湾岸戦争での劣化ウラン弾による放射能被害 消えることのない爪痕
アメリカ率いる多国籍軍がイラク軍の制圧に踏み切った湾岸戦争から今年で32年目を迎えます。
今回は、この戦争で使用された劣化ウラン弾による放射能被害をテーマにお伝えします。
湾岸戦争で起きていたことを知ることで、未だに解決の糸口が見えないロシアによるウクライナ侵攻の問題について改めて深く考えるきっかけとしていただければ幸いです。
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湾岸戦争が起きたきっかけを振り返る
各教派と石油の利権争いで長らく戦争と停戦を繰り返していたイスラム諸国で、1990年にイラクのサダム・フセイン政権が石油の大量保有国であるクウェートに対して攻撃しました。
これは国際社会にも大きな影響を及ぼした出来事で、国連安保理はイラクに対して期限までにクウェートからの撤退を要求しましたが、これをイラク側が拒否したことをきっかけに湾岸戦争が始まりました。
1991年1月17日にアメリカを中心とした合計35カ国による多国籍軍がイラクに攻撃を開始しましたが、約1ヶ月半という短い期間で多国籍軍の圧勝という形で終焉を迎え停戦協定が結ばれることになります。
しかし、この湾岸戦争が世界に与えた影響は計り知れないものでした。
一例をあげれば、私たち日本がこの戦争で「人道復興支援」という名目で自衛隊を派遣したのも湾岸戦争が初めてのことです。
また、アメリカで起きた2001年9月11日の同時多発テロも、湾岸戦争を契機に世界各地でイスラム教過激派のテロリストが生まれた結果として起きた悲劇だったのです。
戦争に関わった人に被害をもたらした劣化ウラン弾
湾岸戦争は通称「砂漠の嵐作戦」と呼ばれ、当時最新鋭の兵器の数々が使用されたことで1ヶ月半という短期間で停戦に結びついたと言われています。
しかし、空爆によるイラク市民の犠牲のみならず、現在に至るまで戦争に関わった多くの人々に被害をもたらすことになってしまいました。
その原因が、湾岸戦争以降、ボスニア紛争、コソボ紛争、イラク戦争で使用された「劣化ウラン弾」というものです[1]。
当時のアメリカでは、約50万トンにも上る劣化ウランが廃棄物として貯まり続けていた問題を解決する方法として砲弾としての再利用に踏み切りました。
劣化ウラン弾とは、核燃料を製造する過程で出る廃棄物で、天然ウランと比べると放射能が少ないものの、放射性物質には変わりありません。
事実、湾岸戦争に参加した多国籍軍兵士の中で、帰還してからうつ症状や癌・白血病、免疫不全などが次々と発生したのです。
当時のアメリカ政府と軍は、劣化ウランによる影響を否定し「湾岸戦争症候群」という原因不明の症状として、それ以上詳しい調査が行われることはありませんでした。
しかし、より深刻な問題となっているのは、劣化ウラン弾を被弾したイラクにおける被害です。
2002年12月1日、広島で開催された「イラクの医師を囲む集い」で講演したバグダット大学医学部のジョルマクリー医師によると、イラクに住む人々や子供たちの癌や白血病の発生率が湾岸戦争以降、3~7倍まで増加したことを明らかにしました[2]。
ただ、この問題についても様々な利権が絡み合い、劣化ウラン弾による環境や人体による影響は深く解明されることのないまま現在に至っています。
戦争は終結後も終わらない。必要とされる支援の力
現在ロシアのウクライナ侵攻でも生物兵器による大量破壊兵器の使用が懸念されています。
実際に使用されないことを願うばかりですが、お伝えしたいのは「戦争は終結した後も簡単には終わらない」という事実です。
湾岸戦争から30年以上経った現在も、イラクでは難民への人道支援や医療支援を行うNPO団体が継続して活動しているというのが、その1つの証拠と言えるのではないでしょうか。 戦争が長引くほど日常を生きる人々への被害はより甚大になっていきます。この事実を改めて理解し、本当の終結に向けて今私たちができることを考え、行動に移していくことが必要とされています。
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(KOBIT編集部:Fumi.T)
<参考文献>
[1] 広島市,「劣化ウラン弾はどういうものですか」,available at https://www.city.hiroshima.lg.jp/site/faq/9422.html [2]「劣化ウラン弾による被害の実態と人体影響について」,available at https://www.jca.apc.org/mihama/d_uran/jintai_eikyo.htm
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