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シンガポール植物園が世界遺産に登録された理由とは?歴史・見どころ・植物研究の価値を解説

シンガポール植物園は、英語で「Singapore Botanic Gardens」と呼ばれる植物園です。

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緑豊かな園内には、熱帯雨林、湖、芝生、ランの展示施設、研究施設、歴史的建築などが点在しています。

観光名所であると同時に、植物の研究や保全、教育を担う専門機関であり、市民が散策や運動を楽しむ公共空間でもあります。

2015年、シンガポール植物園はユネスコ世界遺産に登録されました。

これはシンガポールにとって初めての世界遺産です。

植物園という名称から自然遺産を想像するかもしれませんが、登録区分は文化遺産です。

自然のまま残された土地だけが評価されたのではなく、人が植物を集め、分類し、育て、研究しながら庭園を発展させてきた歴史が重視されています。

現在も植物が成長し、研究や教育が続いていることから、シンガポール植物園は過去をそのまま封じ込めた施設ではありません。

歴史的な景観と資料を受け継ぎながら、現代社会で役割を持ち続ける「生きた文化遺産」といえるでしょう。

シンガポール植物園が世界遺産に登録された理由

熱帯植物園の発展過程を伝えている

現在の場所にシンガポール植物園が設けられたのは1859年です。

当初は農業園芸協会によって運営され、英国式の景観を採り入れた庭園として整備されました。

その後、1874年に植民地政府へ移管され、植物研究や有用植物の試験を行う機関としての性格を強めていきます。

園内には、曲線を描く園路、広い芝生、湖、樹木群、研究施設、歴史的建築など、異なる時代に加えられた要素が残っています。

一つの年代の姿に統一されているのではなく、観賞用の庭園から科学的な植物園へ発展した過程を景観から読み取れることが大きな特徴です。

植物研究が東南アジアの産業に影響を与えた

シンガポール植物園の歴史を語るうえで欠かせないのが、パラゴムノキに関する研究です。

19世紀末から20世紀初頭にかけて、園長を務めた植物学者ヘンリー・ニコラス・リドリーは、ゴムの栽培や樹液採取法の研究と普及に取り組みました。

パラゴムノキから得られる天然ゴムは、タイヤをはじめとする多様な工業製品の原料です。

植物園で蓄積された知識はマレー半島を含む地域へ広がり、東南アジアにおけるゴム産業の発展に影響を与えました。

植物園に植えられた一本の木は、単なる展示物ではありません。

研究対象となり、育て方や利用方法が記録されることで、社会や産業を動かす資源になり得ます。

植物と人間の暮らしの関係を示す点も、シンガポール植物園が持つ重要な価値です。

庭園・研究・教育の機能が受け継がれている

シンガポール植物園は、古い景観を残すだけでなく、現在も植物の分類、育成、保全に関する活動を続けています。

研究成果は植物ラベルや展示、ガイド、教育プログラムなどを通して一般の来園者にも伝えられます。

専門的な研究機関でありながら、市民が日常的に利用できる点も特徴です。

散策する人、植物を観察する人、芝生でくつろぐ人、学習目的で訪れる人が同じ空間を共有しています。

研究、教育、観光、憩いという複数の役割が共存しているからこそ、文化遺産が社会から切り離されずに生かされています。

開園から世界遺産登録までの歴史

1859年に現在の植物園が開園

シンガポールでは、現在の植物園が造られる以前にも、トーマス・スタンフォード・ラッフルズがフォート・カニング周辺に実験的な植物園を設けた歴史があります。

ただし、現在まで続くシンガポール植物園は、1859年に開園した庭園を起点とします。

初期には、土地の起伏や既存の植生を生かしながら、英国の風景式庭園を思わせる空間が造られました。

自然に見える曲線的な道や芝生も、人の視線や移動を考えて設計された景観です。

リドリーとゴム研究の時代

1888年から1911年まで園長を務めたリドリーは、植物採集や分類を進めるとともに、パラゴムノキの栽培を熱心に推奨しました。

ゴムノキを傷めにくい樹液採取法の普及にも関わり、植物学の知識を実用へ結び付けました。

もっとも、植物園の発展は一人の研究者だけによるものではありません。

植物を採集した人、苗を運んだ人、日々世話をした庭師、標本や記録を整理した職員など、多くの人の仕事によって支えられてきました。

世界遺産の景観を見る際には、表からは見えにくい維持管理の積み重ねにも目を向けたいところです。

ランの研究と育種が発展

シンガポール植物園では、ランの交配や育種も進められてきました。

ランは花の形や色が多様で、交配によって新たな特徴を持つ品種を生み出せます。

園内にある国立蘭園では、その研究と栽培技術の蓄積を色鮮やかな展示から感じられます。

シンガポールの国花は、ランの一種であるバンダ・ミス・ジョアキムです。

植物は観賞する対象にとどまらず、国や地域のアイデンティティを表現する存在にもなっています。

2015年に世界遺産へ登録

長い歴史を持つ庭園景観、熱帯植物研究への貢献、現在まで続く研究・教育機能などが評価され、2015年に世界遺産へ登録されました。

ただし、世界遺産への登録は保存活動の終着点ではありません。

樹木は成長し、建物は年月とともに劣化します。

植物の病気や気候の変化にも対応しなければなりません。

登録後も適切な管理を続け、歴史的価値と現代の利用を両立させる必要があります。

世界遺産として注目したい園内の見どころ

国立蘭園

国立蘭園は、シンガポール植物園を代表する見どころです。

多数の原種や交配種が育てられ、色、形、大きさの異なるランを観察できます。

花の美しさだけでなく、植物ラベルや品種名にも注目してみましょう。

園内には、各国の要人や著名人の名を冠したランもあります。

新しい品種を育成し、名前を付け、特徴を記録する行為には、植物を後世へ伝えるための文化が表れています。

国立蘭園は、植物園の一般的な屋外区域とは入場条件が異なる場合があります。

料金、開園時間、割引などは訪問前に公式サイトで確認してください。

園内に残る熱帯雨林

園内には熱帯雨林の一画が残されています。

整然と植えられた花壇とは異なり、高さの違う樹木、つる植物、シダなどが立体的な環境をつくっています。

古い大木だけを見るのではなく、木陰で育つ植物や落ち葉が積もった地面にも注目すると、森が多くの生物の関係によって成り立っていることが分かります。

一本の樹木を保存するだけでは、熱帯雨林全体を守ることはできません。

周囲の土壌、水、植物、生き物を含めて維持する必要があります。

ジンジャー・ガーデン

ジンジャー・ガーデンでは、ショウガ科を中心とする植物を観察できます。

ショウガの仲間には、食用だけでなく、薬用、香料、観賞用として利用されてきたものがあります。

普段は食品や香辛料として目にするものも、もとは葉や茎、花、地下茎を持つ植物です。

暮らしの中のモノと植物とのつながりを知ると、展示の見え方が変わります。

シンフォニー・レイク周辺

シンフォニー・レイク周辺には芝生や野外ステージがあり、市民の憩いや文化行事の場として親しまれています。

研究施設としての厳格な一面だけでなく、音楽や交流を受け入れる公共空間としての植物園を感じられる場所です。

園路を歩くと、樹木の間から湖や芝生が徐々に見えてきます。

植物の種類だけでなく、歩く人の視界がどのように変化するかを意識すると、庭園設計の工夫も楽しめます。

歴史的建築と展示資料

植物園の歴史を伝えるのは植物だけではありません。

園内の歴史的建築、古写真、地図、図面、道具、文書なども重要な資料です。

建物や展示施設の公開状況は、改修や展示替えによって変わる可能性があります。

見学したい施設がある場合は、最新の案内を確認しましょう。

植物園に受け継がれるモノの価値

植物標本は過去の環境を伝える

植物園や関連する研究機関では、生きた植物だけでなく、乾燥標本、種子、図譜、採集記録なども扱います。

乾燥した植物標本は一見すると枯れた葉や花ですが、採集地、採集日、採集者、植物の特徴といった情報が添えられることで、学術資料になります。

古い標本は、当時その植物がどこに分布していたかを知る手がかりです。

新しい分類方法で調べ直したり、過去と現在の植生を比べたりする際にも役立ちます。

その価値は見た目や換金性ではなく、植物と環境の記憶を保存している点にあります。

古い建物を使い続ける利活用

歴史的建築は、残すだけで価値が十分に伝わるとは限りません。

安全性や文化財としての特徴に配慮しながら、展示、案内、研究、交流などに活用することで、人が建物の歴史に触れられます。

用途を調整しながら古い建物を使い続けることは、モノの利活用の一つです。

新しい施設へすべて置き換えるのではなく、過去の記憶を持つ空間に現代の役割を与えています。

成熟した樹木は短期間で再現できない

樹齢を重ねた木は、同じ種類の若木を植えればすぐに置き換えられるものではありません。

大きな樹冠がつくる木陰や景観、そこで形成される生態系には、長い時間が必要です。

古木の価値を受け継ぐには、剪定、土壌管理、病害への対応、周辺環境の保全などが欠かせません。

必要に応じて種子や挿し木から後継樹を育てることも、遺伝的・歴史的なつながりを未来へ残す方法になります。

シンガポール植物園の回り方

見たい場所から入口を選ぶ

園内は広く、複数の入口があります。

限られた時間で回るなら、国立蘭園、熱帯雨林、歴史的景観、子ども向け施設など、目的を決めてからルートを考えると効率的です。

地下鉄駅やバス停からのアクセスも入口によって異なります。

シンガポール植物園駅に近い側から入る方法だけでなく、訪れたい施設に合わせてタングリン側などから入る方法も検討できます。

植物ラベルを読んでみる

植物ラベルには、一般名だけでなく、学名、科名、原産地などが記されている場合があります。

花が咲いていない季節でも、葉の付き方、幹の模様、根、果実、樹形を見比べれば、多くの発見があります。

同じ科の植物を探したり、東南アジア原産の種類に注目したりと、自分なりのテーマを決めるのもおすすめです。

観光地を短時間で消費するのではなく、情報を読みながら歩くことで、植物園が研究と教育の場であることを実感できます。

暑さと雨への備えをする

シンガポールは年間を通じて高温多湿で、急な雨に見舞われることもあります。

歩きやすい靴、飲料、帽子、日焼け対策用品、雨具などを用意し、適度に休憩を取りましょう。

開園時間、施設の休館、工事、入場料金などは変更される可能性があります。

訪問当日の公式情報を確認することが大切です。

また、園内の植物、花、果実、種子などを持ち帰らず、指定された園路や現地のルールを守って見学しましょう。

シンガポール植物園に関するよくある質問

シンガポール植物園は自然遺産ですか?

いいえ。

ユネスコ世界遺産の区分では文化遺産です。

長期間にわたる庭園の発展、植物研究、産業への影響、人と植物の関係などが評価されています。

世界遺産に登録されたのはいつですか?

2015年です。

シンガポールで初めて登録された世界遺産となりました。

国立蘭園も無料ですか?

国立蘭園は、植物園の一般的な屋外区域とは異なる入場条件が設定されることがあります。

最新の料金や割引、開園時間は公式サイトで確認してください。

見学にはどのくらいの時間が必要ですか?

一部の見どころに絞る場合と、園内を広く歩く場合では大きく異なります。

暑さによる休憩や施設内の見学時間も考慮し、余裕のある計画を立てましょう。

短時間の訪問では、見たい場所を一つか二つに絞ると理解が深まります。

まとめ:人と植物の関係を伝える生きた世界遺産

シンガポール植物園が世界遺産に登録された理由は、美しい花や豊かな緑があるからだけではありません。

1859年の開園以来、庭園設計、植物の収集と分類、ゴムやランの研究、教育、市民利用といった多様な活動が積み重ねられてきたことに価値があります。

園内の樹木、植物標本、研究記録、古い建物、園路、湖は、それぞれが歴史を伝える資料です。

なかでも成熟した樹木や長年蓄積された標本は、失ってから同じものを買い戻すことができません。

シンガポール植物園を訪れる際は、目の前の花の美しさに加え、植物がどのように研究され、記録され、暮らしや産業に生かされてきたのかにも注目してみてください。

モノや場所の価値は新しさや価格だけでは決まらないことを、世界遺産となった植物園の歩みが教えてくれます。

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KOBIT編集部:Fumi.T)

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