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日本にもある医療格差。離島ライターが日常で感じる「環境による差」

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2017年に世界銀行と世界保健機関(WHO)が発表した報告書によると、基礎的保健サービスを受けられない方の数は世界人口の半数にのぼると言われています。[1]

また、2020年に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、この医療格差がさらに広がるのではないかという懸念もあります。

しかしながら、私たちが住む日本では、1961年の国民皆保険の確立以降、誰もが必要最低限の医療を受けられる環境にあるため、こと医療格差の問題については今ひとつ”リアル”を感じにくい方も多いのではないでしょうか。

ただ、誰もが同じ医療が受けられる日本でも、実は見えないところでは医療格差が起きています。

今回はこの事実について、鹿児島県の離島に住む私の実体験をもとにお伝えしていきたいと思います。

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鹿児島県の離島で体験する「医療」のいま

私が住む離島には、救急医療の対応している総合病院が1件だけ。しかも全ての診療科目が毎日受けられる環境ではありません。

この地に住んで10年が経ちますので最近では良くも悪くも当たり前なことになってしまいましたが、東京から引っ越して来た時は非常に驚いたことを覚えています。

診療科によっては受診が週に一度ということも

常に健康であれば、この医療体制でも問題ないと思いますが、人間いつ体調を崩すかわかりません。

その一例として、先日、突然左耳が聴こえにくくなってしまった時のことをお話したいと思います。

最初はしばらくすれば治るだろうと一週間ばかり様子を見ていましたが、だんだんと聴こえなくなってきたため、耳鼻科を受診しようと思いました。

ちょうど仕事が立て込んでいたこともあって行くことができず、明日にでも…と思って確認したところ、次回の受診日は一週間後。

このように耳鼻科、皮膚科、呼吸器内科、泌尿器科といった専門外来は病院専属の医師が不在で、本土の大学病院や総合病院から医師が派遣されているため、週に一度しか受けることができない科目もあります。

基本的に緊急を要さない科目ではありますが、今回のように原因がわからずどんどん耳が聴こえない状況で、次の受診日まで一週間も待つのは不安ですよね。しかも、強風や台風によって船が出ない場合には、医師が来島できず休診となるため、さらに先となってしまいます。

おかげさまで今回は大事には至りませんでしたが、すぐに治療ができなかったことが原因で耳が聴こえなくなってしまったら?と思うと正直ゾッとしてしまいました。

このように離島では、医療を受けられる権利は与えられているのに、満足に受けることができない環境があります。

入院を伴う病気になると患者の負担は深刻に

こうした本土と比べて医療環境が整っていない離島では、入院を伴う病気になると別の問題も発生します。

それを肌で実感したのが、一昨年に腰椎ヘルニアになった時のことでした。

当時、私は歩くこともできなくなり、救急車で島内の病院に運ばれて、そのまま入院。その後、二週間ほどあらゆる保存治療を試しましたが効果がなく、やむなく手術を決意しました。

しかし、島内の病院では満足な手術を選択できず、鹿児島本土へ転院しなければいけなくなってしまったのです。

手術を伴う入院をご経験された方はお分かりになると思いますが、手術を受けるまでにはいくつか段階があります。

具体的には①初診の検査、②検査結果の告知・入院日の決定、③入院と、手術までに最低でも2~3回は受診に行かなければいけません。

これが離島に住んでいると相当深刻な問題となるのですが、それは病院を受診するためにかかる「交通費」です。

陸続きの場所と違って離島から本土に渡るには高速船やフェリーを使わなければいけません。この費用が往復で1人1万円ほどかかります。入院・手術となれば付き添いも必要となりますので、妻の交通費も別途必要となりました。

結局、ヘルニアの手術を受けるためにかかった交通費の総額は7万円近く。手術と入院費用が6万円程度でしたので、医療費以上に交通費がかかってしまいました。

このように医療だけに焦点を当てれば、日本では公的医療保険制度のおかげで平等な医療を受けることができますが、同じ日本国内に住んでいても、こうした「見えない医療格差」によって負担を感じている地域があるのです。

環境が違えばSDGs 3「すべての人に健康と福祉を」も実感しやすく

現在、世界全体で取り組みをしているSDGs(持続可能な開発目標)。その3番目には「すべての人に健康と福祉を」が掲げられています。

このSDGsは地球規模の取り組みのため、先進国と途上国の医療格差について語られることが多く、日本に住む私たちにはどこか身近に感じにくいことも多いかもしれません。

でも今回ご紹介したように、日本国内ですら環境によっては医療の平等が保たれていません。この現状から、世界における医療格差がいかに深刻な問題であるのかについて、改めて考えていただけたらと思います。

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この記事を書いた人
KOBIT編集部:Fumi.T KOBIT公式サイト
飼い猫のさんごちゃん
広告営業のサラリーマン時代から一転、鹿児島県の離島に移住して10年。現在はWebフリーランスとして活動中。妻の無類の猫好きが高じて、先住猫と保護猫合わせて7匹を飼っている他、地域のTNR活動にもWeb担当として参画中。

[1] 世界銀行とWHO:世界の人口の半数が基礎的保健医療サービスを利用できず、1億人が医療費が原因で極度の貧困状態に-World Bank

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