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内山紙とは?雪国で育まれた和紙の歴史・特徴・製法・用途を詳しく解説

内山紙とは

内山紙は、長野県北部の飯山市周辺で受け継がれてきた和紙です。

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楮の長く丈夫な繊維を生かした紙質と、豪雪地帯ならではの雪を利用する原料処理で知られています。

障子紙をはじめ、書画用紙、工芸材料、表具、インテリアなどに用いられてきました。

内山紙を理解するうえで大切なのは、完成した紙の見た目だけでなく、雪国の自然環境や人々の暮らしまで含めて捉えることです。

雪に閉ざされる冬を紙づくりの季節として活用し、地域で育てた楮と豊かな水から生活に必要な紙を生み出してきました。

内山紙は、地域の知恵と手仕事が一枚の紙に凝縮された工芸品だといえます。

昭和51年には国の伝統的工芸品に指定されました。

伝統的工芸品という位置付けは、単に古い品物であることを示すものではありません。

受け継がれてきた技術や技法、伝統的な原材料、産地としての歴史などに基づくものです。

内山紙の産地と名称の由来

内山紙の名称は、現在の長野県下高井郡木島平村にある内山地区に由来するとされています。

この地域に伝わった製紙技術が飯山地方をはじめとする周辺へ広まり、内山紙の名で呼ばれるようになりました。

現在、内山紙は長野県北部を代表する伝統工芸の一つとして知られています。

ただし、古い紙に内山紙という記載がない場合、外観だけで産地を断定することは困難です。

楮の繊維、紙の色、簀の跡、厚みの揺らぎなどは判断材料になり得ますが、同様の特徴を持つ和紙はほかの産地でも作られています。

保管されている紙の由来を確認したいときは、紙質だけでなく、包装、帯、証紙、箱書き、購入記録、製造者名なども一緒に調べることが重要です。

内山紙の歴史

美濃から伝わったとされる紙すきの技術

内山紙の始まりについては、江戸時代初期に内山村の人物が美濃で紙すきの技術を学び、郷里へ持ち帰ったという伝承があります。

その技術が周辺の村々へ広がり、地域の産業として発展したとされています。

歴史的な由来には伝承を含むため、細部については資料による違いもあります。

しかし、美濃系の製紙技術を基礎としながら、長野県北部の気候や原料に合わせた方法へ発展したことは、内山紙の成り立ちを考えるうえで重要です。

雪国の農閑期を支えた紙づくり

長野県北部は積雪量の多い地域です。

冬になると屋外で行える農作業が限られるため、紙すきは農閑期の仕事として地域の暮らしを支えました。

紙づくりには、楮の刈り取り、蒸し、皮むき、外皮取り、煮熟、ちり取り、叩解、紙すき、圧搾、乾燥といった数多くの工程があります。

家族や集落の人々が役割を分担しながら作業を進めたため、内山紙は個人の職人技だけでなく、地域の共同作業によって育てられた産物でもありました。

生活に欠かせなかった障子紙

内山紙の代表的な用途は障子紙です。

現在のような機械製の紙や樹脂製の障子紙がなかった時代には、丈夫で光をやわらかく通す和紙が住まいに欠かせませんでした。

そのほか、帳簿、筆記用紙、包装、表具などにも紙が必要でした。

内山紙は鑑賞のためだけに作られた特別品ではなく、人々の生活や商いを支えた実用品だったのです。

内山紙の原料となる楮

内山紙の中心的な原料は楮です。

楮はクワ科の植物で、その樹皮から紙の繊維を取り出します。

繊維が長く、互いに絡み合いやすいため、薄く漉いても破れにくい紙を作りやすいことが特徴です。

楮は刈り取ればすぐに紙になるわけではありません。

枝を蒸して皮をはぎ、黒い外皮や傷んだ部分を取り除きます。

さらにアルカリ性の液で煮て繊維を柔らかくし、水洗いを行ったうえで、細かな傷やごみを手作業で除去します。

この異物を取り除く作業は、ちり取りと呼ばれます。

一見地味な工程ですが、紙の色や美観を左右する大切な仕事です。

完成した紙からは見えにくい下準備に多くの時間が使われている点も、内山紙の価値を考えるうえで見逃せません。

内山紙を象徴する雪さらし

雪を利用して楮を白くする

内山紙の製法を象徴するのが雪さらしです。

処理した楮の白皮を雪上に広げ、雪と日光の働きを利用して自然な白さへ整えます。

雪面は光を反射するため、楮には上下から光が当たるような状態になります。

雪に含まれる水分や自然条件も作用し、強い薬品に頼りすぎずに原料を白くしていくのが特徴です。

ただし、雪さらしの効果は天候、積雪、気温、作業時間などにも左右されます。

すべてを機械で一定に管理する方法とは異なり、その年の自然と向き合いながら進める工程です。

豪雪という厳しい環境を紙づくりの資源へ変えた、雪国ならではの知恵だといえるでしょう。

自然な白さと色の揺らぎ

内山紙には、楮の繊維が感じられる穏やかな白さがあります。

ただし、内山紙であればすべて同じ色になるわけではありません。

原料の状態、製造方法、紙の種類、保管環境、経過年数によっても色合いは変わります。

古い内山紙が生成り色や薄い褐色に見える場合、それが直ちに偽物や不良品であるとは限りません。

一方、濃い染み、局所的な斑点、かび臭、繊維の崩れなどは劣化の可能性があります。

素材本来の色と保存上の問題は分けて考える必要があります。

内山紙ができるまで

紙料を整える

雪さらしや水洗いを終えた楮は、繊維をほぐして紙料にします。

紙料を水槽である漉き舟に入れ、水の中で均一に分散させます。

繊維が偏ったり沈んだりしないように状態を調整することが、均質な紙を作るための基礎です。

簀桁を使って紙を漉く

職人は簀桁を使い、水中の繊維をすくい上げます。

簀桁を前後左右に動かしながら余分な水を流し、繊維を何層にも絡ませて一枚の紙にします。

必要な厚み、繊維の量、水の流れ、簀桁を動かす速さは、作る紙によって異なります。

気温や紙料の状態も一定ではないため、職人はその都度調整しなければなりません。

紙すきは同じ動作を繰り返すだけの作業ではなく、素材と水の変化を読み取る仕事です。

圧搾して乾燥させる

漉いた紙は湿ったまま重ね、圧力をかけて水分を抜きます。

その後、一枚ずつ板などに貼り付けて乾燥させます。

乾燥を終えた紙は、傷、しわ、厚み、異物などを確認し、用途に応じて選別されます。

内山紙の品質は紙すきだけで決まるものではありません。

楮の栽培や選別から乾燥、仕上げに至るまで、すべての工程が関係しています。

内山紙の特徴

薄くても丈夫

楮の長い繊維が絡み合う内山紙は、薄さと丈夫さを両立しやすい和紙です。

障子紙として使用した場合には、張り替え作業に耐える強さを持ちながら、室内に光を取り込めます。

もっとも、内山紙にはさまざまな厚さと用途があります。

名称だけを理由に、すべての製品が同じ強度を持つと考えるべきではありません。

使用前には、寸法、厚さ、製造者が示す用途などを確認しましょう。

光をやわらかく通す

和紙を障子に張ると、外からの強い光が繊維の層で拡散され、室内へ穏やかな明るさが届きます。

繊維の重なりや厚みのわずかな違いによって生まれる光の表情は、内山紙の大きな魅力です。

照明器具や窓辺の装飾に使う場合にも、この透光性を生かせます。

ただし、照明に利用するときは、紙が電球や発熱部分に接触しない設計とし、器具の安全基準を優先する必要があります。

手仕事を感じさせる風合い

内山紙には、繊維の表情、控えめな凹凸、色の揺らぎが見られることがあります。

工業製品の均一性とは異なり、素材と手仕事の痕跡が一枚ごとの個性になります。

ただし、破れ、かび、虫食いなど、使用や保存に支障を及ぼす状態まで手仕事の味として扱うのは適切ではありません。

健全な個体差と劣化を見極めることが大切です。

内山紙の主な用途

障子紙

内山紙を代表する用途です。

採光、目隠し、室内装飾という複数の働きを持ち、日本家屋だけでなく、旅館、飲食店、現代住宅の建具にも取り入れられています。

書道・日本画・版画

書画用紙として使う場合、墨や絵具の吸い込み、にじみ、発色を確認する必要があります。

同じ内山紙でも製品によって表面や厚さが異なるため、作品を制作する前に端紙で試し書きをすると安心です。

表具・製本・工芸

掛け軸や屏風などの表具、和綴じ本、箱の装飾、ちぎり絵、カード、封筒、包装などにも利用できます。

専門的な修復へ使う場合は、紙の繊維、厚さ、添加物、保存安定性などの確認が必要です。

由来不明の紙を重要資料の修復へ自己判断で使うことは避けましょう。

古い内山紙を見分ける手掛かり

古い紙束や障子紙が見つかっても、紙の見た目だけで内山紙と断定するのは困難です。

確認時には次の情報を探します。

  • 包装や帯に記された内山紙の名称
  • 伝統的工芸品の証紙
  • 製造者、工房、組合などの表示
  • 紙の寸法、枚数、用途の記載
  • 購入時期や購入場所の記録
  • 所有者が紙を入手した経緯

手すき紙には厚みの揺らぎや簀の跡が見られることがありますが、裁断された手すき紙もあれば、精度の高い機械抄き紙もあります。

紙の耳がないから手すきではない、均一だから新しい、といった単純な判定はできません。

証紙や包みは紙そのものの由来を示す重要な付属品です。

傷んでいても安易に捨てず、紙と一緒に保管してください。

内山紙を長く保管する方法

高温多湿と直射日光を避ける

湿気の多い場所では、かび、波打ち、紙同士の貼り付きが起こりやすくなります。

直射日光は退色や変色の原因です。

床下収納、結露する壁際、屋根裏などを避け、温湿度の変化が比較的小さい室内で保管します。

無理に折らず、汚れを付けない

大判の紙は可能であれば平らに保管します。

巻いて保管するときは、細い芯へきつく巻かないようにしましょう。

触れる前には手を洗い、皮脂や汗を付けないようにします。

古い粘着テープや台紙が付いている場合、無理にはがすと紙の表面まで失われる可能性があります。

作品や歴史資料に関係する紙は、保存修復の専門家へ相談するのが安全です。

かびや虫害を隔離する

斑点、かび臭、虫食いを発見したら、まずほかの紙類から隔離します。

家庭用の漂白剤、除菌剤、殺虫剤を紙へ直接吹き付けてはいけません。

濡れた布で強くこすることも、繊維や顔料を傷める原因になります。

使わない内山紙を生かす方法

未使用の内山紙や端紙は、すぐに廃棄せず、別の用途を検討できます。

封筒、しおり、カード、和綴じ本、箱の内張り、季節の飾りなど、小さな紙片でも活用できます。

大量に残っている場合は、書道教室、版画工房、学校、福祉施設、地域の創作団体などへ譲る方法もあります。

その際は、紙の種類、寸法、枚数、変色やかびの有無を伝えると、受け取る側が用途を判断しやすくなります。

古い見本帳、帳簿、包装、製造道具、取引記録などが紙と一緒に残っている場合は、ばらばらに処分しないことが重要です。

一見すると価値の分かりにくい資料でも、産地の歴史や流通を知る手掛かりになる可能性があります。

地域の博物館、資料館、和紙の専門家などへまとめて相談しましょう。

売却を考える場合も、古い内山紙だから必ず高額になるわけではありません。

評価には、製造者、年代、寸法、枚数、保存状態、証紙、来歴、作品性、需要などが関係します。

価格だけでなく、適切に使ってくれる人や資料として保存できる場所へつなぐことも、重要な選択肢です。

内山紙の価値を未来へつなぐ

内山紙の価値は、一枚の紙としての丈夫さや美しさだけにあるのではありません。

楮を育てて処理する技術、雪さらし、紙すき、乾燥、選別、そして豪雪地帯の暮らしと結び付いた歴史が、その背景にあります。

貴重だからとしまい込むだけでなく、用途に合った紙は丁寧に使うことも継承につながります。

障子を張り替える、作品を作る、手紙や贈り物に取り入れるといった行為が、紙の魅力を次の人へ伝えます。

所有する内山紙を将来へ残す場合は、購入場所、入手時期、製造者、用途などをメモし、証紙や包装と一緒に保管しましょう。

来歴の記録は、紙の文化的な意味を守り、次の持ち主が適切に保存・活用するための大切な情報になります。

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KOBIT編集部:Fumi.T)

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