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ハロン湾が世界遺産に登録された理由とは?歴史・景観・地質学的価値を詳しく解説

ハロン湾は、ベトナム北東部のトンキン湾に広がる景勝地です。

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エメラルド色の海から石灰岩の島や岩塔が立ち上がり、見る位置や天候によって刻々と表情を変えます。

霧の中に無数の島影が重なる幻想的な光景は、「海の桂林」と表現されることもあります。

ハロン湾の価値は、写真映えする美しい風景だけにあるのではありません。

湾内の島々や洞窟には、石灰岩の堆積、地殻変動、雨水による溶食、波の侵食、海面変動といった長い地球の歴史が刻まれています。

そのためハロン湾は、自然を鑑賞する場所であると同時に、地形が生まれる過程を読み取れる貴重な場所でもあります。

現在、世界遺産としての正式な登録範囲はカットバー群島まで広がっています。

本記事では、ハロン湾が世界遺産に登録された理由や経緯、地質学的な価値、代表的な見どころ、自然を守りながら訪れるためのポイントを詳しく解説します。

ハロン湾はどこにある?

ハロン湾は、ベトナムの首都ハノイから東へ向かったクアンニン省の沿岸部にあります。

観光の拠点となるのは湾岸都市のハロンで、ハノイからはバス、送迎車、旅行会社のツアーなどを利用して向かうのが一般的です。

湾内には大小さまざまな石灰岩島が点在しています。

島には垂直に近い岩壁、鍾乳洞、海食洞、入り江、内陸湖などが見られ、狭い範囲に変化に富んだ地形が集まっていることが特徴です。

なお、島の数は資料や対象範囲によって異なる数字が示されています。

これは、観光地として広く捉えたハロン湾と、世界遺産として厳密に定められた資産範囲が必ずしも同一ではないためです。

数の多さだけでなく、島々が一体となってつくる景観と地形に注目すると、本来の価値を理解しやすくなります。

「ハロン=龍が降りる場所」という名前の由来

「ハロン」は、漢字文化圏の表現では「下龍」に相当し、「龍が降りる」という意味を持ちます。

地域には、外敵から国を守るために龍の親子が天から舞い降り、口から吐き出した宝玉が海上の島々へ姿を変えたという伝説があります。

島々が自然の防壁となり、侵入してきた船を阻んだと伝えられています。

もちろん、これは地形の科学的な成因を説明するものではありません。

しかし、海から突き出す無数の奇岩を目にした人々が、その壮大な風景をどのように受け止め、物語として伝えてきたかを知る手掛かりになります。

地質学的な価値と地域に根付く伝承の両方を知ることで、ハロン湾の魅力はより立体的に見えてきます。

ハロン湾が世界遺産に登録された経緯

ハロン湾は、最初から現在と同じ名称、範囲、登録理由で世界遺産になったわけではありません。

1994年の登録後に地質学的価値が追加評価され、2023年にはカットバー群島を含む形へ拡張されました。

1994年に自然遺産として登録

ハロン湾は1994年、ユネスコの世界自然遺産に登録されました。

このとき中心的に評価されたのは、海と石灰岩島が織り成す類いまれな自然美です。

海上に林立する岩塔、島影が幾重にも重なる奥行き、切り立った岩壁、静かな入り江などが一体となり、ほかでは得がたい景観を生み出しています。

天候や時間帯によって風景が大きく変化することも、ハロン湾の美しさを特徴づける要素です。

2000年に地質学的価値が追加された

2000年には登録内容が拡張され、カルスト地形の形成過程を示す地質学的価値も認められました。

これにより、ハロン湾は「景色が美しい場所」であるだけでなく、「地球の歴史を伝える場所」としても国際的な評価を得ることになりました。

水に溶けやすい石灰岩が長期間にわたって削られ、塔状の岩山、洞窟、谷などへ変化していく過程を観察できる点が重要です。

2023年にカットバー群島まで拡張

2023年には世界遺産の範囲がカットバー群島まで拡張され、英語の登録名称は「Ha Long Bay – Cat Ba Archipelago」となりました。

日本語では「ハロン湾-カットバー群島」「ハロン湾・カットバー群島」などと表記されます。

カットバー群島は、ハロン湾の南西側に連なる石灰岩島の地域です。

行政上はハイフォン市に属しますが、地形や海洋環境はハロン湾と連続しています。

範囲の拡張によって、行政区域を越えた自然環境を一体として評価し、保全する枠組みが整えられました。

一般的な旅行情報では現在も「ハロン湾」という名称が広く使われていますが、世界遺産について調べる場合は、カットバー群島を含む現在の登録範囲を理解しておくことが大切です。

ハロン湾が世界遺産に選ばれた理由

世界遺産には、登録の根拠となる複数の基準があります。

ハロン湾-カットバー群島では、主に自然美と地質・地形形成の二つの観点が評価されています。

登録基準(vii):類いまれな自然美

登録理由の一つは、海と岩塔群が生み出す優れた自然景観です。

ハロン湾では、石灰岩の岩山が海面から直接立ち上がっているように見えます。

岩塔の形や高さは一様ではなく、円錐形、柱状、壁状など多様です。

島と島の間には狭い水路や静かな入り江があり、船で進むにつれて新しい景観が次々と現れます。

晴れた日には海と空、緑に覆われた島々の色彩を楽しめる一方、霧や雲に包まれた日は輪郭が淡くなり、伝説の世界を思わせる景色になります。

特定の岩だけが価値を持つのではなく、島、海、空、光、植生が一体となってつくる景観全体に価値があるのです。

登録基準(viii):カルスト地形を示す地質学的価値

もう一つの理由は、長期間にわたる地球の変化を示すカルスト地形です。

カルストとは、石灰岩など水に溶けやすい岩石が、雨水や地下水によって少しずつ溶かされて形成される地形を指します。

石灰岩の割れ目に水が入り込むと、その部分が広がり、やがて谷、空洞、洞窟などができます。

周囲の岩石が削られ、比較的溶け残った部分が塔のように孤立することもあります。

ハロン湾の大きな特徴は、こうして陸上で発達したカルスト地形に海水が入り込み、峰の部分が島として海上に残ったことです。

このような地形は「沈水カルスト」として理解できます。

海面上に見えている奇岩だけでなく、水面下にもかつての谷や地形が続いています。

洞窟や湖も重要な構成要素

ハロン湾には、鍾乳洞、波によって削られた海食洞、島の内部に閉ざされた湖などがあります。

鍾乳洞は、地下水が石灰岩を溶かすことで空間が広がり、その後、炭酸カルシウムなどの成分が長い時間をかけて沈殿することで鍾乳石や石筍が形成されたものです。

一方、海食洞は主に波や潮の働きによって岩壁が削られてできます。

洞窟は一見似ていても、成因や発達の仕方が異なります。

形の面白さだけではなく、「水がどの方向から働いたのか」「洞窟が形成された時点の海面はどこにあったのか」と考えると、風景の見方が深まります。

ハロン湾の景観はどのようにできたのか

現在のハロン湾は、一度の大きな出来事によって生まれたわけではありません。

石灰岩のもととなる物質が堆積し、岩石となり、地殻変動で持ち上げられた後、長期間にわたって侵食されるという複数の段階を経ています。

石灰岩の形成と隆起

石灰岩の多くは、かつて海で暮らしていた生物の殻や骨格など、炭酸カルシウムを含む物質が堆積し、圧縮・固結することで形成されます。

ハロン湾周辺にも、古い時代の海で形成された石灰岩が広く分布しています。

その後、地殻変動による隆起や断層活動などの影響を受け、石灰岩層が陸上に現れました。

石灰岩が雨や風にさらされるようになると、カルスト地形の発達が進みます。

雨水が石灰岩を溶かす仕組み

雨水は、大気や土壌に含まれる二酸化炭素を取り込むことで弱い酸性になります。

この水が石灰岩の割れ目に入ると、岩石を構成する成分をゆっくり溶かします。

一回の雨で目に見えるほど岩が失われるわけではありません。

しかし、非常に長い時間をかけて同じ作用が繰り返されると、細い割れ目が水路となり、やがて大きな空洞や谷へ変化します。

周辺が削られた結果、硬く残った部分が峰や岩塔として際立つようになります。

海面変動によって島々が現れた

地球の海面は一定ではなく、寒冷な氷期と温暖な間氷期などに伴って上下してきました。

海面が低い時期には、現在の湾内にも陸地や谷が広がっていたと考えられます。

その後、海面が上昇して低い場所へ海水が入り込むと、高い峰だけが水面上に残りました。

これが、石灰岩の岩塔が海に浮かんでいるように見える景観につながっています。

ハロン湾は、陸上の侵食と海の作用が重なってできた地形なのです。

ハロン湾の代表的な見どころ

ハロン湾には数多くの観光スポットがあります。

訪問できる場所はクルーズの航路や天候、保護上の措置によって変わるため、予約前に最新の運航情報を確認しましょう。

スンソット洞窟

スンソット洞窟は、大規模な内部空間と多様な鍾乳石で知られる代表的な洞窟です。

「驚きの洞窟」とも呼ばれ、入口からは想像しにくい広い空間が奥に続いています。

照明によって浮かび上がる造形を鑑賞するだけでなく、天井や壁の形、鍾乳石と石筍の違いに注目すると、地下水の作用をより具体的に理解できます。

鍾乳石は非常に長い年月をかけて成長するため、触れたり傷つけたりしてはいけません。

ティエンクン洞窟とダウゴー洞窟

ティエンクン洞窟は、複雑な鍾乳石がつくる華やかな内部景観で知られています。

近隣のダウゴー洞窟も規模の大きな洞窟で、歴史にまつわる伝承を持つ場所です。

同じ石灰岩地域にある洞窟でも、内部の広さ、天井の高さ、水の通り方、生成物の形には違いがあります。

複数の洞窟を比較すると、自然物がすべて同じ過程や速度で形成されるわけではないことが分かります。

ティートップ島

ティートップ島には湾内を見渡せる展望地点があり、岩塔群と水路の広がりを高所から観察できます。

船上からは一つひとつの岩壁が強く印象に残りますが、上から眺めると、島々の分布や入り江の形を把握しやすくなります。

階段や展望場所は混雑することがあるため、足元と周囲に注意し、決められた遊歩道から外れないことが大切です。

カットバー群島とランハ湾

カットバー群島は、2023年の世界遺産拡張を理解するために欠かせない地域です。

石灰岩島の森林、海岸、洞窟、干潟など、多様な環境が存在します。

カットバー島周辺のランハ湾は、観光上はハロン湾と分けて案内されることがあります。

しかし、地形や生態系には連続性があり、現在の世界遺産では一体的な価値を持つ地域として扱われています。

ハロン湾中心部とは異なる航路や滞在方法を選べることも魅力です。

世界遺産を支える生態系

ハロン湾-カットバー群島の価値を考える際は、岩石だけでなく、そこで暮らす生き物にも目を向ける必要があります。

地域には、島の森林、マングローブ、干潟、サンゴ礁、海草藻場、洞窟、閉鎖的な湖など、性質の異なる環境が近接しています。

石灰岩の複雑な地形が、生物に多様な生息場所を提供しているのです。

カットバー群島は、世界でも限られた地域にしか生息しないカットバーラングールなど、希少な生物の生息地としても知られています。

孤立した島の環境では、生物が独自の進化を遂げる一方、個体数の減少や生息地の変化から受ける影響も大きくなります。

野生動物を見かけても、餌を与えたり、追いかけたり、撮影のために接近したりしてはいけません。

静かに距離を取り、その場所で本来の行動を続けられるようにすることが重要です。

ハロン湾が抱える環境問題

世界遺産に登録されたからといって、その価値が自動的に守られ続けるわけではありません。

ハロン湾では観光、船舶運航、沿岸開発、生活排水、海洋ごみ、気候変動などへの継続的な対応が求められています。

観光客とクルーズ船の集中

クルーズ観光は、地域の雇用や経済を支える重要な産業です。

一方、多数の船や観光客が一部の場所に集中すると、騒音、排水、ごみ、混雑などの問題につながる可能性があります。

観光を全面的に制限するのではなく、航路や入場人数の管理、船舶の環境基準、安全管理、保護区域の設定などを組み合わせ、利用と保全を両立させることが必要です。

海洋ごみと水質への影響

海に流れ込んだプラスチックごみは景観を損なうだけでなく、生物による誤食や絡まりを引き起こします。

また、不適切な生活排水や船舶からの排水は、海水の環境や沿岸生態系に影響を及ぼします。

旅行者にもできることがあります。

使い捨て容器を減らす、ごみを船外へ捨てない、環境対策を明示しているクルーズ事業者を選ぶといった小さな行動が、観光地の負担軽減につながります。

カットバー群島を含む一体的な保全

自然環境は行政上の境界で区切られているわけではありません。

海水、生物、漂流ごみ、船舶は地域間を移動します。

そのため、クアンニン省側のハロン湾とハイフォン市側のカットバー群島が協力し、連続する海域と島々を管理することが重要です。

2023年の世界遺産拡張には、地形や生態系のつながりを国際的に再評価し、広い視点で保全するという意味があります。

ハロン湾を訪れるときのポイント

クルーズは内容と環境対策で選ぶ

ハロン湾観光には、日帰りクルーズ、船中泊、カットバー島などに宿泊するコースがあります。

料金だけでなく、航路、滞在時間、乗船人数、安全設備、運航許可、排水・ごみ処理方針なども確認しましょう。

短い日程でも代表的な景観を楽しめますが、移動時間を含めると慌ただしくなりがちです。

地形や洞窟をじっくり観察したい場合は、余裕のある旅程が向いています。

天候による変更を想定する

ハロン湾では、霧、雨、強風、台風などにより、クルーズが欠航したり航路が変更されたりする場合があります。

霧に包まれた風景にも魅力はありますが、安全が最優先です。

旅行前には天気予報だけでなく、運航会社のキャンセル条件や代替日程も確認してください。

季節ごとの一般的な傾向は参考になりますが、その日の海況を正確に予測できるものではありません。

自然物を持ち帰らない

岩石、鍾乳石、貝殻、植物などを記念品として持ち帰ってはいけません。

小さな一片に見えても、それは長い自然の作用によって形成された環境の一部です。

採取によって景観や生物のすみかが損なわれることもあります。

鍾乳石には触れず、指定された通路から外れず、ごみを残さないことが基本です。

自然の価値は、所有することではなく、その場所に残し、多くの人と将来世代が学べる状態を保つことで受け継がれます。

ハロン湾の世界遺産に関するよくある質問

ハロン湾は文化遺産ですか?

ハロン湾-カットバー群島は、ユネスコの世界自然遺産です。

龍の伝説や地域の暮らしなど文化的な魅力もありますが、世界遺産としては自然美と地質学的価値を根拠に登録されています。

ハロン湾が世界遺産になった最大の理由は何ですか?

海面から立ち上がる石灰岩島が生み出す類いまれな自然美と、カルスト地形の長期的な形成過程を示す地質学的価値が主な理由です。

美しさだけでなく、地球の歴史を伝えている点が重要です。

世界遺産になったのは何年ですか?

最初の登録は1994年です。

2000年に地質学的価値が追加評価され、2023年にはカットバー群島を含む形へ登録範囲が拡張されました。

現在の正式名称は何ですか?

英語の登録名称は「Ha Long Bay – Cat Ba Archipelago」です。

日本語では「ハロン湾-カットバー群島」などと表記されます。

古い資料には、拡張前の「ハロン湾」のみが記載されている場合があります。

ハロン湾の岩石や鍾乳石に価値はありますか?

地質学的・学術的には非常に大きな価値があります。

ただし、その価値は切り離した岩石一個の換金性ではなく、周囲の地形や地層との関係、形成された場所、自然環境全体にあります。

採取や持ち帰りはせず、現地の状態を保つことが大切です。

まとめ

ハロン湾が世界遺産に登録された理由は、海と石灰岩島が生み出す類いまれな自然美と、長い年月をかけて形成されたカルスト地形の地質学的価値にあります。

1994年に自然美を理由として登録され、2000年には地質・地形形成の価値が追加されました。

さらに2023年にはカットバー群島まで範囲が広がり、現在は「ハロン湾-カットバー群島」という一体的な自然遺産として保護されています。

目の前にある岩塔や洞窟は、石灰岩の堆積、隆起、雨水による溶食、波の侵食、海面変動が重なって生まれたものです。

その形成には、人の一生とは比べものにならないほど長い時間がかかっています。

自然物の本当の価値は、持ち帰ったり所有したりすることだけでは測れません。

形成された場所に残し、成り立ちを学び、損なわない方法で利用することによって、ハロン湾の価値は未来へ受け継がれていきます。

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KOBIT編集部:Fumi.T)

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