OECMとは?30by30との関係や自然共生サイト、土地の新たな価値を詳しく解説
OECMとは
OECMとは、国立公園などの保護地域ではないものの、生物多様性の保全に長期的かつ実質的な効果をもたらしている区域を評価する考え方です。
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正式名称は「Other Effective area-based Conservation Measures」で、日本語では「その他の効果的な地域をベースとする保全手段」などと訳されます。
重要なのは、OECMが特定の土地の種類や所有者を指す言葉ではないことです。
企業が所有する森林や工場緑地、地域住民が管理する里地里山、社寺林、学校林、都市公園、研究施設の敷地なども、管理によって生物多様性が守られていれば候補になり得ます。
一方、樹木が多い場所や景観の美しい場所が、そのままOECMになるわけではありません。
区域が明確であり、そこに生物多様性上の価値が存在し、適切な管理による保全効果が長期的に見込めることが大切です。
OECMが必要とされるようになった背景
保護地域だけでは守りきれない自然がある
生物多様性を守る代表的な方法には、国立公園や自然環境保全地域などの保護地域を設けることがあります。
しかし、野生生物は保護地域の境界線だけで生活しているわけではありません。
採餌、繁殖、越冬、季節移動などのために、森林、水辺、農地、草地、海岸といった複数の環境を利用します。
保護地域が点在していても、その間にある自然が失われれば、生物の移動が妨げられます。
そこで注目されているのが、保護地域の外にある企業緑地、里山、河川沿いの樹林、ため池、都市の緑地などです。
これらの場所は、生息地同士をつなぐ経路や、暑さ、災害、開発などから生物が逃れる場所として機能することがあります。
人の営みによって維持される自然もある
自然保全というと、人が立ち入らず、そのまま残すことを想像するかもしれません。
しかし、日本の里地里山や草原の一部は、草刈り、採草、間伐、水路の清掃、ため池の管理といった人の働きかけによって維持されてきました。
管理が途絶えると樹林化や乾燥化が進み、それまで暮らしていた植物、昆虫、両生類、鳥類などが減少する場合もあります。
OECMは、人の利用を一律に排除するのではなく、地域の営みと両立しながら自然を守る方法に光を当てる仕組みでもあります。
OECMと30by30目標の関係
30by30とは
30by30は、2030年までに陸域と海域の少なくとも30%を、保護地域やOECMによって効果的に保全するという国際目標です。
2022年に採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」でも重要な目標として位置付けられています。
ただし、単純に対象区域の面積を増やせばよいわけではありません。
その地域を代表する生態系が含まれているか、生息地同士がつながっているか、実際に管理されているか、地域住民を含む関係者の権利が尊重されているかといった質も問われます。
OECMが担う役割
国立公園などの保護地域のみで陸域と海域の30%をカバーするのは容易ではありません。
また、法的な保護地域の指定になじみにくくても、長年の管理によって良好な自然が残されている場所は数多くあります。
OECMは、そうした場所の保全効果を可視化し、30by30の達成に生かす役割を担います。
特に、保護地域同士をつなぐ企業林や里山、都市部に残る樹林、水辺などは、生態系ネットワークを形成するうえで重要です。
OECMと保護地域の違い
国立公園をはじめとする保護地域は、自然環境の保護を主な目的として、法律などに基づいて指定されます。
これに対してOECMは、保護地域以外にありながら、区域を基盤とする管理によって生物多様性の保全成果を生み出している場所です。
OECMでは、土地の第一目的が自然保護であるとは限りません。
例えば、水源の維持を目的とする企業所有林、教育に使われる学校林、信仰や文化のために残された社寺林、防災機能を持つ緑地などが、結果として生態系を守っている場合があります。
この「結果として」という点はOECMを理解する鍵です。
ただし、偶然に自然が残っているだけでは十分とはいえません。
保全を支える管理や意思決定の仕組みがあり、その効果を将来にわたって維持できることが求められます。
OECMと日本の自然共生サイト
日本では、OECMに関連する制度として「自然共生サイト」が知られています。
自然共生サイトは、民間企業、自治体、地域団体、教育機関などの取り組みによって、生物多様性の保全が図られている区域を国が評価する仕組みです。
自然共生サイトとOECMは密接に関係しますが、完全な同義語ではありません。
一般に、国の制度で認定された活動区域のうち、既存の保護地域と重複しない区域について、国際的なOECMとして登録することが検討されます。
保護地域と重なる部分は、保全価値が低いのではなく、すでに保護地域として集計されているため、OECMとは別に整理されます。
日本の認定制度は、2025年4月に施行された地域生物多様性増進法に基づく仕組みへ移行しています。
申請区分、審査基準、必要書類などは変更される可能性があるため、実際に認定を目指す場合は、環境省や関係機関が公表する最新情報の確認が必要です。
OECMになり得る場所の具体例
企業の森や工場緑地
企業が水源涵養、災害防止、地域貢献などの目的で管理している森林は、生物の生息地として価値を持つことがあります。
また、工場や事業所の敷地内にある樹林、湿地、調整池も、周囲の自然とつながることで鳥類や昆虫などを支える場合があります。
ただし、外来種を中心に植えた見栄えのよい緑地が、必ずしも生物多様性に富むとは限りません。
在来種が維持されているか、農薬や照明による影響が抑えられているか、周辺環境との連続性があるかなども重要です。
里地里山や農林業地域
水田、ため池、雑木林、草地、水路などが組み合わさった里地里山には、多様な生物が暮らしています。
農林業の生産活動が行われていても、適切な水管理、草刈り、間伐などによって生息環境が維持されていれば、保全上の価値を持ちます。
OECMは農林業を停止させる考え方ではありません。
生産と保全の両立を図り、地域の文化や技術を次世代へ受け継ぐ点にも意義があります。
社寺林や学校林
社寺林は、信仰や文化を背景に長期間残されてきた樹林です。
都市化が進んだ地域では、古い樹木や在来植物が残る貴重な場所となっていることがあります。
学校林や大学の演習林、研究施設も、教育や研究を主目的としながら生態系を保全できる区域です。
こうした場所では、生物多様性だけでなく、地域史、文化、教育などの価値が重なります。
自然を単なる未利用地として見るのではなく、長い時間をかけて蓄積された環境資源として捉える視点が重要です。
都市公園やビオトープ
都市公園、屋敷林、河川沿いの緑地、ビオトープも候補になり得ます。
小規模な緑地であっても、周辺の公園や河川、街路樹などとつながることで、生物の移動を助ける中継地点になります。
一方、短期間だけ設置されたビオトープや、管理方法が定まっていない緑化空間は、長期的な保全成果を示しにくい場合があります。
面積や設備の豪華さよりも、その地域の生態系に合った管理が続いているかが大切です。
沿岸域や海域
OECMは陸地だけを対象とするものではありません。
藻場、干潟、サンゴ礁、漁場なども、地域の自主的な利用ルールや持続可能な漁業によって生態系が維持されていれば、海域OECMの候補となる可能性があります。
海の環境は陸上から流れ込む水や物質の影響も受けます。
流域の森林、河川、干潟、沿岸域を一体的に見ることが、効果的な保全につながります。
OECMとして評価されるためのポイント
区域と管理主体が明確であること
まず、どこからどこまでを対象とするのかを地図などで示せる必要があります。
土地や海域の所有者だけでなく、実際に管理する人、意思決定を行う組織、関係者の役割を明らかにすることも重要です。
生物多様性上の価値があること
評価対象は希少種だけではありません。
地域を代表する森林や草地、繁殖地、水源、生物の移動経路なども価値に含まれます。
希少種が確認されていなくても、健全な生態系を維持している場所には保全の意義があります。
有効な管理が行われていること
管理計画を作るだけではなく、実際の保全効果が必要です。
例えば草刈りは、草地性の植物を守る一方、実施する季節や頻度によっては昆虫の繁殖を妨げることがあります。
管理作業は多ければよいのではなく、対象とする自然に合った方法で行う必要があります。
長期的な継続性があること
一度限りの植樹イベントや短期的な環境キャンペーンだけでは、OECMが重視する長期的な保全にはつながりません。
担当者が異動しても活動を続けられる体制、予算、記録、地域との協力関係などが必要です。
モニタリングと見直しを行うこと
自然環境は常に変化します。
動植物や水環境、植生などを定期的に確認し、その結果を踏まえて管理方法を調整する「順応的管理」が有効です。
専門家だけでなく、地域住民、従業員、児童や学生が調査に参加することも、担い手の育成につながります。
OECMが土地にもたらす新たな価値
売買価格では測れない価値を可視化する
土地の価値は、立地や面積、建物を建てられるかどうかだけで決まるものではありません。
森林が水を蓄える機能、緑地が暑さを和らげる機能、生物の生息地、災害の緩衝地、地域文化の継承場所など、金銭換算しにくい価値もあります。
OECMは、長年守られてきた土地を単なる空き地や未利用地として見るのではなく、自然資本として再評価するきっかけになります。
使われていない工場敷地や遊休地でも、安易に開発する前に、どのような生物や環境が残っているかを調べることで、新たな利活用の可能性が見つかる場合があります。
企業と地域の連携を生み出す
企業が単独で自然環境を調査し続けるのは容易ではありません。
自治体、NPO、大学、博物館、地域住民と協力すれば、専門知識や過去の記録を共有できます。
自然観察会や環境教育に活用することで、土地と地域社会との関係も深められます。
ただし、希少種の生息地を詳しく公開すると、盗掘や過度な訪問を招くおそれがあります。
すべての区域を一般開放する必要はなく、保全、安全、事業運営のバランスを考えた情報発信が求められます。
OECMに取り組む際の注意点
OECMや自然共生サイトの認定は、取得しただけで自然が守られるものではありません。
認定後に管理を縮小したり、保全成果を確認しなかったりすれば、生物多様性は失われる可能性があります。
また、認定実績だけを宣伝し、自社の事業活動が自然に与える負の影響を説明しなければ、グリーンウォッシュと受け取られることもあります。
企業は保有地の保全に加え、原材料調達、水利用、排水、土地改変など、事業全体と自然との関係を把握することが大切です。
土地所有者、管理者、地域住民、利用者の意見が異なる場合もあります。
外部の組織が一方的に保全方針を決めるのではなく、従来の土地利用や地域文化を尊重し、話し合いを重ねる必要があります。
OECMを目指す際の基本的な進め方
最初に、土地の範囲、所有関係、利用目的、過去と現在の管理方法を整理します。
次に、既存資料や現地調査を通じて、動植物、植生、水環境などを確認します。
一つの季節だけでは確認できない生物もいるため、必要に応じて複数の季節に調査することが望まれます。
調査結果を踏まえ、何を守るのか、どのような状態を目指すのかを定めます。
そのうえで、草刈り、間伐、水管理、外来種対策、立入管理などの方法、実施時期、担当者を管理計画にまとめます。
活動を始めた後は、モニタリング結果を記録し、必要に応じて計画を見直します。
認定申請を検討する場合には、最新の要件を確認し、自治体や専門家へ早めに相談するとよいでしょう。
OECMに関するよくある質問
個人所有の土地も対象になりますか
企業や自治体の土地であることは必須ではありません。
個人所有地でも、区域、生物多様性上の価値、管理体制、長期的な保全効果などの条件を満たせる場合は、対象となる可能性があります。
人が利用している場所でも問題ありませんか
農林業、教育、研究、文化活動、レクリエーションなどに利用されていても、利用と保全が両立していれば候補になり得ます。
OECMは人の活動をすべて禁止する制度ではありません。
OECMになると土地の価格は上がりますか
OECMや自然共生サイトの認定は、不動産価格の上昇を保証する制度ではありません。
一方、生態系、教育、文化、防災、地域連携といった土地の非金銭的な価値を可視化し、企業や地域の評価につながる可能性はあります。
まとめ
OECMは、国立公園などの保護地域以外で、生物多様性の長期的な保全に貢献している区域を評価する考え方です。
30by30目標の達成を支えるだけでなく、企業緑地、里地里山、社寺林、学校林、都市公園、沿岸域など、これまで人が利用し、管理してきた場所の価値を見直す役割があります。
大切なのは、認定や登録の件数を増やすことだけではありません。
その土地にどのような自然があり、どのような管理によって守られてきたのかを知り、保全効果を確かめながら次世代へ引き継ぐことです。
OECMは、土地を使うか守るかという二者択一ではなく、地域の営みの中で自然を生かし続ける方法を考えるための仕組みだといえるでしょう。
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(KOBIT編集部:Fumi.T)
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