外来種問題とは?生態系や暮らしへの影響と私たちにできる対策
外来種問題とは、人間の活動によって本来の分布域ではない地域へ移動した生物が、その土地の生態系や農林水産業、人の生命・身体、生活環境などに影響を及ぼす問題です。
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アライグマやオオクチバスといった動物がよく知られていますが、昆虫、植物、水草、甲殻類、菌類なども外来種になり得ます。
ここで大切なのは、外来種そのものを一律に悪者とみなさないことです。
生物が自ら海を越えて侵入したとは限らず、ペット、園芸、食用、釣り、物流など、人間の都合によって運ばれた例が少なくありません。
問題の中心にあるのは、生物の性質だけでなく、それを別の地域へ運び、自然の中へ放ち、分布を広げてしまう人間の活動です。
本記事では、外来種の意味や問題が起こる仕組み、社会や自然環境への影響、関連する法律、私たちが実践できる対策をわかりやすく解説します。
外来種の意味
人間によって本来いなかった地域へ運ばれた生物
外来種とは、一般に、人間の活動を介して本来の分布域ではない地域へ持ち込まれた生物を指します。
海外から日本へ入った生物だけを意味するわけではありません。
日本国内であっても、本来生息していなかった島、河川、湖沼などへ別地域の生物が運ばれれば、国内由来の外来種として問題になることがあります。
例えば、ある魚が日本の一部地域に昔から生息していたとしても、その魚が自然には移動できない別の水系へ放されれば、そこに暮らす生物へ影響を与える可能性があります。
日本産だからどこへ移してもよい、という考え方は適切ではありません。
一方、渡り鳥や海流に乗った生物のように、人の手を介さず自然に分布を広げたものは、通常は外来種と区別して考えられます。
外来種と特定外来生物は同じではない
外来種と特定外来生物は同じ意味ではありません。
外来種は、人間によって本来の分布域外へ持ち込まれた生物を広く表す言葉です。
これに対して特定外来生物は、海外起源の外来生物のうち、生態系、人の生命・身体、農林水産業に被害を及ぼす、または及ぼすおそれがあるものとして、外来生物法に基づき指定された生物です。
したがって、外来種のすべてが法律上の特定外来生物に該当するわけではありません。
また、特定外来生物に指定された種類には、飼養、栽培、保管、運搬、輸入、譲渡、放出などに規制がありますが、種類や行為によって具体的な扱いが異なる場合があります。
飼っている生き物が規制対象か分からない場合は、自己判断で移動や譲渡をせず、環境省や自治体が公開する最新情報を確認することが重要です。
すべての外来種が深刻な被害を出すわけではない
外来種の中には、持ち込まれた地域で繁殖できず、定着しないものもあります。
また、定着していても、直ちに大きな被害を発生させるとは限りません。
特に大きな影響を与える外来種は、侵略的外来種と呼ばれることがあります。
影響の程度は、繁殖力、食性、気候への適応力、天敵の有無、在来種との競合関係などによって変わります。
外来種という理由だけで身近な生物を捕獲・駆除するのではなく、種類と影響を正しく見極めなければなりません。
外来種はどのように持ち込まれるのか
ペットや観賞用として持ち込まれる
カメ、魚、昆虫、爬虫類などのペットや、庭に植える園芸植物、水槽で育てる水草は、人が利用する目的で意図的に持ち込まれます。
管理された環境から出なければ、野外の生態系への影響は抑えられます。
しかし、逃亡、遺棄、種子の飛散などによって自然環境へ入り、繁殖することがあります。
小さな幼体のときは飼いやすく見えても、大きく成長したり、長期間生きたりする生物もいます。
飼育スペースや費用を確保できなくなったことを理由に野外へ放すと、問題を自然環境と地域社会へ移すことになります。
食用や産業利用のために導入される
食用、養殖、毛皮、農業、緑化などの目的で導入された生物が、施設の外へ逃げて定着する場合もあります。
導入時には有用な資源であっても、管理できる範囲を越えて増えれば、農作物や在来生物へ影響を与える可能性があります。
外来種問題は、役に立つか、役に立たないかという二者択一では判断できません。
利用価値のある生物でも、逃亡や拡散を防ぐ管理が欠かせないのです。
輸入品や貨物に紛れ込む
人が意図していなくても、昆虫、クモ、貝、植物の種子などが、コンテナ、木材、梱包材、農産物、土、船舶、車両に付着して運ばれることがあります。
目に見えにくい卵や幼虫が、中古家具、機械、植木鉢などに紛れている可能性も否定できません。
輸入品や長期間保管されていた品物を開封した際に見慣れない生物を発見したら、屋外へ逃がさないことが大切です。
毒や攻撃性が分からない生物には触れず、必要に応じて自治体などへ相談します。
釣りや採集を通じて別の地域へ移される
釣りの対象を増やすために魚を放したり、採集した昆虫や水生生物を別の場所へ放したりすると、新たな外来種問題を生む可能性があります。
川や湖はつながっているように見えても、水系ごとに異なる生態系が形成されています。
また、釣り具、長靴、網、バケツなどに泥、小さな生物、植物片が付着し、別の水域へ運ばれることもあります。
生物を直接放さないだけでなく、道具を介した移動にも注意が必要です。
外来種が生態系へ与える影響
在来種を捕食する
肉食性や雑食性の外来種が定着すると、その地域に暮らしていた昆虫、魚、鳥、両生類などが食べられることがあります。
特に島しょ部の生物や希少種の中には、強い捕食者がいない環境で進化し、外来の捕食者から身を守る行動を十分に備えていないものもいます。
一種類の在来種が減ると、それを餌にする生物や、花粉を運んでもらっていた植物にも影響が及ぶことがあります。
生態系は多くの生物の関係で成り立っているため、影響が連鎖する可能性があります。
餌やすみかを奪う
外来種と在来種が同じ餌や生息場所を利用する場合、競合が起こります。
繁殖力が高く、さまざまな環境へ適応できる外来種が増えることで、在来種が餌やすみかを確保しにくくなることがあります。
外来植物が地面を覆って日光を遮ったり、水草が水面を埋め尽くして水中の光や酸素の状態を変えたりすることも、生息環境を奪う例です。
在来種と交雑する
在来種に近い外来種が持ち込まれると、両者が交配して雑種が生まれる場合があります。
交雑が繰り返されれば、その地域で長い時間をかけて形成された遺伝的な特徴が失われるおそれがあります。
同じ種類に見える生物でも、地域ごとに異なる特徴を持っていることがあります。
善意による放流や移植であっても、生物多様性を損なう可能性があるため、採集した生物を別の場所へ放してはいけません。
病原体や寄生生物を持ち込む
外来種の体内や表面に、本来その地域にはなかった病原体や寄生生物が存在する可能性もあります。
持ち込まれた生物には大きな症状がなくても、抵抗力を持たない在来種へ広がれば深刻な影響が出る場合があります。
飼育していた個体を放すことは、個体そのものだけでなく、目に見えない病原体まで自然界へ持ち込む行為になり得ます。
暮らしや産業に及ぶ問題
農林水産業への被害
外来種が野菜や果実、穀物を食べると、農家に直接的な損失が生じます。
樹木を傷める昆虫、養殖魚や漁業対象の生物を捕食する動物、水路やため池の機能を妨げる水草なども問題です。
被害を防ぐ柵やわなの設置、草刈り、捕獲などには継続的な費用と人手が必要です。
外来種の分布が広がるほど防除は難しくなるため、侵入初期の発見と対応が重要になります。
建物や生活環境への被害
外来動物が屋根裏や床下へ入り、ふん尿、騒音、断熱材の破損などを引き起こすことがあります。
家庭ごみや餌を求めて市街地へ現れる例もあり、衛生面や安全面への配慮が必要です。
かわいそうだからと餌を与えると、人の生活圏へ繰り返し近づくようになり、個体数の増加にもつながります。
外来種か在来種かを問わず、野生動物への安易な餌付けは避けましょう。
人の生命や身体への影響
外来種の中には、毒を持つもの、強い攻撃性を持つもの、人へけがやアレルギー症状を引き起こすものもいます。
ただし、危険な種類に外見が似た在来種も存在します。
見慣れない虫や動物を発見しても、素手で触ったり、捕まえて別の場所へ運んだりしないでください。
安全な距離から写真を撮り、発見場所と日時を記録したうえで、自治体の環境担当窓口などへ相談する方法があります。
日本で知られる代表的な外来種
アライグマ
アライグマは、ペットなどの目的で持ち込まれた後、逃亡や遺棄をきっかけとして野外へ定着したとされます。
雑食性で、農作物を食べるほか、在来生物の捕食や建物への侵入も問題になります。
外見が在来のタヌキなどに似て見えることもあるため、種類を確認しないまま捕獲しないことが大切です。
オオクチバスとブルーギル
オオクチバスやブルーギルは、湖沼や河川に生息し、魚類、水生昆虫、甲殻類などを食べます。
在来の水生生物に影響を与えるものとして知られています。
釣った個体の扱いについては、外来生物法だけでなく、自治体の条例や釣り場のルールが関係する場合があります。
別の水域へ移したり、自己判断で放したりせず、現地の決まりを確認してください。
アカミミガメ
アカミミガメは、幼体がミドリガメという名称で流通していたことでも知られています。
長寿で、成長すると一定の大きさになるため、飼育を始める際には長期的な管理を考えなければなりません。
アカミミガメは条件付特定外来生物に指定されており、一般家庭で現在飼育している個体を飼い続けることはできますが、野外へ放すことなどは禁止されています。
譲渡や取り扱いには条件があるため、環境省の最新情報を確認しましょう。
外来植物や水草
外来種問題は動物だけのものではありません。
園芸植物や観賞用水草が庭や水槽の外へ広がり、在来植物の生育場所を覆うことがあります。
茎や根の小さな断片から再生する植物もあり、刈り取ったものをその場へ放置すると拡散につながる可能性があります。
種類に応じた方法で回収し、自治体のごみ分別ルールなどに従って処理する必要があります。
外来生物法で規制されること
外来生物法では、特定外来生物について、原則として飼養、栽培、保管、運搬、輸入などが規制されています。
野外へ放つ、植える、まくといった行為も禁止の対象です。
許可を受けた研究や防除など、一定の条件下で認められる場合はありますが、個人が自由に扱えるものではありません。
ただし、種類によって規制の内容や例外的な取り扱いが異なることがあります。
アカミミガメやアメリカザリガニのような条件付特定外来生物には、通常の特定外来生物とは異なる部分があります。
名称だけで判断せず、環境省の公式資料で対象種と規制内容を確認してください。
また、捕獲した特定外来生物を生きたまま運ぶ行為が規制に触れる可能性もあります。
外来種を減らす目的であっても、個人の思いつきで捕獲や運搬を始めるのではなく、自治体や防除活動の実施主体へ相談することが安全です。
私たちにできる外来種対策
入れない
悪影響を及ぼす可能性がある生物を、本来いない地域へ入れないことが第一の対策です。
旅行先で採集した生き物を持ち帰る、別の川へ魚を放す、地域外の植物を自然の中へ植えるといった行為は避けます。
自然公園や島しょ部では、生物や土の持ち込みに独自のルールが設けられている場合があります。
訪問前に確認し、靴底や道具に付いた泥、種子、小さな生物を落としてから移動しましょう。
捨てない
一度飼い始めたペットや育て始めた植物は、最後まで責任を持って管理することが基本です。
成長後の大きさ、寿命、繁殖力、必要な設備、餌代などを調べてから迎えます。
飼育できなくなっても、川、公園、空き地などへ放してはいけません。
購入店、適切な譲渡先、自治体、専門団体などへ相談し、法令に従った方法を検討します。
生き物は一般的な不用品と同じ方法で売買・譲渡できるとは限らないため、規制対象かどうかの確認も必要です。
拡げない
すでに野外にいる外来種を、別の場所へ運ばないことも重要です。
釣り具、網、バケツ、長靴、農機具、車両などを別地域で使用するときは、付着した泥や植物片を除去し、必要に応じて洗浄・乾燥させます。
水槽の水や底砂には、小さな生物、卵、植物片が含まれている可能性があります。
河川や池へ流さず、生体や水草を取り除いたうえで、地域のルールに従って処理してください。
早期発見に協力する
外来種は、分布が限られている段階ほど対策しやすいと考えられます。
見慣れない生物を見つけたら、発見場所、日時、大きさ、数などを記録し、安全な範囲で写真を撮ります。
ただし、危険な種類である可能性もあるため、触ったり追い回したりする必要はありません。
自治体や関係機関が情報提供を呼びかけている場合は、指定された窓口へ連絡しましょう。
外来種を見つけたときの注意点
外来種らしい生物を見つけても、すぐに捕獲・駆除するのが正しいとは限りません。
在来種との見分けが難しい場合や、捕獲・運搬が法律で規制されている場合があるからです。
毒や感染症、咬傷などの危険も考えられます。
まずは近づきすぎず、周囲の安全を確保します。
可能であれば写真と発見情報を記録し、自治体の環境担当部署や、案内されている専門窓口へ相談してください。
住宅へ侵入した動物については、行政の案内を確認したうえで、必要に応じて適切な事業者へ依頼します。
子どもにも、見慣れない生き物を素手で捕まえないこと、別の場所へ逃がさないことを伝えておくと安心です。
外来種を悪者にするだけでは解決しない
外来種問題では、防除の対象となる生物に注目が集まりがちです。
しかし、その生物を本来いなかった地域へ運んだのは、多くの場合、人間です。
ペットを最後まで飼えない、売れ残った生物の行き先がない、貨物に付着した生物を発見できないといった、人間側の仕組みも見直す必要があります。
防除が必要な場面では、在来種や地域の暮らしを守るため、科学的な根拠に基づく対応が求められます。
同時に、新たな遺棄や放流を防ぎ、同じ問題を繰り返さないことが欠かせません。
命を大切にすることと生態系を保全することは、単純な二者択一ではありません。
飼育前に十分な情報を集めること、適正な管理を続けること、自然へ放さないことが、双方を守るための基本です。
まとめ
外来種問題とは、人間によって本来いなかった地域へ運ばれた生物が、生態系、農林水産業、人の安全や生活環境へ影響を及ぼす問題です。
外来種のすべてが危険なわけではなく、外来種と特定外来生物も同じ意味ではありません。
対象となる生物の種類、影響、法的な位置づけを正確に確認する必要があります。
私たちが実践できる基本は、外来種を本来いない地域へ入れない、飼育・栽培している生物を捨てない、別の地域へ拡げないことです。
ペットや植物を迎える前に最後まで管理できるかを考え、不要になったからといって自然へ放してはいけません。
また、見慣れない生物を発見しても、自己判断で捕獲・運搬・駆除せず、自治体や関係機関の情報を確認しましょう。
外来種を単に悪者とみなすのではなく、人間の行動を見直して新たな侵入と拡散を防ぐことが、外来種問題の解決へつながります。
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(KOBIT編集部:Fumi.T)
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