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ナスカの地上絵はなぜ世界遺産?登録理由・描かれた目的・代表的な図柄を詳しく解説

ナスカの地上絵は、南米ペルー南部の乾燥した大地に残る巨大な地上絵群です。

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ハチドリやサルのような動物を表した絵がよく知られていますが、実際には人物、植物、幾何学図形、長大な直線など、さまざまな形が存在します。

地上絵は非常に大きく、地面に立った状態では全体像を把握しにくいものも少なくありません。

飛行機から見た写真が広まったことで、古代の人々がなぜ巨大な絵を描いたのか、どのように設計したのかという謎が世界的な関心を集めました。

一方、ナスカの地上絵は単なるミステリーではありません。

古代アンデス社会の信仰や自然観、集団活動、測量技術を現代へ伝える貴重な文化遺産です。

その価値が国際的に認められ、1994年にユネスコの世界文化遺産へ登録されました。

ナスカの地上絵がある場所

地上絵が集中しているのは、ペルー南部のナスカとパルパ周辺です。

首都リマから南東へ離れた砂漠地帯にあり、乾燥した台地や丘の斜面に多数の図形が残されています。

一般にナスカの地上絵と総称されますが、世界遺産の対象にはパルパ周辺の地上絵も含まれます。

ユネスコでは、英語でLines and Geoglyphs of Nasca and Palpaと表記され、日本語では一般に「ナスカとパルパの地上絵」などと訳されています。

ナスカの地上絵は誰がいつ描いたのか

地上絵の多くは、紀元前500年ごろから西暦500年ごろまでの長い期間に制作されたと考えられています。

特に、ペルー南海岸で栄えたナスカ文化との関係が深い遺産です。

ただし、すべてを同じ時期、同じ集団が描いたわけではありません。

ナスカ文化より前の時代に関係する図像もあり、地域の人々が世代を超えて大地へ線や絵を刻んできた可能性があります。

制作年代や表現方法の違いを調べることは、地域社会の変化を理解するうえでも重要です。

ナスカの地上絵が世界遺産に登録された理由

ナスカの地上絵は、1994年にユネスコの世界文化遺産へ登録されました。

評価されたのは、巨大で珍しいという点だけではありません。

広大な自然環境を舞台に生み出された優れた造形表現であり、古代社会の文化と精神世界を伝える重要な証拠であることが登録の理由です。

世界遺産の登録基準では、人間の創造的才能を示す傑作であること、失われた文化的伝統を伝える証拠であること、歴史上重要な文化的景観であることなどが評価されています。

人類の創造性を示す巨大な造形

ナスカの人々は、飛行機や現代的な測量機器がない時代に、長い直線や巨大な動物図形を制作しました。

単純な線だけでなく、動物の特徴を少ない輪郭で表した図柄には、洗練された造形感覚が見られます。

小規模な共同作業から大人数を必要とする計画まで、制作方法は図形によって異なっていたと考えられます。

設計、測量、労働力の調整を行う社会的な能力が存在していたことも、地上絵から読み取れる価値の一つです。

古代社会の信仰を伝える文化遺産

ナスカ文化には、当時の人々自身が残した詳しい文字記録がありません。

そのため、土器、織物、建造物、墓、地上絵などが、社会や信仰を知る手がかりになります。

地上絵に表された動植物や人物、幾何学模様は、単なる装飾ではなく、神々、水、豊穣、生命などに関する考え方と結び付いていた可能性があります。

大地そのものを表現と儀礼の場にした文化的景観として、世界的にも際立った価値を持っています。

ナスカの地上絵はどのように作られたのか

地上絵の制作方法は、想像されるほど複雑ではありません。

ナスカ周辺の地表は、長い年月の風化によって暗い赤褐色になった小石で覆われています。

その小石を脇へ取り除くと、下にある明るい色の土が現れます。

この色の差を利用して線や面を作ったものが地上絵です。

深い溝を掘った巨大彫刻ではなく、地表の石を比較的浅く移動させて作られています。

それでも、線を長距離にわたって維持し、大きな図柄を整えるには、計画性と共同作業が必要でした。

杭とひもで巨大な図柄を描ける

巨大な絵は空から確認しなければ描けないと思われがちですが、地上だけでも制作は可能です。

直線であれば、離れた場所に杭を立て、ひもや目印を使うことで方向をそろえられます。

曲線や動物図形も、小さな下絵の比率を拡大したり、複数の基準点を設けたりすれば描けます。

実際に地上絵の周辺から杭に利用されたとみられる木材が見つかった例もあります。

古代の人々が持っていた測量の知識と、経験に基づく技術で十分に制作できるため、宇宙人や未知の超科学を仮定する必要はありません。

なぜ長い年月を経ても消えないのか

ナスカの地上絵が現代まで残った最大の理由は、この地域の気候にあります。

ナスカ周辺は世界でも特に乾燥した地域の一つで、降水量が非常に少なく、雨水による地表の浸食が起こりにくい環境です。

植物が地表を覆いにくいことも、線が隠れずに残った理由です。

地表の状態が比較的安定していたため、浅い線であっても長期間保存されました。

ただし、地上絵が絶対に消えないわけではありません。

集中豪雨、洪水、強風、地震などの自然現象に加え、自動車の侵入や人の踏み込み、道路建設といった人間活動でも損傷します。

一度地表が乱されると、その痕跡自体が長く残る可能性があるため、厳格な保護が欠かせません。

代表的な図柄とその特徴

ナスカの地上絵というと動物の絵が注目されますが、数の上では直線や台形などの幾何学図形が大きな割合を占めます。

具象図形と幾何学図形を合わせて見ることで、地上絵の多様性が理解できます。

ハチドリ

長いくちばしと左右へ大きく広がる翼を持つ図柄で、ナスカを象徴する地上絵の一つです。

簡潔な輪郭線で鳥の特徴が表されており、古代人の高い造形感覚を感じさせます。

ハチドリは生命力や豊穣と結び付いていたという解釈もありますが、当時の人々が図柄へ込めた意味は確定していません。

サル

大きく渦を巻く尾が特徴的な図柄です。

サルはナスカの乾燥地帯を代表する動物ではないため、アンデス山脈の東側や熱帯地域との交流を反映している可能性が指摘されています。

地上絵だけでなく、ナスカ文化の土器や織物にもさまざまな生物が表されています。

遠隔地との交易や、人々が共有していた神話的世界を考える材料になります。

クモ

細い脚を持つクモの図柄も、よく知られた地上絵です。

雨や水、豊穣との関係を想定する説がありますが、具体的な意味を断定できる証拠はありません。

現代人が図柄を特定の動物として見ていても、古代の制作者が同じ認識や名称を持っていたとは限りません。

図柄の意味を考える際には、現代的な印象と考古学的事実を区別する必要があります。

コンドルなどの鳥

翼を広げた大型の鳥に見える図柄も存在します。

一般にはコンドルなどの名前で紹介されますが、どの種類の鳥を表しているのかについて異なる見解もあります。

アンデス世界で鳥は、空や高所と結び付く重要な存在でした。

地上絵に複数の鳥が描かれたことは、自然観や宗教観を考えるうえで注目されます。

宇宙飛行士と呼ばれる人物像

丘の斜面には、人間のような姿をした図像もあります。

その特徴的な外見から「宇宙飛行士」と通称される図柄がありますが、これは現代に付けられた呼び名です。

宇宙服を着た存在や宇宙人を描いたという考古学的証拠はありません。

神、祭祀に関わる人物、祖先などを表現した可能性は考えられるものの、正確な意味は不明です。

直線・台形・渦巻き

ナスカとパルパの大地には、数多くの直線、三角形、台形、渦巻きなどがあります。

直線の中には長距離にわたって延びるものや、特定の地点から放射状に広がるものもあります。

これらは、儀礼の際に人が歩く道、集団が集まる空間、聖なる場所を結ぶ線などとして使われた可能性があります。

有名な動物図形だけでなく、周囲の地形や直線を含む景観全体を考えることが重要です。

何のために描かれたのか

ナスカの地上絵の目的は、現在も完全には解明されていません。

かつては天体観測のための巨大な暦という説が広く知られましたが、膨大な数の線を天文学だけで説明することは困難です。

現在では、すべての地上絵に共通する一つの目的を求めるのではなく、制作時期や形状によって異なる役割があったと考える見方が重視されています。

水や豊穣を願う儀礼

雨が極めて少ないナスカ地域では、水の確保が生活や農耕を左右しました。

そのため、地上絵は水、雨、豊穣を願う宗教儀礼と関係していたとする説があります。

図形と水源、山、谷などの位置関係も研究されています。

動植物の図柄についても、水や生命を象徴する存在として選ばれた可能性があります。

ただし、すべての図形が水と直接結び付くと証明されたわけではありません。

人々が歩く儀礼の道

地上絵は上空から眺めるための作品ではなく、人がその線に沿って歩くための空間だったという説も有力です。

実際に、一筆書きのように線がつながる動物図形もあります。

集団で線上を歩き、祈りや音楽、供物を伴う儀式を行った可能性があります。

この見方に立つと、完成した絵の全体像だけでなく、制作する行為や歩く行為にも文化的な意味があったことになります。

天文観測や暦との関係

一部の直線が太陽の昇る方角や沈む方角と関係する可能性は研究されています。

しかし、直線の方向は非常に多様で、偶然一致するものも生じます。

そのため、地上絵群全体を巨大な天文暦とする説明は、現在では慎重に扱われています。

天文、儀礼、水への信仰、集団の目印など、複数の要素が重なっていた可能性を考えるほうが、地上絵の多様性に合っています。

ナスカの地上絵にまつわる誤解

上空からしか見えないわけではない

巨大な図柄の全体像は航空機から見ると分かりやすいものの、すべての地上絵が上空からしか見えないわけではありません。

丘の斜面に描かれた人物や動物は、向かい側の地上や高所から観察できます。

平地の図形も、周辺の丘に上がれば見渡せる場合があります。

また、制作者が完成形を上空から確認しなくても、杭やひも、基準点を使えば図形を拡大できます。

「空からしか見えないから、空を飛べる存在が作った」という推論は成り立ちません。

宇宙船の滑走路ではない

長く延びる直線や台形を宇宙船の滑走路とみなす説も知られています。

しかし、地上絵は地表の石を移動させただけの浅く繊細な構造であり、重量のある飛行物体が離着陸する設備には適していません。

宇宙人説は物語として人々の興味を引く一方、古代社会が持っていた技術や宗教を理解する説明にはなりません。

地上絵の本当の価値は、古代の人々が身近な材料、知識、共同作業によって壮大な文化的景観を作ったことにあります。

世界遺産を守るための課題

ナスカの地上絵は、乾燥した環境によって保存されてきましたが、現代ではさまざまな危険にさらされています。

異常な降雨や洪水などの自然現象に加え、都市化、道路、違法な立ち入り、車両の走行などが主な問題です。

地表にタイヤや足跡が付くと、図柄と無関係な線が長期間残ってしまう場合があります。

善意の見学であっても、保護区域へ無断で入ることは遺産の損傷につながります。

現在は航空写真、衛星画像、ドローン、現地調査などを用いて、地上絵の記録や監視が行われています。

画像解析技術の向上により、これまで知られていなかった小型の図像が発見されることもあります。

新発見は地上絵の理解を深める一方、発見地点をどのように管理し、保護するかという課題も生みます。

現地で地上絵を見る方法

遊覧飛行で見る

代表的な観賞方法は、小型飛行機による遊覧飛行です。

上空からは、ハチドリ、サル、クモなど複数の図柄を比較しながら見られます。

ただし、飛行コースや運航状況は天候などによって変わります。

機体が左右へ旋回するため、乗り物酔いが心配な人は事前に対策を検討しましょう。

安全性や運航条件を確認し、信頼できる事業者を選ぶことも大切です。

展望施設から見る

地上の展望施設から一部の図柄を見る方法もあります。

遊覧飛行ほど広い範囲は見渡せませんが、地表の石を移動させて線を作った様子を実感しやすい点が魅力です。

いずれの方法でも、許可されていない場所へ立ち入らず、現地の規則と案内に従う必要があります。

文化遺産は見るだけで消費するものではなく、損なわずに次の世代へ渡すべき共有財産です。

ナスカの地上絵に関するよくある質問

ナスカの地上絵は世界遺産ですか

ナスカとパルパの地上絵は、1994年にユネスコの世界文化遺産へ登録されています。

古代人の創造性、技術、信仰、社会を伝える貴重な文化的景観として評価されました。

地上絵は誰が描いたのですか

主にナスカ文化に関係する人々が制作したと考えられています。

ただし、制作は長期間にわたり、ナスカ文化より前の時代にさかのぼる図像もあります。

なぜ地上絵は消えないのですか

雨が非常に少なく、植物や流水による浸食が起こりにくいからです。

しかし、豪雨、洪水、人や車両の侵入などによって損傷するため、永久に消えないわけではありません。

地上絵の目的は判明していますか

一つの目的には確定していません。

水や豊穣を願う儀礼、人々が歩く祭祀の道、聖地や集団を示す目印、天体や地形との関係などが研究されています。

時期や図形によって目的が異なった可能性もあります。

ナスカの地上絵が現代に伝えるもの

ナスカの地上絵は、謎めいた巨大な絵としてだけでなく、古代の人々が自然環境と向き合い、社会全体で作り上げた文化遺産として見ることが大切です。

地表の石を取り除くという簡素な方法から、千年以上にわたって人々を引きつける壮大な景観が生まれました。

世界遺産への登録は、不可思議な観光名所として認められたことを意味するのではありません。

古代アンデスの創造性、信仰、測量技術、共同体の営みを伝える人類共通の遺産として、その価値と保存の必要性が認められたものです。

制作目的には未解明の部分が残っていますが、分からないことを宇宙人などの物語だけで埋める必要はありません。

図柄、遺物、地形、自然環境を丁寧に調べることで、古代の人々が大地へ託した思想へ少しずつ近づけます。

地上絵を未来へ残すためには、研究を続けるとともに、現地の規則を守り、繊細な地表を傷つけない姿勢が求められます。

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KOBIT編集部:Fumi.T)

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