毯の芸術性が大きく発展した時期として、一般にサファヴィー朝の時代が挙げられます。

宮廷の保護を受けた工房では、複雑な花文様や庭園文様、均整の取れたメダリオンなどが設計され、高度な製織技術によって表現されました。

絨毯は実用品でありながら、王侯貴族の空間を飾る美術工芸品としても発展したのです。

その後、交易を通じてペルシャ絨毯は欧州をはじめとする各地へ渡りました。

絵画の中に描かれたり、宮殿や邸宅に収められたりしたことで、国際的にも美術的価値が認識されていきます。

現在も古い作品が美術館で保存される一方、日常生活で使い続けられている絨毯も少なくありません。

手織り絨毯の構造と作り方

経糸、緯糸、パイルの役割

絨毯の縦方向に張られる糸が経糸、横方向に通される糸が緯糸です。

この二つが絨毯の基礎を形成します。

表面の毛足になるパイル糸は経糸に結ばれ、結び目の列を固定するように緯糸が打ち込まれます。

織り手は結び目を一つずつ作りながら、少しずつ文様を立ち上げます。

大きさ、糸の細さ、織りの密度、図案の複雑さによっては、完成までに数年を要することもあります。

完成後には余分な毛足を切りそろえ、洗浄や乾燥を経て、文様と艶を整えます。

ペルシャ結びとトルコ結び

代表的な結び方には、左右非対称のペルシャ結びと、左右対称のトルコ結びがあります。

ペルシャ結びは細かな曲線を表現しやすいとされ、都市工房の緻密な作品にも多く見られます。

一方、イラン国内でも地域によってはトルコ結びが用いられます。

結び方は産地や制作文化を考える手掛かりになりますが、それだけで産地や品質を断定することはできません。

素材、裏面の構造、文様、色彩などを総合して捉える必要があります。

手仕事に現れる個体差

手織り品には、文様のわずかな左右差や線の揺らぎが見られることがあります。

それは機械織りにはない手仕事の痕跡であり、織り手が図案を解釈した結果でもあります。

ただし、大きな歪みや波打ち、構造を損なう織りの乱れは、使用に影響する場合があります。

不均一であれば必ず優れた手織り品というわけではなく、個性と不具合を分けて見ることが重要です。

ペルシャ絨毯に使われる素材

ウール

ウールは、ペルシャ絨毯を代表する素材です。

羊毛には弾力性と保温性があり、人が歩く場所に敷く絨毯にも適しています。

良質なウールは、しなやかさと耐久性を併せ持ち、使い込むことで落ち着いた艶を見せることがあります。

同じウールでも、羊の品種、採毛した部位、糸の撚り方、染色や仕上げによって感触は異なります。

表面が柔らかいことだけが品質の基準ではなく、用途に合った弾力や織りとの調和も大切です。

シルク

シルクは細く滑らかな糸で、緻密な文様を表すのに向いています。

見る方向や光の当たり方によって艶と色合いが変化するため、鑑賞用の細密な作品にも用いられます。

一方で、ウールに比べて摩擦や湿気への配慮が必要です。

シルク製だから一律に価値が高いのではなく、絹糸の質、織り、意匠、状態を含めた判断が求められます。

パイルだけに絹を使ったもの、文様の一部に絹を織り込んだもの、経糸まで絹で構成したものでは性質も異なります。

コットン

コットンは、主に経糸や緯糸などの基礎部分に使われます。

寸法を安定させやすく、細かな図案を織るための土台に適しているからです。

表面がウールでも、基礎はコットンという構成が多く見られます。

素材を確認するときは、毛足だけでなく裏面や房にも目を向ける必要があります。

色彩を支える染料とアブラッシュ

伝統的な染色では、茜から赤、藍から青、ザクロの皮などから黄系統の色を得てきました。

植物のほか、昆虫などに由来する染料が使われることもあります。

天然染料の色は年月とともに穏やかに変化し、古い絨毯に奥行きのある表情を与える場合があります。

近代以降は化学染料も普及しました。

化学染料にも安定した発色や色の再現性といった利点があり、その使用だけを理由に作品の質を決めることはできません。

染料の種類だけでなく、染め方、配色、保存状態を含めて見ることが必要です。

手織り絨毯では、同じ色の部分に帯状の濃淡が現れることがあります。

これはアブラッシュと呼ばれ、染めた時期の異なる糸を使ったことや、羊毛の性質の違いなどによって生じます。

極端な色むらとは区別する必要がありますが、制作の時間や手仕事の背景を感じさせる特徴の一つです。

文様に込められた文化と美意識

メダリオン文様

絨毯の中央に大きな円形や多角形の意匠を配する形式です。

周囲に四隅の装飾や花、蔓草を組み合わせ、全体を左右対称に整えた作品も多くあります。

建築の天井装飾や庭園の構成を思わせる、ペルシャ絨毯を象徴するデザインです。

生命の樹と庭園文様

地面から伸びる樹木を描く生命の樹は、成長や永続する命を想起させます。

庭園文様では、水路や花壇を区画状に配置し、花木、鳥、動物などを織り込むことがあります。

乾燥した土地における水と緑への憧れや、理想の楽園を表したものとしても鑑賞されています。

ボテ、花、動物のモチーフ

先端が曲がった木の葉や種子のようなボテは、広い地域で使われてきた代表的な意匠です。

このほか、蓮、唐草、鳥、鹿なども登場します。

文様には幸福、繁栄、生命などの意味が重ねられる場合がありますが、意味は時代や地域によって変わります。

一つの解釈だけに限定せず、構図や色との組み合わせを楽しむことが大切です。

幾何学文様

遊牧民や村落で作られる絨毯には、菱形、星形、鉤形などを組み合わせた力強い幾何学文様が見られます。

都市工房の作品が精密な図案に基づいて織られることが多いのに対し、織り手が受け継いだ記憶をもとに、即興性を交えながら作られるものもあります。

その揺らぎには、作り手の生活や感性が表れています。

代表的な産地と作風

タブリーズ

イラン北西部を代表する産地です。

古くから交易と工芸が盛んで、メダリオン、花文様、人物、風景など幅広い図案が作られてきました。

細密で写実的な作品もあれば、力強い構成の作品もあり、タブリーズという名称だけで特徴を一つに絞ることはできません。

イスファハン

歴史的建築と工芸文化で知られる都市です。

絨毯には繊細な曲線、均整の取れたメダリオン、細やかな花文様などが見られます。

配色や余白まで計算された、端正な構成が魅力です。

クム

比較的新しい絨毯産地ですが、シルクを用いた細密な作品で広く知られています。

小さな面積に多彩な色と複雑な図案を織り込んだ作品もあります。

ただし、クム産であればすべてシルク製というわけではないため、素材の確認が必要です。

ナイン

アイボリーやベージュを基調に、青や淡い赤などを組み合わせた上品な作風で知られます。

中央のメダリオンから花や蔓草が広がる、整然とした構図が多く見られます。

カシャーンとケルマン

カシャーンは、深い赤や青を用いたメダリオン、草花文様などで知られる伝統産地です。

ケルマンでは、流麗な花文様、壺、庭園、人物などを取り入れた意匠が作られてきました。

いずれも制作年代や工房によって作風は多様です。

ヘリーズと部族系絨毯

ヘリーズの絨毯には、太い輪郭線と幾何学的なメダリオンを組み合わせた力強い作品が多く、丈夫なウール製品も見られます。

また、カシュガイなどの部族系絨毯には、動植物や幾何学模様を自由に配置した作品があります。

都市工房の精密さとは異なる、生活文化に根差した造形が魅力です。

ペルシャ絨毯の価値を決める要素

ペルシャ絨毯の価値は、一つの基準だけで決まりません。

産地、素材、織り、意匠、年代、保存状態、希少性、工房や織り手の来歴などを総合して考えます。

織りの密度と完成度

裏面を見ると、結び目の細かさや並び方を確認できます。

織りの密度が高いほど曲線や細部を表現しやすくなりますが、結び目が多ければ必ず優れた作品とは限りません。

大胆な幾何学文様では、適度に太い糸が力強い魅力につながることもあります。

図案、素材、用途にふさわしい織りであるかが重要です。

デザインと色彩

文様の配置、配色、輪郭の美しさ、全体の均衡などは、数値化しにくい価値です。

細密さだけでなく、離れて見たときの存在感や、室内で光を受けたときの表情も鑑賞のポイントになります。

年代と保存状態

古い絨毯には、現在では使われにくい素材や染色、地域固有の文様が残っていることがあります。

しかし、古いというだけで高く評価されるわけではありません。

摩耗、虫食い、裂け、染み、退色、房や縁の欠損などを確認し、工芸品としての魅力がどの程度保たれているかを見る必要があります。

適切な修復は絨毯の寿命を延ばします。

修復歴があること自体を一律に欠点とせず、元の素材や構造に配慮した方法で直されているかを確認することが大切です。

手織りかどうかを確認する基本的な見方

手織り絨毯を確認するときは裏面を見ます。

表側の文様が裏にも対応して現れ、結び目や経糸の構造を観察できることが一つの手掛かりです。

また、端の房が経糸の延長になっているかも確認点になります。

機械織り品では、房が完成後に縫い付けられている場合があります。

もっとも、裏面の模様や房だけでペルシャ絨毯と断定することはできません。

他国にも優れた手織り絨毯があり、古い品では房が修復されていることもあります。

ラベルや証明書も参考になりますが、それだけに頼らず、構造、素材、文様、来歴を合わせて確認するのが基本です。

長く使うための手入れと保管

日常の掃除では、毛並みに沿って弱い力でほこりを取り除きます。

強い回転ブラシや過度な吸引は、パイルや房を傷めることがあります。

特にシルク製品や摩耗した古い絨毯は慎重に扱いましょう。

同じ場所だけが摩耗しないよう、ときどき敷く向きを変えることも有効です。

重い家具の脚には保護材を使い、荷重を分散させます。

長時間の直射日光は退色の原因になり、過度な湿気はカビや臭いにつながるため、遮光と換気にも配慮します。

液体をこぼした場合は、こすらず、清潔な白い布などで水分を吸い取ります。

家庭用洗剤や漂白剤を安易に使うと、色移り、変色、縮みを招く可能性があります。

広い範囲の汚れ、古い染み、シルク製品は、絨毯に詳しい専門業者へ相談する方が安全です。

保管するときは、汚れと湿気を取り除き、折り畳むよりも芯に沿って巻く方法が適しています。

折り目には構造的な負担がかかるためです。

通気性のない素材で長期間密閉したり、防虫剤を絨毯へ直接触れさせたりすることも避けましょう。

古いペルシャ絨毯を次世代へつなぐには

使わなくなった絨毯がある場合も、すぐに処分するのではなく、まず来歴を確認しましょう。

購入店、購入時期、産地、素材、工房名などが分かる書類は、絨毯の背景を知る資料になります。

家族から受け継いだ品であれば、どこで入手し、どのように使われてきたかという記憶も大切な情報です。

自己流で洗浄したり、接着剤や粘着テープで補修したりすると、繊維や染料を傷めるおそれがあります。

状態に不安がある場合は、現状のまま専門知識を持つ人に見てもらうのが安心です。

ペルシャ絨毯の行き先は売却だけではありません。

別の部屋で使う、壁に掛けて鑑賞する、必要な修復を施して家族へ受け継ぐ、資料的価値があるものを適切な施設へ相談するといった方法も考えられます。

ペルシャ絨毯の本質的な価値は、価格や結び目の数だけでは測れません。

羊毛や絹を用意する人、糸を染める人、図案を作る人、長い時間をかけて織る人の仕事が重なり、一枚の絨毯が完成します。

産地の歴史や文様の意味、素材の特徴を知り、適切に手入れして使うことが、手仕事の文化を次の世代へつなぐことになります。

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KOBIT編集部:Fumi.T)

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